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第3話1:壊れた家族の形

彼女はもういなかった。俺が店に入ってたったの10分だったのに。


「マジかよ。」変態が連れて行ったのか?それとも、野良猫を追いかけてどこか行っちまったのか?


「ルリ!」俺は叫んだ。反応なし。「ルリ!」もしかして、俺を待たずに帰ったのか?彼女を追いかけようとしたその時、コンビニの横の路地で何かが目に入った。


覗き込むと、彼女が見えた。即座にその場を立ち去った。


「何してんだよ?」


彼女はまるで野良犬みたいにしゃがんでいた。「中にトイレあるだろ。」


俺は頭を振って、通行人に見られないように視線を遮った。


「へへ、心配してたんだ。」彼女はリードを誇らしげに持ち出した。目の輝きが全てを物語っていた。嬉しそうな顔をしている。


「違う。ミオの新しいパートナー探さなきゃならないかと思っただけだ。」俺は彼女の腕を軽く殴った。そのまま家へ向かう。


「ただいま!」ルリは家の中に飛び込んできた。俺がドアを開けるや否や、上からバシバシと手が飛んできた。


「遅い!遅い!遅い!」


「痛い、痛い。ごめん、ミオ。」俺はドアの上の棚からミオを引きずり下ろした。彼女は体を俺から押し離し、必死に逃げようとした。


「おかえりなさい、ご主人様。」それは毎日もらう挨拶だった。あまりにも堅苦しくて、スカートが高く上がりすぎて、あられもない姿をさらけ出していた。フェイはアンドロイドで、非常に役立っている。


フェイは、感情のない機械に国家防衛を任せるべきではないと決定された後に廃棄された自律型兵器プログラムの一部として設計された。彼女の創造者である小柄な天才エンジニアは、彼女を破壊することができなかった。そして、彼女を俺にくれた。彼曰く、「寂しそうだから。」


俺はほとんど家事をフェイに任せていた。ルリとミオの面倒も見てくれる。彼女はメイドとして作られたわけではなかったが、しっかりこなしてくれた。


俺はミオをキッチンの椅子に座らせたが、彼女は不満そうな顔をした。


「ふん!」彼女はすぐに飛び降り、再び登ろうとした。


ヘカテは別の部屋のソファに横たわっていた。片手にはポテチ、もう一方の手には本を持っている。新しい状況にすぐ適応する彼女にはいつも驚かされる。


「ほら、そんなジャンクフードばかり食べてたら…太っちゃうよ。」


「失礼ね!」彼女の目には炎が燃え上がった。「悪魔は太らないの!もし太ったとしても、それでも私は美しいわ。」


フェイはプラスチックの袋からいくつかのアイテムを取り出し、テーブルの準備を始めた。


ルリが再登場し、今度はチャイナドレスを着ていた。「今日のサービス!」彼女はそこに立ち、ギラギラと光るチャイナドレスで賞賛を待っている様子だった。俺は何も言わなかった。


俺は彼女が無駄にお金を使うのが気に入らないが、彼女はそれを稼いでいる。ルリとミオは、俺よりも配信で稼いでいるだろう。


反応がないと、ルリはほっぺたを膨らませ、フェイの手伝いを始めた。ヘカテはチップスの袋から手を離し、ちらちらとテーブルを覗き込んでいた。フェイが光る缶を袋から取り出すと、ヘカテがテーブルに現れた。


「忘れたと思った?」悪魔に借りを作るのは避けた方がいい。ヘカテはビールを報酬として喜んで受け取る。


すべてが準備できると、ミオが俺に合図を送った。俺は彼女を抱き上げ、膝に座らせた。まるで普通の家猫のように、彼女は自分のペースでしか触られたくない。


俺たちは食事をしながら軽いおしゃべりを交わした。奇妙な光景だった。ビールをがぶ飲みする悪魔。肉を無慈悲に食い散らかす犬娘。静かにサーモンを切る猫娘。空間を清潔に保つロボット。


外の世界は飢えている。愛も信頼もなく、ただの取引。


でも、この小さな空間では、乱雑で、うるさくて、型破り。


家は温かい。これを守る価値がある。

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