第16話2:燃え尽きる前に、まだ守れるなら
縁側に座った。神社の灯りがかすかに照らす中、俺の肋骨はまだ痛んでいた。頭の中は声でいっぱいだったが、どれも役に立つことを言っていなかった。
再びヘカテが外に出てきた。裸足で、薄明かりの中でその角がかすかに輝いていた。最初は何も言わず、ただ俺の横に座ると、足を組んで、悪魔らしくない優雅さで座った。
しばらく、俺たちはそんなふうに座っていた。周りの世界は、ただ静かなハム音だけが響いていた。
そして、ふっと、彼女が口を開いた。「熱くなってるわね。」
俺は息を吐き出した。「始めないでくれ。」
彼女は頭を後ろに傾け、目を半分閉じて月を見上げた。「始めてないわよ。止めてもいないけど。」
ヘカテは手を伸ばし、俺の肘の近くの袖に指先を触れた。それは触れることではなく、ただほんの少しの接触だった。「彼女たちがまだここにいる理由、考えたことある?」
俺の顎がきゅっと固くなった。「言うな。」
彼女は軽く笑った。「お前、彼女たちがお前についてきてると思ってるのか?強いから?賢いから?」
ヘカテの目が俺の目を鋭く、輝かせながら見つめた。「違う、馬鹿。彼女たちがついてきてるのは、壊れたものだって、火のそばに暖を求めるからだ。」
俺は、俺がまだ救う価値のある何かを信じて戦っているのか、ただ彼女たちを失うことが怖いから戦っているのか分からなかった。それが彼女たちのためだったのか、それともただ怖くて止められなかったのか。答えられなかった。もしかしたら、今後も答えられないかもしれない。
俺の手が膝の上でぎゅっと握られた。「死者の王女がいつからセラピストになったんだ?」
ヘカテは止まらなかった。
代わりに、彼女は近づき、声を低く、ほぼ…ほぼ優しくした。
「お前は燃え尽きてる。暗くなったとき…」彼女は爪の先を俺のブーツの縁にそっと滑らせた。「その時、彼女たちはどうなるんだ?」
俺は目を閉じた。ほんの一瞬だけ、全ての暗さを感じるままに。目を開けたとき、フェイがドアの前に立っていた。
しばらくの沈黙が、空気を重くした。その後、フェイが口を開いた。
「報告。」彼女の声は短く、機械的で、無駄のないものだった。「リンは爆薬を準備している。ツユヒメは武器を整えている。アリスは防御用の呪文を準備済み。準備完了予定時間:4時間。」
フェイは俺の目を見ようとはしなかったが、その言葉の中に心配の色を感じ取れた。‘お前は… 安定していない’と言って、文の最後にわずかなためらいがあった。そのため、彼女が俺の中で何か見つけて、俺が気づいていないものを感じているのかもしれないと思った。
俺の口が歪んだ。「問題じゃない、フェイ。」
彼女の目が一瞬、ちらりと動いた。俺に視線を置いたまま、ヘカテの方を見た。彼女が何かを計算しているような様子を見て、また何も言わずに中に戻っていった。
音がした。柔らかく。ほとんど聞こえないほどに。俺は下を見た。
ルリ。
いつの間にか出てきたのだろう。裸足で静かに床を歩き、髪は乱れ、尻尾はしおれた花のように垂れていた。小さな手が俺のコートを掴んで、まるで何か本物のものにしがみついているようだった。俺は一瞬、動けなかった。彼女を抱き寄せたかった、引き寄せたかった。でも、起きたことの重さ、胸の中でねじれる罪悪感が俺を動けなくさせていた。
俺が守るべきだった。俺がこれを止めるべきだった。彼女がここにいる、息をしている、まだ俺たちと一緒にいることが問題ではなかった。彼女を見るたびに胸の中に広がる痛みを止められなかった…まるで、俺が失敗したことの絶え間ない証のように。俺が彼女をこれから守ると思っていた。でも、俺はそうじゃなかった。
今、彼女は俺のことをどう見ているんだろう?まだ信じてくれる男なのか?それとも、俺が守ると誓ったものから、最も恐れるものに変わってしまったのか?その考えが、腹の奥で刃のように食い込んで、止めることができなかった。
彼女の小さな手が再び俺のコートを引っ張った。彼女は壊れていて、俺たちと同じように壊れていた。でも、彼女はしがみついていた。俺が彼女にしがみついていたように、どれだけ過去に何があったとしても、手放したくなかった。俺は少しだけ引こうとしたが、彼女はそれを許さなかった。彼女の小さな体が俺に押し当てられているのを感じたが、どうしても彼女を抱きしめることができなかった。俺にはその資格がなかった。
俺は自分に言い聞かせていた。彼女たちを守らなければならない、進み続けなければならないと。しかし、真実は、ルリが俺を支えていたのだ。逆ではない。彼女の笑顔、彼女の笑い、彼女の小さな喜びの瞬間が、俺が完全に壊れてしまわないように支えていた。しかし、それでももう足りなかった。彼女は俺に強さを求めていたが、俺は強くなかった。俺はただ、壊れた男として壊れた世界にしがみついているだけだった。
彼女の耳が伏せられ、目は大きく開き、涙で濡れていたが、その中には怒りはなかった。非難の言葉もなかった。ただ、切り裂くような沈黙のお願いがあった。彼女は何も言わなかった。ただ、俺の横腹に顔を押し当て、息が小さく、壊れるように止まるたびに震えていた。彼女の手の震えが、俺の体に感じられた。それは、かつての自分をしがみついているような感覚だった。世界を救おうと戦った男、すべてが崩れ落ちても。
一瞬、俺は引こうと思った。しかし、できなかった。彼女をまた手放すわけにはいかなかった。
ゆっくりと腕を上げ、その重さがあまりにも重く感じた。腕を彼女の肩に回し、まるで彼女に触れるのが怖いかのように感じた。でも、彼女はさらに近づき、小さな拳で俺のコートを握りしめた。それは、まるで彼女の手で世界を支えようとしているようだった。
ヘカテが静かに立ち上がり、その存在は煙のようにひそやかだった。彼女は俺の肩に触れ、軽く、儚い触れ方だったが、その仕草には何かしっかりとしたものがあった。まるで俺が知らない何かを彼女が知っているように。
「もう少し人間らしくなりなさい。」彼女はささやき、そして去っていった。
彼女の声は静寂の中で重く残った。俺はそこに座り、片手をルリの震える背中に置き、夜の息遣いを聞いていた。世界は回り続けているけれど、俺はその場に縛られたように感じていた。戻れない選択の重さに溺れていた。
俺は飲み込んだ。喉が、言えなかったことの重さで詰まっていた。「ごめん」と囁いたけれど、それだけでは足りないような気がした。
なぜ俺が進み続けるのか、なぜ世界が焼けるのを見過ごさないのか、分からなかった。もしかしたら、彼女たちのためだ。ルリのため、ヘカテのため、暗闇の中を俺についてきてくれる壊れた少女たちのため。もしかしたら、すべてが嘘かもしれない。俺は彼女たちを救えていないのかもしれない。いや、もしかしたら彼女たちが俺を支えてくれているのかもしれない。この混乱の中で、ただここにいてくれるだけで。
でも、ルリを抱きしめながら、気づいた。どうでもよかった。彼女たちが戦い続ける限り、俺も戦い続ける。たとえすべてを失っても、たとえ自分を失っても、彼女たちを一人で向かわせるわけにはいかない。今は、絶対に。これまでのすべての後で。でも、理由が何であれ、俺は落ちない。まだ、落ちてはいけない。彼女たちが俺と一緒にいる限り、俺は戦い続ける。壊れていても、何も信じていなくても、彼女たちのために戦うことはできる。それだけは、何かがあるのだと思った。




