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第14話:血の商談、悪魔と歩む六本木へ

誰かが気づいたことがあるだろうか?開いている店はいつもあるのに、客が一人もいない。中には誰も欲しがらない高すぎるガラクタが並んでいる。秋葉原の端にもそんな店がある。外にはいつも誰かが立っている。商売を促すためじゃなく、警備のためだ。本当の商売は二階にある。


朝日が昇ったばかりの頃、俺とヘカテは神社を出た。俺たちの不意の到着を待っている情報屋がいた。


アートギャラリーの前のドアが、俺たちが入るときに元気よく鳴った。


中に入ると、埃、カビ、そしてそれらを隠そうと必死な安っぽいお香の匂いが混じっていた。


ひび割れたキャンバスが壁に並んでいる。抽象的な形、顔のない女の肖像、そして腐りかけた浮世絵の版画。客は一人もいない。店員もいない。遠くの隅に、動かない男が立っていた。


俺たちはその男に話しかけなかった。ただ通り過ぎた。


狭い階段を上る。


二階。


その境界を越えた瞬間、空気が変わった。まるで皮膚と骨を押しつけられるように重くなった。部屋は薄暗く、ビロードのカーテンや錆びたシャンデリアが乱雑に並べられている。ここにはアートはない。ただ、商売がある。


そして、情報屋。


彼は小柄で、アンティークの机の後ろにあるバースツールに座って、足をぶらぶらさせていた。インプだ、身長はおそらく90センチほど。タバコが割れた口の端にぶら下がっている。目は下水道の水のような色。笑顔はナイフのようだった。


「おおお、」彼はだらけた声で言った、灰を床に落としながら。「こいつはこいつは、ブッチャーじゃねぇか。お前の話、久しぶりだな。死んだと思ってたぜ。」彼の笑みが広がった。「それとも、もっと悪いことになったか?引退か?」


ヘカテはドアの枠に寄りかかり、腕を組んだ。「情報を探しに来たんだ。無駄話はいい。」


インプはヘカテにキスを吹き飛ばした。「かわいいね。でも、かわいさじゃ家賃は払えねぇ。」


俺はぼろぼろのタバコの箱を机に投げた。空っぽだった。


彼の笑みが鋭くなった。「金がないか?取引はなしだ。」


俺は一歩前に出た。「吸血鬼の一団を探している。ナハトアウゲを盗まれた連中。」


インプは低く、ゆっくりと口笛を吹いた。「ああ、なんで来たか分かってるぜ、お前。だが金がないってんなら、俺を強奪するつもりだろ?それは商売にならないな。」


二人の影が、部屋の隅から現れた。見たことがなかった。


一人はヴォイドフレイムの大魔王。皮膚が脈打つような虚無の光でひび割れ、笑顔は広すぎ、爪がビクビクしていて、何かを生きたまま剥がしたくてたまらないようだった。


もう一人はシャドウ・レヴェナント。空気にただの波紋が浮かぶように、光が死んだところに人型のぼんやりした影があった。目は、黒い顔に小さな白い切れ目のようなもの。


「もちろん、複数の支払い方法を受け付けてるぜ。」彼はヘカテを見ながら舌なめずりした。「お前の汚い小さな鬼ビッチを満たしてやるのもアリだな。」


僕は体を前にかがめた。インプがクスクス笑った。「おい、ほんとうにこのまま無傷で帰れると思ってるのか?」


ヘカテを振り返り、僕はささやいた。「あの鬼ビッチのことだけど…本当に手に負えないんだ。」


ヘカテは指を鳴らしながら、顔を歪ませてニヤリと笑った。「退屈してたところだ。」


ヘカテが最初に飛び掛かった。レヴェナントが動く暇もない。


ヴォイドフレイムが僕に向かって振りかぶった。僕はその爪をかわし、肘でその肋骨を打ち込んだ。何かが折れる音がした。火がコートの袖を舐め、肌まで焼けた。うめきながら、膝にヒールを叩き込んだが、それはひるまなかった。


その後ろで、ヘカテが舌打ちとともに回転し、剣を槍のように突き出してレヴェナントの突進を真ん中で受け止めた。レヴェナントは鋭い叫び声を上げ、空気がガラスのように割れた。


部屋は熱と影、血と呪火に満ちていた。


僕は鈍っていた。雑だった。長い間、まともな戦いをしていなかった。


大魔王の爪が僕の横腹を引き裂いた。浅い傷だったが、焼けるように痛かった。俺の刃がその喉に突き刺さったのは、心拍数一つ分後だった。そいつはうめき声を上げ、倒れ、虚無の光が煙のように漏れ出した。


ヘカテはレヴェナントを足元で押さえ込み、古代語で何かを呟くと、素手でそれを真っ二つに引き裂いた。角がかすかに輝き、そいつは油のような霧に消えていった。


部屋は静寂に包まれた。


インプはそのバースツールの上で凍りついたまま、目を見開いていた。


僕はよろけながら、横腹に手を当てた。血が流れていた。浅い傷だが、地獄のように痛んだ。


ヘカテは歩いて近づき、インプの腕を掴んで人形のようにぶら下げた。唇をすぼめて言った。「お前は『鬼ビッチの姫』って呼ぶのよ、こびと。」


インプの体を掴み、腕を引きちぎった。


「話せ。」僕は血を口から拭いながら、かすれた声で言った。


インプは笑いながら、血が彼の下にたまりつつあった。「おお、ブッチャーさん、まだ面白いな。分かった、分かった…」


生き残り本能が働いた。


六本木のナイトクラブで運営されている吸血鬼の巣。表向きは輸入品、遺物、血液、禁断の品を扱う商売。ナハトアウゲは届いたが、最終目的地には届かなかった。


インプが干からびたように口を閉じると、僕は銃の銃口をその頭の後ろに押し当てた。


「ここから出ることはない。」僕は言った。


インプはため息をついた、まるで懐かしむように。「そうだろうな。奴ら、お前が来るのを知ってる。待ってるんだよ。むしろ、お前が歩いてくるのを望んでる。」


僕は引き金を引いた。これはただの商売だと言い聞かせたが、そんなことはない。


銃声は小さく、こもっていた。ほとんど反響もしなかった。


ヘカテは腕を組んで見守り、僕が頬の血しぶきを拭うのを見ていた。


裏口から出て、雨に濡れた路地に足を踏み入れた。


横腹がズキズキと痛み、肋骨がうずく。魂の方がもっとひどかった。


ヘカテがちらりと僕を見て、表情は読めなかった。「大丈夫?」


僕は震える息を吐き、吸いたくもないタバコに火をつけた。「ああ、最高だ。」横腹に手を当てて治癒魔法をかけた。これで、俺が不死じゃないことを改めて思い出した。


ヘカテはかすかに微笑んで、首をかしげた。「どうやら、クラブに行くことになりそうだね。」


俺たちは駅へ向かって歩きながら、周りの視線を感じた。完璧な美貌の彼女と、俺。ぼろぼろの浮浪者。六本木へ向かう。


次の血の跡を追って。

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