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第2話1:満員電車とゾンビ都市の亡霊たち

電車はぎっしり詰まっていた。百人もの人々が同じ金属の棺の中に押し込められ、目は光る画面に釘付けだ。まるでサキュバスでも破れないほど強力な呪文がかけられているかのようだ。唯一の音は車内放送だった。「お待たせしております。現在、人身事故のため遅れが生じています。」


誰一人顔を上げない。この車両で「速達」と言えるのは、誰もが自ら命を絶つことだ。


俺は車両の後ろに立ち、ネオンと黒いガラスがぼやけて流れる街の景色を眺めていた。東京の街並みはかつて意味があった。今では、空っぽの野望と瞬間的な満足感の墓場に過ぎない。


皆が自分に夢中なのに、車内の広告がこんなにも目に入るのが不思議だ。一つは「バニーガールズ: 触れて、飼いならして、超越せよ – 新宿ドリームラウンジ」だった。


別の広告は「体重を減らして、夢の体を手に入れろ! 新海メディカルは新規患者に初月無料で治療を提供」とあった。だって、努力と規律じゃ売れないんだろ? 半分の時間で同じ結果を約束して、汗一滴もかかずに済む薬があるのに。


都市が腐敗するにはかつて危機が必要だった。今では、便利さだけで済む。


目の前の列を見渡すと、ボロボロのスーツを着たサラリーマンが無限に続く、同じポーズ、同じ表情を浮かべた女の子たちのギャラリーをスクロールしている。年齢を重ねた女性は、こっそりデートアプリを開き、会うはずもない男たちにいいねを送っている。オンラインで女の子たちが受ける注目は、自己価値感を増大させる。でも、男たちは誠実さを求めていない。愛なんていらない。ただ、偽りを作るための十分な金さえあればいい。


数席先、老人がモンスター捕獲ゲームをしている。彼のアバターは、制服姿の小さなダークエルフで、キャンディを杖のように振って笑っている。セックスは売れる。現実のものは、彼の心臓を引き裂いて、森の精霊と契約を結ぶために使われるだろう。でも、今時、誰が昔話を語るだろうか。


俺たちはそれらを作り変えた。モンスターたちを清浄化し、その姿を売り、古代の恐怖をマーケティングマスコットに変えた。人間じゃないものを金に変える方法を見つけてから、ようやく共生が始まったなんて面白い話だ。


窓に映った自分の姿が一瞬目に入った。男の顔をした影。電車に乗ったただの幽霊だ。どんなに酷いことをしてきたとしても、俺は他の奴らと同じく人間だった。


多分、俺はただの愚痴っぽい奴なんだろう。あるいは、人間同士のつながりが大切にされていた頃を覚えているだけかもしれない。今じゃ、目を合わせることさえ侵入行為に感じる。まるでファイアウォールを突破するような感覚だ。


昔は、社会の堕落を女性のせいにしていた。エンパワーメント? それが今では、500円で裸の写真を売ることだっていうのか。半分は文章もろくに書けないが、ポーズの決め方、カメラの角度、絶望的な男たちを「いいね」やサブスクリプションのループに引き込む方法は知っている。野心や独立についての話なんて、ただの絶望を魅力的に見せるための言い訳に過ぎない。


元々、地下の生き物たちが提供していたサービスが、今や主流の起業ルートになった。ラブホテルの壁の裏で囁かれていたことが、今では割引コードや普通のチェキで宣伝されている。結局、1時間寝ているだけで一日分の給料が稼げるって話は、誰だってやってみたくなる。彼らはそれを解放だと言うけど、俺にはただの商業化された孤独に見える。うん、確かに俺もその機械の一部かもしれない。俺がもらう仕事のほとんどはグラビアのゴミだ。ひどい照明、レンタルされた笑顔、エアブラシで塗りたくられた嘘。


でも、時間が経つにつれて気づいた真実がある。男が問題なんだ。昔からずっとそうだ。仕事が終わったら、毎日コンセプトカフェやキャバクラに駆け込む連中がいる。自分の名前を覚え、偽りの愛情を仕事にしているティーンエイジャーに崇拝されている大人たち。彼女はお前のジョークで笑ってくれる。お前が特別だと言ってくれる。そして、帰り際にはお前の名刺をゴミ箱に投げ捨てる。お前の妻や子供はお前が一生懸命働いていると思ってる。哀れなもんだ。


それから底辺の連中がいる。バーチャルアバターに夢中になって、決して会うことのない女たちに必死なメッセージを送る。スクリーンの向こうには「マネージャー」がいて、毎晩推しのベッドを温めながら興味を引き続ける。最も悲しいのは? 彼らはそれを分かっている。それでも金を払う、ただ求められていると感じるために。


それにしても、女ってのは面倒だ。存在するだけで崇拝される。男たちはまるで犬が食い物を巡って争うように、女たちを取り合う。基準もない、恥もない、努力もない。ただ注目、取引、そして放棄のサイクル。誰もが何かを売っている。尊厳は、メニューで最も安いものでしかない。


電車がようやく最終目的地に到達して止まった。ドアが開く。誰も言葉を交わさず、従順の波のように人々は流れ出していった。


俺は降りて、深呼吸をした。街の空気は冷たく、腐ったように重く、あまりにも静かすぎた。家は近い。


人間とモンスターの一番の違いが分かるか? モンスターは思いやりを学ぶことができる。人間は? 七つの大罪を学ぶだけだ。俺たちはモンスターを飼い慣らした。だが、人間は? まだ野生のままだ。


JPSDFのモットーはこうだ。「より良い明日のために戦う」だが、明日なんて何の意味がある? 今日はすでに冗談みたいなものだ。こんな馬鹿げたことに人生を捧げてきたことが、すべてを苦くさせた。

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