第12話1:祈りなき街の片隅で
メッセージが届いたのは、夜明け直後だった。
安全なチャンネルからの静かなピング。アクセスできるのは、たった三人だけのはずだった。
すぐには確認しなかった。
代わりに、私は新宿の路地裏にある朽ちかけたベンチに座り、選択肢を切り替える自販機を見つめていた。座っている木の板は、割れそうな音を立ててきしんでいた。まるで、自分が何者かを知っているかのように。
ピング。
今度は見た。
[フェイ:「報告: 予備的な現場監視計画。相馬原駐屯地。ロシアの情報筋が確認した異常活動。」]
煙を吐き出した。手に持っていたタバコはすでに冷めていた。火をつけたことすら気づかなかった。
[フェイ:「更新: 作戦開始。渡辺とJPSDFが関与。ジンの準備が確認された。」]
ジン?小さな災害で満足せず、いっそ終末を賭けるのか?
フェイはまだ私がチームの一員だと思って連絡してきた。
まるで、私が離れていないかのように。
まるで、私があの人たちと一緒にいることで、自分が何になるのか耐えられなかったなんて、知らないかのように。
もう一つのピング。
[フェイ:「カズマ様…あなたがこれを読んでいることはわかっています。戻ってくるようには言いません。ただ…範囲内にいてください。」]
私は使い捨ての携帯を閉じた。面倒なことになるだけだ。
外では、街が疲れた機械のように動いていた。うるさい。眩しすぎる。速すぎる。次の嵐が来るのを感じることができた。
けれど今は、ただそこに座っていた。動く理由を待って。
避けられない叫びを待ちながら。
街は腐るのにモンスターは必要なかった。サラリーマン、ヤクザ、死んだ目で笑う女たち、誇りで価値を測る男たち。私はただ、彼らの中を歩いていただけだ。
フェイにミッション・コントロールを任せろ。アリスにカルトの女王を任せろ。
ジョロウグモとイリーナに刃を研がせろ。
私は座っていた。一人で。待っていた。
避けられない叫びを待ちながら。
その日の朝、私は新大久保をさまよった。
早朝の雨で濡れた脇道。店の看板がガタガタと揺れていた。
一瞬、どうでもいいことを思い出した。二人の若者が間違ったホステスを選んで無料で歯医者を受けた路地裏。ルリとミオの配信を見逃した夜。
はっ。
今は、あいつらの姿なんて見えない。
空っぽの笑いが喉をこすった。
古い傷、古いパターン、古い借金。東京にはそれが多すぎた。
どこかで、フェイとアリスは糸を引いているのだろう。たぶん、ルリやミオも。彼女たちが小さな影のように陰謀を巡らせている姿を想像した。
「彼女たちはただ情報を集めているだけだ。」自分に言い聞かせた。「大丈夫だろう。」
もう一本タバコを吸った。行き先もないまま歩いた。私はもう一時間、参加することのない日々の隙間を流していた。
ピング。
[フェイ:「カズマ様。位置情報の更新をお願いします。返信ください。」]
私は目を閉じた。一言もタイプしなかった。
ピング。
[フェイ:「カズマ様。ステータスの更新をお願いします。グループは独立したフィールドワークを計画しています。私は—」]
私は携帯を閉じた。どうやら、教訓はまだ学んでいなかったようだ。
風が冷たく顔をすり抜けた。遠くで女性が笑う声がした。上空の電車がレールを鳴らしていた。
東京はガラス越しにぼやけていた。
私は行き先もなく歩き、手はコートの中に深く突っ込み、足元のひび割れを見つめていた。息は小さな白い霧のように出ていた。
使い捨ての携帯はもう一度も震えなかった。
よし。
それとも、悪いか。
もうわからなくなっていた。
私は灰と記憶に溺れながら座っていた。街の反対側では、いわゆるカルトの女王が戦の会議を開いていた。




