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第7話1:闇を運ぶバン、地獄を越えて

バンは、まるで静かに死にたがっているかのように、赤城山を喘ぎながら登っていた。


ハンドルを握る手に力が入る。カーブが怖かったわけじゃない。アリスが、ここ三十分ずっと、呪われた魔法少女アニメの主題歌をハミングしているせいだ。


彼女は助手席で足をダッシュボードに乗せ、どこか満足げな笑みを浮かべていた。まるで、始まってもいない口論にすでに勝ったような顔で。


「ねえ、私のこと、気にならないの?」とアリスがまつげをぱちぱちさせて聞いてきた。


「できるだけ何も聞かないようにしてるんだ。」


後部座席では、ヘカテがドアに押しつけられるように座り、沈黙の中でピクリとも動かない。ただ、アリスが少しでも動くたびに、彼女の魂が縮んでいく音が聞こえる気がした。


そしてその後ろには――ダッフルバッグ。人ひとり入るサイズで、ギシギシときしんだり、時折うめいたりしている。途中から中のジョロウグモがファスナーを半分開けて、今は天井を見つめながら人生を後悔しているようだった。


アリスが身を乗り出してきた。「カズマ〜」と甘く囁く。「また悩んでる。健康に悪いよ? 趣味を持ったほうがいいってば。たとえば復讐セックスとか。空いてるよ、私。」


「帰ったらお前の取扱説明書を読むつもりだ。どこかに電源ボタンがあるはず。」


「ひど〜い。全部あなたのためにやってるのに。私、あなたのビジョンを信じてるのよ?」


「お前は見たいものしか見ない。俺のビジョンは、ただこの世界のクズを締め上げることだ。」


アリスは大げさに体を倒し、片手を額に当て、死にかけのヒロインみたいにため息をついた。ヘカテは座席を侵食されて、反射的に身を引いた。


「彼は深淵から現れし者――征服者ではなく、孤独な鎮魂歌だったのです……」

彼女は呻くように言いながら、椅子の上でもぞもぞと悶え始める。


彼女の胸元に寝そべっていた妖精は、それに合わせてミニチュア版の動きを再現。キラキラと魔法っぽいエフェクトを撒き散らしていた。


「私は汚泥の中に横たわり、天に見捨てられた存在だった……そんな私の前に彼は現れた。救いではなく、怒りと飢えを携えて……逃げるべきだった。なのに、私は喰われたかった――」


「ヘカテのほうがまだマシだな」と俺はつぶやいた。「あいつは普通に殺そうとしてくるだけで、変な演出はしない。」


だがアリスの劇場は終わらない。


「我が救済者。我が主。我が不本意なる預言者……」

その声は震えるほどの演技過剰。

「あなたが信じぬからこそ、我らは信じる。その信仰こそが新たな世界を――人と魔が手を取り合い――」


「興味ない。」

俺はバッサリ切った。

「奴らが帝国を築こうが知ったことか。俺はずっと影にいる。」

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