(1)
電車は18分発。
私はふと、時計に目をやると、既に長針は3を示そうとしていた。
少しの焦りを感じるまま、私は本のカバーの端をそっと
読みかけのページへ挟ませた。
重たいバッグに気を滅入らせながらも、悠々と立ち上がり、
エスカレーターへ移動する。
その手前には、朱色の夕日を孕んだ、大きな窓が佇んでいた。
駅の中であれば、
すれ違うだけの他人の顔、鼠色の冷たいタイル、眼を刺すような電光掲示板、
なんていうような虚しいものしか目に入らないはずだ。
そのためだろうか。
私は妙に、その変哲のないようなのどかな情景に、
一種の儚ささえを感じたものだった。
私は淡く光る電車に乗り込んだ。
やがて、空は徐々に濁った青色に蝕まれ始めた。
山の輪郭は紺色へ溶け込んで、雲と一緒に何処かへ隠れてしまった。
じっくりと、そんな車窓の外を見つめながら、考えを巡らせる。
目的の駅へ向かうまでのこの時間、どうしても暇になるものだ。
しかしながら、考え事が良く捗る。
勉強でも出来たら良いのだろうか。
疲れているし、時間も中途半端だし、
と、下らない思いを巡らせる自分に嫌気がさす。
定期テストも近い。
勉強しなければならないのは痛い程実感できたが、
どうしても実行する気にはならなかった。
波に体を委ね、揺られ、流されていくように、只々、受動的に授業を受ける。
対して頭に入らない公式を詰め込む。
この作業に楽しさは見出せない、少なくとも私は。
多少言い訳をする自分にも呆れながら、
勉強を怠る口実を考えるうちに、ついに電車は私の降車駅へと着いてしまった。
外はもう暗がりだった。
ドアが開く。
夏の匂いと、纏わりつくような生暖かい空気、車内の涼しさが混ざり合った。
足取りは重くとも、私は前に、前にと踏み出して
その空気をかき分けながら進んでいく。
初投稿たごです、
お読みいただきありがとうございました、短く文脈がおかしい所もたくさんあるのですが、ひとまず
終わりが変なとこで途切れてますが気が向いたら更新しようと思います