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モール忍者  作者: KO
7/8

第7話 能面

なんで店長が拳銃を持っている?

シューヤは驚きで動けなかった。


「シューヤ君ってさ、多分あの子供の護衛だよね?」


困惑で声が出ない。なんで俺はこんなに動揺している?


「邪魔されたら困るんだよね...」


今まで恋愛をしてきたことは無い、女の子と遊ぶくらいでちゃんと付き合った女性は...いないと思う。


「いつも明るいし、シューヤ君と働くの楽しかったなー。私カフェの店長結構ハマってたみたい。」


この喉の奥がつっかえたような感覚はなんだ。


「と、通しませんよ。てか店長なんでなんすか?」


「なんでってなに?」


「いや、なんつーか...こういうことはしない人だと思ってました。」


「したくないよ?したくないに決まってんじゃん。私ね、平岡組に飼われてるんだ。」


平岡組、手段を選ばないやばい連中だって聞いたことがある。3、4年前には警察官を組員が殺すなんて事件があった。


「とりあえず邪魔しないで!」


「平岡組になんか弱み握られてるんすね。」


「うるさい!仕事に集中させて!」


シューヤは腹部にめり込むような痛みを感じた。腹から血は出ていない。

突然小さな爆発が起こり、シューヤは外へ吹き飛ばされた。


「うわっ!なんだ?」


「え?なに?」


やばい、ここは目立つ。周りの客がざわついている。


「かはっ」


吐血?何が起こった?


「ごめんねシューヤ君。私の弾、爆発するんだ。」


「爆発?」


「そう、貫通とかはできないけど痛いでしょ。」


戦いたくない。抱いた女が寝込みを襲ってくるなんてことはたまにあったし、躊躇なく殺せた。でも店長だけには躊躇してしまう。


スムージーを飲んでいたトレドは、驚いていた。その理由は、ユキとの吊り橋効果をさせようとしている使用人たちの気の利きようだった。

来るなと言っていたが、まさか爆発まで起こしてフォローしてくれるとは。


「ユキ!大丈夫かい?」


周りの女の子から『トレド君怖いよー』と擦り寄られても見向きもしない。


「ユキ、僕のそばにおいで!」


腕を引こうとした時、また爆発が起きてトレドは情けない声を出してしまった。


「みんな離れよ!」


トレドは頼りになるポジションを狙っていたが、ユキに奪われてしまった。


「ユキちゃん!」


振り向くと、蓮が上から飛び降りてきた。


「蓮お兄ちゃん!?だ、大丈夫?」


「こっちのセリフ、怪我はない?マイちゃんは?」


「えっと、怪我は大丈夫。マイはおばあちゃん家にいるよ。」


トレドは開いた口が塞がらなかった。なぜなら三階から飛び降りてきたイケメンが、普通にユキに話しかけているからだ。


「蓮お兄ちゃんごめんなさい!どうしても断れなくって...」


え?....断ろうとしてたの?

多分このバケモノを怒らせないための嘘だろう。


「とりあえず今すぐ帰るんだ。家まで送る!」


突然蓮の体が浮いた。


「絶対逃がさんからな!」


「いや、まっさん!逃げないから!」


後ろからまっさんが蓮の襟を掴んで持ち上げていた。頭から血が流れている。

トレドはさらに困惑した。三階から飛び降りてくるバケモノを片手で持ち上げるバケモノが出てきたからだ。頭から血出てるし。


「みんな!この人は俺に任せてくれ!」


まっさんはまるでシューヤがそう言うとわかっていたかのように笑った。

敵と距離を取りながらもトレドを守るような配置で、さらに攻撃のできるポジションを取っていた全員が何も言わず、戦闘態勢をやめた。

忍びは簡単になれるものでもない、そしてたった7人でこれほどの任務を任されているのは、その強さと絶対的な信頼関係があるからだ。『任せてくれ』シューヤがそう言ったのなら大丈夫、全員がそう思っていた。


「てかまっさん、やっぱりその怪我あの清掃員?」


「あの清掃員やべーな!ガハハ!」


え...絶対笑い事じゃない。だって頭から血出てるよ?

ユキは若干ひいていた。


「真面目な話、蓮と互角ってとこでただものじゃないわな。ありゃー、同業だべ。」


「同業?忍びは俺らだけなはずでしょ?」


「お前と同じ施設にいたやつだったりしてな?ガハハ」


忍びの養成施設とわかったのは忍びになってからだ。同じ時期にいた奴らは、官僚やら別の仕事に就いたと聞いた。まっさん曰く、忍びは殉職により新チームが組まれ、これまで生き残った人なんて聞いたことない。しかし、まっさんの予想は否定できない。

そういえば、ノアが戦っていたたこ焼き屋の店長も強すぎた。


ノアは腕から垂れてくる自分の血を眺めていた。

警察官だったノアはまっさんのスカウトで忍びになった。スカウトの理由はどんな武器でも100%で扱えるからだそうだ。器用だとはわかっていたがそこまでの自覚は無い。

憧れの警察官になってから3ヶ月が経とうとしていた。小さな町の交番に配属されていたノアは、地域の人たちから、若くて美人な警察官が来たと人気者だった。

平和な日々が続いていたが、突然大勢のママさん達が交番に駆け込んできた。


「助けて!娘が帰ってこないの!」


「ひなちゃんが?最後に見たのはいつですか?」


慌てるママさん達を落ち着かせながら話を聞く。そこからは、応援を呼び町の人たちと全員でひなちゃんの捜索を行った。

そこからひなちゃんが発見されたのは半月後だった。町の人と多く関わってきたノアだったからこそ発見できた事件だろう。


「開けろ!」


ドアを壊す勢いでノックするノア。


「怖いから開けれない!」


「町長、今開けないとこのドアぶち壊すからな!」


誰も聞いた事のないようなノアの声に、町長は悲鳴を上げている。

舌打ちしたノアは、腰から警棒を取り出して振り上げた。木とガラスでできた引き戸が、ものすごい音を立てて壊れる。

土足で中に入り、しがみついてくる町長を押しのけながら奥へと進んだ。庭に目を向けると、鎖で完全に扉が開かないようにされた倉庫があった。ノアは警棒を振り上げ、鎖を切った。

持っていた懐中電灯で中を照らした。奥に布団が敷かれ、その上に人の姿があった。


「ひなちゃん!」


ノアは走って駆け寄ると、ひなちゃんは息をしていなかった。服ははだけていて、壁には様々な衣装がかけられていた。どの衣装も汚れ、不快な臭いを放っていた。

おそらく死因は、精神的なショックと殴られていたことによるものだろう。


「あのハゲだるま...」


歯茎から血が出るほど怒り狂ったノアは、棚からホコリ被った鎌を取り出して倉庫を出た。膝をついて顔面蒼白になっていた町長は、鎌を持ったノアを見て叫びながら家の中へ戻った。ホコリ被った鎌が、まるで綺麗に研がれた刀のように切れる。

壁やドアを切りながら町長を2階に追い詰めた。年季の入った鎌だ。さすがにここまで使ったことで折れてしまった。

ノアは鎌を捨て、腰から警棒を出した。


「バケモノが!そんな警棒でドア壊すし、鎖切るなんてありえないだろ!」


「あの子は小学校で人気者だった...町長なら知ってるだろ?あの子は来月の誕生日に念願の遊園地に行く予定だった。いっぱい楽しむために、いっぱい良いことしておくってお前も農業手伝ってもらってただろ。そんな...そんないい子を...」


白い歯が赤くなっている。警棒を町長の顔面に向かって振った。町長が吹き飛び、壁ごと外へ押し出された。


「助けられなくてごめん...」


ノアはいっぱいの涙を溜めていた。自分が泣く資格もない、そう思っていたからだ。

ハンマーを取り、2階から飛び降りた。気絶した町長を見下ろしハンマーを振り上げた。


「殺すのか?」


後ろを振り返ると、黒のウィンドブレーカーに身を包み、口元を黒のマスクで隠した大男が立っていた。


「殺す。」


「やめとけ、そんなやつ殺してお前のその力を無駄にする気か?」


「力?半月も少女を見つけられなかったどうしよもない私の力のこと?」


「お前は武器の性能を100%使うことができる。この家の状況を見れば一目瞭然だな。」


「どうでもいい。」


「俺は太田 まさとしって言うんだ。みんなからは『まっさん』って呼ばれてる。」


「どうでもいいって。」


「俺たちはな、国家直属の秘密部隊『忍び』ってチームなんだ。お前をスカウトしたい。」


「1人じゃん。」


「もちろん俺以外にも3人いるぞ!女性も2人いるし働きやすいんじゃないか?」


「だからどうでもいいって!」


ハンマーと警棒の二刀流でまっさんに向かっていく。

この時は確か、30分以上まっさんと戦った。まっさんのあまりのしつこさに折れてしまい、忍びに入ることになった。

ちなみに町長は右足と両腕の粉砕骨折で後遺症が残ることになった。



「ちょっと!ノア大丈夫?」


シズクが慌てて走ってきた。


「ん〜。今日は動けないかな。」


「あいつの目玉たこ焼きにしてやる...」


「私は食べないからね。」


シズクはノアの応急処置をして移動した。


立体駐車場を歩いていた男は清掃員の服を脱ぎ捨てた。

唇から出た血を手で拭った。


「よぉ、忍びはどうだったよ。」


「まあまあだな。」


「キョウジさん、俺たちが頼んだ仕事はガキを誘拐するまで忍びを抑えるだったはずだよな?」


「さすがに現役の忍び2人を相手にするのは老体に響く。」


「金払ってんだ、しっかりやってくれないと困る。」


「平岡さん、俺1人抜けたところで問題ねーよ。」


キョウジの凄まじい殺気に平岡は後ずさりしてしまった。


「まあ、一応隙はできると思うよ。」


キョウジはスマホを取り出しどこかに電話をかけた。


突然、モール中の明かりが消えた。


「なんだ!?」


まっさんの肘が蓮の肩に当たった。


「うわぁー!」


トレドの悲鳴だ。蓮たちは人の位置をだいたい覚えているため、まだ見えないのにも関わらず人を避けながらトレドの方へ向かうことができた。


「どこだ?」


蓮は周りを見渡し、気配で探る。


「みんな!」


シズクの声が上から聞こえた。

全員がシズクの方へ向かう。


「非常階段の方!」


蓮は壁を蹴って渡りながら、人混みに紛れず最短で非常階段へ向かった。


「うわっ!」


正面から何かが飛んで来たことで、蓮は体勢を崩してしまいトレドを追えなかった。扉が開いたことで一瞬姿が見え、トレドは誰かに抱えられていたことがわかった。


「蓮!坊っちゃんは?」


「多分攫われてます。今から追います。」


外に出ると、3、40人のヤクザが武器を持って待ち構えていた。黒のマスクを付け直し、襲ってくるヤクザを確実に戦闘不能にしながら後を追う。

あと4人というところで、後ろから飛んできた物で耳が欠けた。


(非常階段の時飛んできたやつだな。クナイ?こんなものまだ使うやつがいるのか。)


蓮は、欠けた耳から出る血を抑えながら後ろを見る。


「今どきこんな忍具使う人いるんすね。」


蓮は上を見上げると、鉄骨の上には獅子口(ししぐち)と呼ばれる鬼神系の能面をつけた人間がいた。


「俺あんた知ってるよ?歴代最強の忍びって言われてる男だろ。そんな奴が簡単に背後取られていいのかよ。」


「言われたことないけど...」


獅子口の能面は鉄骨から飛び降りた。蓮はまっさんの『元忍び』という言葉を思い出していた。

蓮は落ちていた短刀を逆手に持ち、構えた。


「そんな今拾った合口で俺と戦えんの?慣れた武器取りに行けよ。 」


「行くぞ...」


獅子口の能面は、2本のクナイで蓮の攻撃を防いだ。蓮は防がれた瞬間、獅子口の能面を蹴り飛ばした。自動ドアを突き破っていった。

トドメを刺しに行こうとした時、煙玉がどこからか飛んできて、視界が悪くなった。

いくつかの気配が突然現れ、蓮は戦闘態勢に入った。煙の流れが変わり、なにか来ると察した瞬間横から巨大な鎖鎌が現れた。


「あっぶね!」


後退しながら防いだことで致命傷は避けられたが、武器が折れてしまった。


「これ防ぐか〜。やるな〜。」


小尉(こじょう)の能面を付け、巨大な鎌を持った大男が煙を払いながら言う。


「さすがだ。」


少し老けた声、目を向けるとそこには翁の能面をつけた男が立っていた。


(いつからいた!?)


蓮は能面の中で誰よりも翁の能面を警戒した。


「私たちの依頼主の目的は半分が成功した。これからは同時に私たちの任務を遂行する。」


次々に現れる能面。全部で10人だ。


「私たち"元忍び"は3日後、このショッピングモールに、総理大臣を招待する。」


何を言ってるんだ?1人1人観察するが、全員が相当な強さだ。


「そこで。計画に邪魔な忍びの皆様、あなたたちも3日後このショッピングモールへ招待致します。」


翁の能面の右手にいつの間にか人が掴まれていた。

姿を見た蓮は怒りで震え出した。


「ユキちゃん!!」


「3日後!このショッピングモールへ来い!」


「待て!」


翁の能面の前に他の能面が立ち塞がる。


「こいつ動けるな!」


攻撃を避けながら翁の能面に向かうが、他の能面に邪魔をされ地下駐車場まで飛ばされてしまった。

血だらけの蓮は、能面達の後ろ姿を睨みながら気を失った。

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