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8. 開かれた扉。そして踏み出した世界。

出社最終日。

文乃の目に映る世界は明るく照らされ、爽やかな空気に満たされていた。

今日、文乃は人生の一部を彩った会社員としての生活に終止符を打つ。

出勤最終日、快晴。

朝、会社にて...。


別部署の友達と話が弾む。


友達「五ヶ瀬さん、なんか表情、明るくなりましたね。肩の荷降りたって感じかな..?」


文乃「うん、そうだね。ほんとそんな感じ。まぁ、よりちゃんと離れるのは少し寂しいけどね。」


よりちゃん「ふふ、嬉しいこと言ってくれますね。....五ヶ瀬さんは私がお嫁にもらう予定だったのですが、残念です。ふふっ♪」


文乃「あはは♪確かに変な男と結婚するより、趣味の合う、才色兼備なよりちゃんと結婚した方が、生涯楽しく暮らせそうかもね。」


よりちゃん「...、元気でいてくださいね。たまにはこっちに来てくださいね、私も遊びに行きますからね。」


文乃「うん。落ち着いたら連絡するよ。お互い、元気でいようね。」


会社で付き合いのあった人達と挨拶し、話をしていると、朝礼となった。


部長「えーおはようございます。皆さんご存知の通りですが、本日を持って五ヶ瀬さんが出勤最終日となります。彼女は有給消化期間を経て、退職となります。えー、彼女の仕事での役割は大きく、これまで大変に貢献してくださいました。みなさん、彼女へ拍手を。」


888888888888〜


部長「え〜、......中略〜....」


部長「...〜この後、仕事は大変になるかもしれませんが、支えてくれていた彼女を心配させないように、みんなで一致団結して、仕事に取り組んでいきましょう。五ヶ瀬君、これまで本当にありがとう。従業員を代表して厚く御礼を申し上げます。」


8888888888〜


...

...


文乃「ふーむ...実際のところどう思ってたのかなぁ....、こんだけきちんとしたスピーチ貰えちゃうと、よくわかんなくなっちゃうね...。部長って実は気にかけてくれてたのかな...?」


少し苦笑いを浮かべ、部長の心遣いのあるスピーチへの感想とする文乃だった。


朝礼が終わり、私は部長のデスクへと向かう。


一連のやり取りの後、

どこか残念そうな顔で、されど少しだけ嬉しいような顔で、部長は封書を受け取った。


部長「確かに受け取ったよ。ここ出ても頑張れよ。期待しとるけえの。」


こういう顔をするってことは、やっぱり私を相当には認めてくれてた?それでいて送り出してくれてるんだろうか?

そうだとしたら、少し嬉しいかも...。



まあ本心はわからない。

が、

もはや道は決まってしまった。

もう後ろは向くまい。

何を思っていたとしても今日、ここでの生活は終わる。


部署内での仕事回しは、当分の間は大変になるだろう。

同僚や先輩後輩達にはしっかり頑張ってもらってね。

丁寧に振り分けて処理すれば、何も問題は無いはずだよ。


...これまで散々尻拭いをさせられてきた。

その事に対しての、ささやかな復讐心は内包はしているだろう。


が、


在勤中においてのネガティブな気持ちはもうなかった、


..むしろ重荷を下ろしたような清々しささえある。


この日、

...正式に退職届を手渡した。


もう、戻れない。

戻ることはできなくなった。


..今になって、大きな不安が胸を包もうとする。

だが、迎えてくれる家族、送り出してくれる友達。

あたたかいみんなに貰えた勇気は、不安を振り払い、未来へと目を向けさせてくれる。


...さようなら、これまでの私。

そしてよろしくね、これからの私。


........

........


翌日、朝。


定時に起きなくても良い朝。

明るい朝日が差し込む中、目を覚ます...。


どこか軽い身体を起こし、窓を開く。

爽やかな朝の空気が流れ込み、頬を優しく撫でる。

私は、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。

心の奥底から、力が漲ってくるのがわかる。


....

未来に対する不安が消えることは...、たぶんない。


だが今は、

それ以上に大きなエネルギーが身体中を巡っている。


高揚感と優しい感情が巡り、身体中を包み込んでいる。


あれだけ憎らしかった朝の太陽が、今はこんなにも愛おしく思える。


文乃「これが世界の色か。気持ち一つでこんなにも見え方って変わるんだね....。」


文乃を取り巻く世界は変わった。

過去は過ぎ去った。

そして、新たな世界へと歩み出した。


文乃「もう、なるようにしかならないよね。今はこの自由を感じていよう。」


そして、有給消化期間へと入った私は、束の間の休息と、引越しに向けた準備を進めていく...。

思い悩みながらも、前へと歩んで来た馴染んだ現在との決別。

だがそれももはや過去の思い出となった。

この記憶はきっとこの先の未来で私の糧となる。

いつかの未来で良かったと言える、そんな思い出となってゆくのであろう。

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