4. これが、社会的責任。...なのだろうか...?
文乃の職場の何気ない、さえない一日。
そこには安らぎも、ときめきも、ま新しさも、正の感情は何にもない。
あるのは負に振れようとする心と、無心を演じる心のせめぎ合い、そして沢山の仕事だけ。
某日
第一貿易株式会社。
社員「おすー、どうだ?仕事慣れてきたか?」
若い社員「ぼちぼちですねー。」
社員「早く覚えてサポート頼むぜぇ、人足りてねえからなぁ。」
若い社員「うすっ。」
社員「イツカさん、進捗どう?」
文乃「やがて次の段階に移れます。」
社員「じゃあさ、合間にこれもお願いするわ。俺、次の工程行って進めたいからさ。」
文乃「これ....、頼んでる間に取り掛かってたら、すぐ終わりますよね?」
社員「すぐ終わるんでしょ?やってよ。忙しいのよ、男は。じゃ、頼むね〜」
立ち去る。
文乃「.....これだけの為の準備に無駄に時間がかかるのに...、なんて効率の悪い...、自分でやればすぐ終わるやろ...。うちだって忙しいんぞ...。」
若い社員「あ、イツカ先輩、自分もいいっスか?」
文乃「...うん?」
若い社員「これもお願いしたいっス。」
文乃「.....これ、三日前にキミがやれるって言って持っていってた案件じゃない...、どうしたの?」
若い社員「いや〜、なんつーか、ちょっとムリっすねw」
文乃「........」
若い社員「それと、ちょっと今日は帰ってやらなきゃなんないことが出来ちゃって、無理になったっスwww」
文乃「...中間報告しろよ。そして出来ないなら持っていくなよ。」
若い社員「そう言わないで下さいよ〜、やってみなきゃわかんないじゃないっスかぁw、やる気を尊重してくださいよぉ〜ww」
文乃「.......。」
どうでもよいことでも、とりあえず顎で使いたがる同僚
(指示したがりの性質、精神的な優位性を確保したいのか?)
と、
無駄なやる気と、無駄な前向きさで能力を大きく見せたがる後輩、圧倒的経験と実力、そして思慮配慮、責任能力不足。
何もかも足らない。
(のくせにプライドは高い。能力不足なので無駄な事をしてくる。結果仕事の流れを止めるうえ、結果、後で泣きついてくる。現状、ほぼ害悪)
どうあれ、仕事は仕事。
コイツらに気を取られて足を停めていたら、自分の仕事にも遅れが出てきてしまう。
気持ちを割り切り、精神の乱れを整え、処理モードに入る。
.....とはいえ個人の能力には限界があるものだ。
もちろん今日も、間に合うはずもなくサービス残業。
時々回ってくる専務や常務。
今日も無駄な残業しやがって.....。
...みたいな目で見てくる。時々は嫌味も言ってくれる。
「俺の若手時代の残業は、こんな無駄な処理してなかったんだがなぁ。能力が足りてないのかねぇ?若い奴はもっと前向きな仕事の仕方はできないのかねぇ。」
....お前ら、
先代からちゃんと聞いてんぞ?かなりのポンコツだった話。
してなかった、でなくて、出来なかった。だけやろ?
ポスト付きなのもただ身内なだけじゃねぇか。
話盛ってんじゃねえぞ、タコ。
...しかも最近じゃ、ただ座って置物みたいになってるだけやろ。むしろ現場を手伝えよ。
実務は全部部下にやらせて、あんたらマジで最近何もしてないじゃん。書類見てるふりして、ケータイゲームで時間潰してるのバレてるんだからな。
...ま、思っても言いませんけどね。あー無視無視。
そして、先輩(と言うふうに表現するのも胸糞悪い。◯ソという表情で充分。)の帰り際の一言。
先輩「仕事管理もできんけぇ、残業せなあかんようになるんじゃ、他のもん見習えや。」
文乃「......。」
無視してもくもくと仕事する。
過去の因縁があるコイツに、説明する気はもう無い。
顔見るのも不快。こっちは目を合わせることも、口を開いてコイツのいる空気を吸うのも嫌なのだ。
先輩はただでさえ不快な顔を、更に顰めて立ち去る。気持ち悪いんじゃ、勘違い野郎。
私のこういう態度を見て、また社長に言いふらすんだろうなぁ、この嘘つきで卑怯者の口だけ男。
社長と、年数と歳が近いだけで、管理力も人徳もない癖にふんぞり返ってやがる。
年功序列は尊敬できる相手にしか適用しねえんだよ!
アホが!
あーー........、とりあえず、軽く◯なねぇかなぁ、コイツ。
.....奴と関わると、心の中に黒いものが満たされて行くのがわかる。
私自身も、悪意で満たされてしまう。
.....本当に嫌。
...かつてこの男に功績を破壊され、人間関係を壊され、いまだに誹謗中傷で貶められている。
私にとっては、コイツに会った事自体が人生の大災難なんだろうな。
コイツに対する私の恨みは深い。
天地がひっくり返っても、コイツだけは敵だし、永遠に和解はすることは無い。
出来ればすごく長く苦しんで、逝って貰えたら嬉しいとおもってる。
と、まぁ、仲間意識なんて湧くこともなく、こんな恨み言が脳内を駆け巡るが、事を荒立てたくもないので、平静を装って、仕事に打ち込む。
結局、真面目でおとなしい実務担当が、一番割を食う。
一生懸命に仕事に打ち込んで、たった一度の小ミスで責め立てられ、自信を失って窓際に送られた人、辞めた人...、これまで何人いたかな...。
目安箱もあるけど、部署と名前記入必須の上、あの無能幹部が検閲するって時点で、誰も何も書けない。
あいつらが目にする時点で、すでにオワコンなのよねー。
個人特定されて当たりが強くなっちゃうの目に見えてるもん。
実際辞めた子で、呼び出されて詰められてた子も居たし。
ここ、人間性そのものに問題が集約されてるのに、上役は結局何にもしない。
その上役が無能な害悪そのものなんだから、まぁ当たり前よね。
あほくさw
そりゃ有能で機転のきく人は居なくなっていくよ。
当たり前だよっっ!!
そうして、悶々と負のオーラに感情を毒されながらも、何とか目処をつけて、今夜も会社を出るのが9時過ぎ。
もちろんサービスね。
文乃「あー...、ご飯作るのたいぎ...。今日はカップ麺で良いか...」
文乃「ニュータッチ買い置きあったなぁ。今日はさのまるくん食べよ。あ、やべ、よだれ垂らしちゃった....」
家に帰って猫のお世話をしたのち、ビールを開ける。
最初の一口が喉を通り、体に染み渡る...。
疲れ、怒り、悲しみ、情けなさ、いろんな感情がぐるぐると周りだし、重苦しい感情が文乃を包み込む。
が、傍には猫達が寄り添い、愛想を振り撒く。
当たり前のように、さりげなく寄り添ってくれる。
この子達のおかげで、文乃は感情に呑み込まれずに済んでいるのかもしれない...。
残虐ファイトの日々の中、この時間がせめてものささやかな癒しでもあった...。
ビールを飲み干し、
カップラーメンを食べて、ぼんやりしながらレモンサワー9%を開け、口に運ぶ...。
結局の所、お酒を飲もうが、ゆっくり休もうが、嫌な気持ちは完全には消えず、ぐるぐると回る。
もはや、なんの気力も湧いてこない...。
わかっていても何も変えれない、変える気概もエネルギーもない。
明日に何の期待もしないまま、眠りへとつく。
住み慣れた、猫だけが癒しとなっている住処と、何の将来も、期待も持てない職場。
当たり前のように通勤して、当たり前のように機械的に仕事をし、地に足も心も着かないような休日を過ごしていく。
そんな日が続くと思っていた。
...その時までは。
そこにはほとんど何もない。何気の無い、悪気の無い悪意に包まれ、重荷としかならない使命感と責任感を背負い、徐々に毎日に、心をすり減らしていく。
真綿で締められる様に。
ゆっくりと確実に。




