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15. ❶ 弟降臨祭、初日・宮島探訪

引っ越しの日も目前となり、寿喜達一行が文乃の家にやって来た。

久方ぶりの嬉しい顔合わせに、一同は楽しい夜を過ごす。

これから三日間は観光予定日だ。

文乃自身も楽しみにしていた、広島生活最後の思い出作りが始まった。

弟達がやって来た。


言っていた通りに、大型のウイング車で来てくれた。


文乃「おつかれ〜♪遠いところありがとうね、大きいので来てくれたね〜、これなら余裕やね〜♪」


寿喜「これ良かろ?付き合い先の社長さんが貸してくれたったい♪一人暮らしなら、余るくらいかもしれんばってん。」


文乃「ううん、助かる助かる♪すぐ隣に集会所あるけえ、そこに駐めて来るとええよ、遠いところおつかれさま!」


車を駐め、寿喜達が降りてくる。


文乃「疲れたろ?みんな、はよあがりんさい♪ご飯もジュースもお酒も用意しとるけ、呑もうで♪」


寿喜「おー♪ビールビール♪絶対うまかろう♪」


そして会食。

寿喜と話しながら酒を酌み交わす。

二人ともほろ酔いで、うまい酒を楽しむ。

子供達は、ご飯を食べた後はゲームに夢中になっている。


文乃はこの長閑で賑やかな光景を肴に、さらに美味しくお酒がすすむ。


寿喜「片付けはどぎゃんね?」


文乃「うん、ほとんどオッケー。あとは、生活必需品の取り外しかな。」


寿喜「んー、.....見た感じ、だいたい纏まっとるな。これならすぐ終わりそうだな。」


文乃「準備は大丈夫!明日から三日間は観光デイズです、思う存分案内してやっぞ!」


寿喜「おお、子らも楽しみにしとったけん頼むわ。そんで明日はどこ行くと?」


文乃「まずは広島といえば、定番にして至高の宮島です♪」


寿喜「良かな〜♪俺行ったことなかけんね、行ってみたかったったい。子らも喜ぶぞ。」


文乃「明日は電車の始発で行くから、ちょっと早よ起きなんけど、みんな〜、良いかな〜?」


弟一行「良かよ〜♪」


文乃は頷くと、グラスを手に取り手酌でサワーを注ぐ。


文乃「まぁ、今日は呑め!クピクピクピ♪」


寿喜「あー、長旅はやっぱ疲れるなぁ。でもまぁ、走り切った後の酒はうめーなぁ♪グビッ」


...

....

.....


ガタンガタン、ガタンガタン、ガタンガタン.....

そして、今は電車の中。

文乃達は始発の電車に乗り、宮島口へと向かっている。


寿喜「同じ広島県っつっても、なかなか遠いよな。ほとんど山口なんだな。」


文乃「ほーよ、広島は横に長いけんねー。うちの住んでる所が県の真ん中あたりやけん、直線でも60㎞くらいあるし、海岸線で曲がっとるけ、実走では倍とかそれ以上距離あると思うよ。」


寿喜「即ち、まーだ時間はかかるってことね。ほんなら俺はしばらく寝させてもらいますかね♪文乃、後は頼む♪」


文乃「へいへい、着いたら起こすよ。」


寿喜「おやすみ〜zzz」


...


電車に揺られながら広島を駆けてゆく。

夜の眠りがまだ残る早朝の街は、淡い暁色に染められて少しずつ目を覚ましてゆく。

物憂げな表情で、車窓に流れゆく街の景色を眺めながら一人、文乃は考えていた...。


今日のお昼ご飯のことを....。


文乃「....やっぱー、宮島ったら穴子丼っしょ...、それをいただきながらの、日本酒をくいーっと...。キメたいわぁ〜♪あ、忘れてた!まずは生を一撃、ガツンと入れなきゃ始まんないわね〜♪で、あては...穴子ちくわと...、牡蠣の燻製とかないかな〜♪おおう、牡蠣といえばカキフライとアヒージョ!あるかなぁ〜、あったらええなぁ...うむ、うましこそ人生の本質なりや♪うへへへ....♪」


車窓から景色を眺める深窓の令嬢の様なお人は、だいぶ俗な感じのことで頭がいっぱいだったようだ...。


寿喜「...ねえちゃん、独り言デカすぎ...、あと女子が食い気呑み気MAXかよ...、シンプルに恥ずいんですけど...(赤面)」


寿喜は声には出さないが、シンプルに恥ずかしくなり寝たふりをキメこんでいた...。


...


次は〜、宮島口〜宮島口でございます〜、oor〜


文乃「お、みんな、着くぜ!準備せよ!ほら、起きい!」


寿喜は起きたフリだが、ちびっこ達はガチ眠りしていたようで、少々機嫌が悪い。

寿喜と文乃で抱っこして降りる。


文乃「うへー、ひなちゃんほんとおっきくなったね♪抱っこすると実感できるわ〜♪」


久方ぶりの抱っこのせいか、二人ともテンションが上がりすっかり目が覚め、それどころか上機嫌になっていた。


ちびっ子達を抱えながら電車から降車する。

抱えていたちびっ子を降ろし、ベンチで一息入れていると寿喜が呟く。


寿喜「なあ、姉ちゃん。」


文乃「うん?どした?」


寿喜「最近はもうおっきくなってたから、そうた抱き抱えるの久しぶりだったんだけどさ、」


文乃「うむ、私も何年振りかねえ♪」


寿喜「なんかさ、マジ久しぶりに成長実感しちゃってさ、こんなに大きくなってたんだなって思うと、...なんか...嬉しくて泣けてきた...(涙)」


文乃「おぉ、感動しちゃったのかぁ、弟よ♪なるほどなるほど...、それならば♪」


ギュッ♡なでなで


文乃「久しぶり姉ちゃんも、お前を褒めてやろうぞ♪よくぞここまで立派になったのぅ♪」


文乃は寿喜を抱きしめ、頭を撫で慰める。


寿喜「わわわ!や、やめろよぉ!恥ずかしいだろぉ!」


さらに真っ赤になってますます泣きそうな顔になった寿喜は、慌てて離れ、恥ずかしさのあまりに顔を両手で押さえてうずくまる。


文乃「ふむ、弟よ、そのリアクションもなかなかに、見ているこちらが恥ずかしくなってくるぞ♪」


駅のホームで行われる茶番劇を、通行人たちは温かく微笑ましいものを見るような目で包み込んでくれていた...。


文乃「みんな優しいなぁ....。」


ちびっ子達も、普段は見れない寿喜の仕草に喜び、楽しい空気の中宮島散策は始まった...。


...


一通りの茶番が終わり、移動した文乃達はフェリー乗り場に立っていた。


そうた「ねえねえ、船乗っと?」


文乃「うん、お船に乗るよ〜♪少しの時間だけど船旅の時間ですよ〜、お客様♪」


寿喜「あー、海風が気持ちええわー。」


文乃「お、ひさくん、復帰したかえ?」


寿喜「文乃、あーゆーノリ、マジでやめて、ガチキツい、お願いします(土下座)」


文乃「そこまで言うならもうやらないよ、結構面白かったんだけどなー。」


寿喜「こっちは恥ずかしいばっかりなんだよ...(呆)」


そしてフェリーが到着し、一行はフェリーに乗り込んだ。

景色の良いデッキへと進み座を確保する。

こうして短い船旅が始まった。


文乃「皆様〜、正面をご覧くださ〜い♪あすこに鎮座しておりますのが、宮島の大鳥居ですよ〜。」


文乃は芝居臭い添乗員風の案内文と声色で、手をかざす。


寿喜・そうた・ひな「は?どれ?!」


文乃「ほら、あのなんか赤いの。」

文乃が指差す先に、なんか赤い豆粒みたいなものがある。


寿喜「ちっさ!!」

そうた「ちっさ!!」

ひな「ちっさー!!www」


文乃「ふむ、親子揃った良きリアクションですな♪」


寿喜「添乗員みたいなことするなら、普通もうちょっと近づいてからやるもんだべ?」


文乃「ええやん。みんなのリアクションが見たかったんよ。良いリアクションいただきました♪」


寿喜「その感覚がよーとわからんが。まあ、それはそれとして、まじで宮島来たんだな〜。なんか感動もんだわ。」


船が離岸してしばらく経ち、徐々に宮島が近づいてくる。

いつもとは違う非日常感に一行はしばし時を忘れ浸る。


そして船が着岸し、宮島側のフェリー乗り場、正面広場へと一行は降り立った。


文乃「ここからは結構歩くから、少し準備しようか。コンビニ行って来るね〜。みんなもトイレとか済ませておいた方がいいよ。」


寿喜「おう、わかった。二人とも、行こうか。」


しばしの準備を済ませ、再度合流する。

朝の凛とした空気と静かさの中、一行は歩き始めた。


ひな「鹿さんがいっぱいおるよ、うちら倒されん?」


文乃「寿喜を盾にして逃げれば、助かるよ♪」


寿喜「物騒なこと言ってんな。助かるよ♪じゃねーんだわ。」


寿喜「...てか、いいな!この感じ。観光地だからゴミゴミしてるかと思ってたけど、静かで雰囲気最高やないかい♪」


寿喜は周囲を見まわし、朝の空気感にひたる。


文乃「ほじゃろ♪朝一番だからね、一般人もウェイ系もほとんど居ないよ。だから落ち着いて心置き無く参拝できるのさ♪」


文乃「ほら、清盛公の像もあるよ、ご先祖さまなんだからご挨拶しとこ。」


文乃は指を差し先導しながら、ちびっこ達を並ばせ記念写真を撮り、また歩き出す。


まだ開店前の商店前の通りを進むと、やがて大鳥居が現れる。


寿喜達「でかー!」


文乃「さ、神社の入り口だよ。ここから神社に入るからね〜、おじゃましますって頭を下げて、入りますよー。歩く場所は、道の端っこの方ね。」


そうた・ひな「なんで?」


文乃「真ん中は神様の通り道なんだよ。だから、神様の為に、開けておかなければならないのさ。」


そうた「あの真ん中歩いてる人達はー?いいの?」


...普通にカップルが、真ん中を歩いている。


文乃「......、あ、あの人達はたぶん神様だねー。神社に帰ってる途中なんだろうね〜。」

文乃と子供達は、手を合わせて拝んでいる。


寿喜「テキトーだなぁ...。こいつらまじで信じるぞ。」


文乃「あ、ほら、赤鳥居だよ!」


文乃が指を差す。

潮の満ちた海に浮かぶ巨大な赤鳥居は、堂々たる威容を湛え、見るものに畏敬の念を抱かせる。


一同「ふぇ〜〜〜。」


寿喜「まじなんかいいな、鳥居もだが、この参道も!海沿いの燈篭もなんかたまらん♪すげえよ!なんか、[神っ]って感じ?俺好きだなぁ、これ♪」


寿喜は興奮気味に話す。


文乃「昔から信仰が途絶えない所以よね。雅で、それでいて、人を迎え入れる懐の深さみたいなのを感じられるわね〜。知らんけど。」


参道を歩いていくと、境内に到達する。

参拝料を納めて境内へと入っていく。


寿喜「ぱねぇ。これ全部木かぁ。いいなこういうの。俺も作ろうかな。」


文乃「干潮時と満潮時で表情が全く変わるのよねー。私は今の、この水の神殿っぷりが好きだねー。」


寿喜「確かにな。俺干潮時は見とらんが、こっちの水がある方が良い気がするよな。特別感っつーか、やっぱ普通ありえん環境よね♪」


途中でお参りをしながら歩を進めてゆき、ちびっこ達の写真を撮り、おみくじを引き、お守りを賜り、気付けば出口となっていた。


寿喜「ありゃ、もう終わっちまったか。」


文乃「ここはね。でもまだまだこれからが裏道散策のスタートラインだよ。今度は鹿&神社仏閣巡りだね。」


寿喜「そういや至る所に鹿居んな。ふれあいまくってやんよ!」


さっそく道端に座っている鹿が居る。


ひな「鹿さん触ってよかと?」


文乃「あんまり触んない方が良いかもね、夏とかすごいことになってるし...」


文乃「観察するだけにしといた方が良いと思うよ。」


ひな「わかったー。鹿さんかわいー♡」


そうた「鹿って、強かと?」


文乃「うーん?強いと思うよ、私ならすぐやられちゃいそうかも。」


そうた「父さんなら?」


文乃「寿喜かぁ、勝てるかもしれないね。鹿のパワーが0.3寿喜パワーくらいだと仮定すると、三匹くらいなら倒せるかも♪」


寿喜「まーた適当なこと言ってやがる、なんだよその寿喜パワーって単位...」

寿喜は呆れ顔で呟く。


道中お寺で線香をあげる。

普段こういったお参り事をする機会のないちびっ子達は、興味深げに、作法を真似しながら続く。

その辿々しさを見やり、文乃は微笑ましく癒される。


お参りを済ませ、裏手を通ると海岸線沿いの、東口松並木道へと出る。一行は景色を眺めながらゆったりと歩いてゆく。


ひな「あ、かみさまー!」


前方に赤を基調とした小ぶりな神社が見えてくる。

一行はその神社へと、足を進める。


文乃「さあ、ご先祖様のおわす神社だよー。」


そうた・ひな「おー...!、.....?」


寿喜「清盛さんか?清盛神社って書いてあるな。」


文乃「うむ、ご先祖様に当たる方だからね、ご挨拶しましょうね〜。」


そうた・ひな「はーい」


寿喜「清盛さん、ほんまにご先祖さまなん?」


文乃「家紋がそうだからご先祖様なのは間違いないよー。まあ、血だけならとんでもない数の人が繋がってると思うよー、言ってしまえばみんなのご先祖さまだね、w」


寿喜「まぁそりゃそうだ。千年近くも前の人だからなあ。」


一行は清盛神社に参拝を済まし、エリアの奥まで足を運ぶ。


そうた・ひな「ブランコーーー!」


ちびっこ達は古びたブランコに乗って遊び、寿喜は、それを撮影する。

文乃はちびっこを撮影する寿喜をさらに撮影する。


文乃「だらしない顔してんなぁ♪まぁ、そうなるよね♪」


...

....


ひとしきり楽しんだ後、民家街の古民家や鹿を観察しながら歩き、気づけば大きな階段のあるお寺へと辿り着く。


寿喜「なんかおもしれー感じのお寺さんだな?何ここ?有名なん?」


文乃「知らん。前に一回、一人で来た事はあるんだけどねー。このガラガラを回しながら登り降りしたのは覚えてる。」


寿喜「お、回んのか。おらっ、おらっ」

一緒になって、子供達もガラガラガラガラと楽しそうに回す。


文乃「なんか、それ回すだけでお経読んだのと同じ効果があるらしいよ。摩尼車(まにぐるま)って言われてるみたい。」


寿喜「ふーん、じゃあもう俺ら6〜7回くらいは読んだことになんのか。」


文乃「設定上はそうなるね。」


寿喜「階段登りながら回していけば、終わり頃には悟りが開けてんのかねぇ。ガラガラ〜、ガラガラガラ〜」


文乃「あんたは俗物の際たる例でしょうから、多分開くことはないでしょうね、信心のない私も含めてね。ガラガラ〜、ガラガラ〜」


そうた・ひな「がらがら〜♪がらがら〜♪た〜のしい♪」


寿喜「俗物て....(・ω・`)」


一行は、お寺を見学しながら奥へと向かい、ひとしきり見学を楽しんだ。


文乃「どう?俗物の自分から解脱できた?」


寿喜「.....もうぽん酒と穴子丼のことしか頭にねーよ。」


文乃「俗い...。って言う私も同じこと考えてるわ。歩き回ってお腹すいたねー、宮島口に戻ったらアナゴ丼だねぇ♪」


一行はフェリー乗り場の前広場まで戻り、ソフトクリームを食べながら時間調整をしてフェリーへと乗り込んだ。


寿喜「歩き回って疲れたけど、一回じゃ周りきれてねー感じだよな?」


文乃「うん、全然だよ。水族館もあるし、弥山にも登ってないし、裏宮島ルート散策もあるし、また機会があったら来てみるといいよ。」


寿喜「また来れっかなぁ...、まぁいつかは来たいよなぁ。チビらが大きくなったら、また連れてきてーなぁ。」


....


そして本日最後の船旅を終える。

海風を感じながら今日の思い出を振り返り未来への期待に思いを巡らせた...。


...


そして....、アナゴ丼!!

そして、ビール!!

そしてっっ!!ポン酒!!


一行は名物穴子丼のお店でご馳走をいただいていた。


寿喜「くはぁ!生き返る!!」


文乃「くいっ、うふぁ〜〜♪これこそ生きている証!消耗の対価!!」


そうた・ひな「うま〜♪」


文乃「散策で乾いた喉を、まずはビールで癒し、アナゴ丼をを食べる♪そして日本酒を、くいっと♪....しかも、まだ午前中というこの背徳感♪」


文乃「....あはぁ〜〜♪これが...人生...♪」


寿喜「マジ美味いよな、穴子丼♪これポン酒の相性良いわ( ´∀`)」


宮島散策の締めを、アナゴ丼とお酒で締める。

まだまだ明るい時間帯だが、初日はこんなもんで良いだろう、むしろ圧倒的贅沢な時間の使い方とも言える。


一同は暖かな昼下がりの日差しに照らされつつ、帰りの電車に揺られ、穏やかな夢の中であった...。

明るい時間帯に飲むお酒は、

至高...っ!!

温泉もあれば、究極...っ!!

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