12. ❷ 私のプチ旅・中編・大自然の懐で...
お昼を済ませ、目的地へと向かう。
道中特に変わったこともなく、ただただ、ありふれたツーリングにおいての日常が続いていく。
山。木、そして木。それから....、木。
森に包まれ、人の痕跡は道路のみ。
景観はなく延々と続く自然の中をひたすら走り続ける。
流石に似たような景色の連続に、飽きやら眠気やら、若干の不安感やらがハローしてくる。
文乃「ん〜〜〜...、ちょっとぼんやりしてきたなぁ...、休憩しようかな。」
道中時折設置されている離合帯にバイクを留め、ヘルメットを脱ぎ背伸びをする。
文乃「んーーーー♪はー、目が覚める。ちょっと単調な感じが続いたからなぁ。今、最奥付近になるんだろうか?」
周囲を見回しても、森の中のただの離合帯。
目を引くものも気になるものも特になく、スマホの電波もほとんど拾えない。よって、ただただ体力気力を回復することに専念する。
文乃「時間的に到着まではまだ距離があるよなぁ。山真っ只中。なーんも見えてこない。」
文乃「そういえばG`sマップ見てた時、途中水ポイントあったよねぇ。後どれくらいで着くのかなぁ。あの時で30kmくらいはあったっけ?」
文乃はドライブインを出た時間と現時間を照らし合わせ、だいたいの距離を割り出してみる。
文乃「ふむ、案外すぐそこかも知れないねぇ...、ちょうど良いや。とりあえず、そこでしっかり休憩しようか。」
わずかに一息つけたところで、またバイクを走らせる。
木は茂り、道は一段と狭くなり、さながら木のトンネルのように、辺りを覆っている。
...
山の谷間に沿って続く細めのクネクネ道。
かっこつけて言えば、ワインディングロード?
車体が細く、曲がることを楽しめるバイクだからこそさほど苦にはならないが、車でここを通るとなると...苦痛しか無いだろう。ていうか車では来たくない。
文乃「ふああぁぁ....、、、!あーっ、いかんいかん!」
長いライディングは体力を奪い、精神を消耗させ、眠気も誘引してくる。文乃は迫ってくる眠気を蹴散らすように、右に左に少しオーバーリアクション気味にバイクを駆り、まだ見ぬこの先へ向かう。
文乃「崖下は川か...寝たら真っ逆さま〜....、、?おほっ?すっごいきれい!透明!!」
一瞬視界の開けた崖下には、驚くほどに美しい川が流れている。水の綺麗さにテンションが上がり、眠気も何処へやらの文乃は感嘆の声をあげながら進んで行き、そしてチェックポイントの水汲み場へと着く。
たっぷりの清冽な水が流れ落ちる。
お気に入りのプラマグカップに水を汲み、一気に飲みこむ。
文乃「ゴクッゴクッ....、ふーっ、冷たくって美味しい、もう一杯♪」
更に汲むと今度は、少しずつ、ゆっくりと味わって飲む。
文乃「くぴっ、くぴっ...、あー.....、おいしい♡なんかぁ、ミネラルゥって感じ?知らんけど。」
文乃はしっかりと水を飲み、ボトルにも汲む。
一息ついて頭もスッキリとした文乃は、先ほどの川を思い出し、谷側へと目を向ける。
川のある方には釣り人の為か、管理のためか?重厚な鉄の階段がかけてある。
文乃「あ、入渓点かな?川めっちゃ綺麗だったよね、見にいってみよ。」
特に立ち入り禁止などの標識は無かったので、文乃は階段を伝い、川へと降りて行く。
文乃「うん、綺麗!」
降りてゆくと木々が開けていき、視界に川の姿が映し出される。
大小の岩が自然に組み合わされ、絶景と言っても良い程の自然のオブジェを作り上げていた。
文乃は辺りを見回し川辺の手頃な岩に腰を掛ける。
文乃「んー!ここ、キャンプしたいなぁ〜♪」
清冽な水のせせらぎ、麓では聞けない鳥の美しい声、川に沿って流れてくる風。疲労を見せ始めた身体を優しく癒し包んでくれる...。
文乃はしばし、柔らかな季節と自然にその身を委ね、ひとときの安らぎを楽しむ...。
パシャッ!!
文乃は聞き覚えのある音に頭が覚醒する。
そう、この音は...、ライズだ...!
文乃「うっほ!もしかして、ヤマメ?イワナ?アマゴ?マスゥ〜!?」
文乃は釣りが好きだ。
昔職場のお得意さんから道具を一式をもらい、右も左も判らずに管理釣り場で釣りデビューした。
その後釣りをする友人が出来て以降、色々な種類の釣りに興味を持ち、覚えていった...。
文乃「あ、でもロッドないや...。残念〜」
などと、特に何も始まるわけでもないが、自然の中で自然ならではの他愛のない時間をしばし堪能し、バイクへと戻る。
....
文乃「んー♪、目も耳も幸せ時間だったぁ。どうもありがとうございます、ヤマツミの神様♪」
山の気をたっぷりとチャージした文乃は、バッチリ冴えた頭でこの先に思いを巡らせる。
文乃「もうしばらく走れば、いよいよ目的地のレトロ自販機だ。待ってろよー、ホットサンド!それから、まだ見ぬなんかワクワク達!」
文乃は、もうやがて辿り着くであろう新世界に向けて、はやる心を抑えつつまた、走り出した。
美しい自然、深い山奥の恵みが喉を潤し、目と心を洗い流す。
自然が元気と安らぎを与えてくれる。
そして、
文明の歴史と利器が暮らしを支え、好奇心と楽しみを与えてくれる。
どちらも大切で失ってはいけないもの。
調和を持って大切にしていきたい...。




