11. 姉ちゃんの強い味方、頼もしき弟よ。
弟から連絡が入った。
そして文乃に良い提案をしてくれる。
それは単調な日々を送っていた文乃にとってとても嬉しく、そして、助かる申し出だった。
〜〜〜♪〜〜♪♪
会社を退職し、しばらく経ったある日、文乃のスマホが鳴り響く。
文乃「はいは〜い、今行きますよ〜っと、えーと、あれ?寿喜じゃん。はい、シャッとぉ。」
文乃はスマホをとり、電話にでる。
電話は弟の寿喜からだった。
寿喜「おっすー。」
文乃「うん、おす。どしたん?」
寿喜「ああ、文乃こっちに帰って来る日って、もう日にちは決まっとるとかね?いつ引っ越すと?」
文乃「あ、うん、言うとらんかったかね?今は有給消化中やけぇ、片付けよる途中なんよ。6月いっぱいおったら、帰る予定。どがいした?」
寿喜「前からさ、うちの子ら連れてそっちに遊びに行こうか思っとったったい。ならまだまだ時間あっね。」
文乃「ほんま?ええよ、こっち来たら案内してあげるわ♪いつ来れそう?」
寿喜「おお、じゃあさ、文乃は引っ越しの時家具とかどうすっと?」
文乃「うーん?...とりま引っ越し屋さん頼まんといかんかなーって思うとるよ?」
寿喜「だったら俺ら行った時に家具持って帰ろうか?」
文乃「うん?どういうこと?」
寿喜「文乃の家具持って帰るついでに、子供ら連れて遊びに行こうかっておもっとったい、どう?」
文乃「?そらええけど、車は?結構荷物あるよ?」
寿喜「車は付き合いのある人からウィングの大型借りるけんよかよ、積み込みも俺が手伝うけんよかろ?」
文乃「ほんま?頼ってええん?」
寿喜「できりゃああんま金かけたくなかろ?その分もてなしてくれっとよかたい。」
文乃「ありがと〜、それ助かるよ〜♪あ、寿喜、おまえ 休みどがいするん?休まないけんようになろう?」
寿喜「そらどぎゃんでもなるけん気にせんでよかよ。じゃあ、引っ越し予定日の3日前からそっち行こうか?いい?」
文乃「うん、そら助かるし、楽しみも出来たよ〜。じゃあしっかり片付けてまっとるけえね♪島とか名所、いっぱい案内してあげる♪」
寿喜「おお、そらぁ楽しみにしとっけんね、広島行った事なかけんうちん子らも喜ぶと思うわ〜。」
文乃「おう!頼りにしとるけぇね、ひさき♪事故せんよう来なんよ。」
寿喜「ああ、わかっとるって。じゃあ、また近くなったら電話すっけんよろしくなー。」
文乃「うん、おつー♡」
プツンッ
文乃「そうか、寿喜来てくれるんやねぇ♪片付けとかないけんねぇ♪」
文乃は思わぬ来客に、一気に胸が満たされウキウキとした気分が溢れ出す。
文乃「うーん♪やっぱ、持つべきものはイケてる弟ですねー♪」
それにしてもなんと頼りになる弟なのだろう♪
的確なタイミングで、楽しみと助け舟を両方出してくれるとは。
文乃「さすがは会社社長!今度から社長って呼ばなんいけんかなw」
文乃は弟の嬉しい提案と連絡に、少し飽きつつあった片付け、整理作業にも力が入る。
人との繋がりが力を与えるとは、こういうことなのであろう。
文乃は整理、梱包を進めていく。
片付ければ片付ける程、一時的に散らかる。
その度にいらない服や、増えた余分な物をどんどん整理してゆく。
そうやって整理をつけたら、また綺麗な状態へともどっている。
これがくりかえされながら、少しずつ秩序立った形をなしてゆく。
文乃「...このお家とも、もうお別れの時が近づいてるんだなー。ほんの5年くらいの間だったけど、すごく助かったよ。快適な暮らしを与えてくれて。本当にありがとうね♪」
気持ちの落ち着いた今だからこそ、いろんな思い出が思い起こされ、脳裏を巡る。
あたたかい気持ちを抱きながら、文乃は感謝の意を示しつつ大黒柱に寄りかかり、優しく撫で、想いに耽る。
...大家さんにも改めてお礼を言いに行かなきゃ。
そろそろ近所の人達にも挨拶回りしておこう。
神社にもお参りと、ご挨拶に行かなきゃね...
この家への感謝と同時に、この地域で暖かく迎え入れてくれた人々に対する感謝の気持ちと、暖かな感情も同時に溢れ出してくる。
....浸っていたい暖かい感情を抱えながら、文乃は気持ちを切り替えて整理整頓へと向かう。
テキパキと家財道具を片付ける。
片付いた所から順々に、丁寧に掃除して綺麗にしてゆく。
あ、これはいらないね、これもいらない。
これはーーー...、もったいないけど捨てちゃお。
これはーー、うむ、メロカニかな。
身辺整理も心の洗濯も、ぼちぼちと着実にすすめながら日々を過ごしていく。
そんな文乃の、ほんのちょっとだけ違っていた、普通の1日....。
ちょっとしたきっかけ、ちょっとした想い、仲間のほんのちょっとした心遣い一つで、未来の道に明かりが灯る。
世界の見え方は心一つ。
文乃は久しぶりに、弟や、甥っ子姪っ子に会える楽しみに、世界に色が灯ったようにウキウキした気分を満喫していた。
単調で飽きる仕事も、心持ち一つで世界が変わる。
それだけで、人は自分の力以上に頑張れる。
当たり前すぎて見えていなかった、特に気にしてもいなかった家族の絆は、今や文乃の喜びそのものだった。




