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不妊に関する表現とそれにまつわるセンシティブな表現があります。
ご留意ください。
ここは、とある国の一角にあるシュテイラー領と呼ばれている地域。
そこの当主は妻をとても大切にしていると言われているルードルフ・シュテイラーが治めている土地だった。
愛し合う2人でしたが、なかなか子どもには恵まれませんでした。親戚からは第二夫人か新しい夫人を娶る方がいいのではとやんわり言われ始めてました。
今の夫人を大切にしているルードルフはもちろん聞く耳をもちません。
「だったら、養子を貰うまで。私の考えと合わないのなら他の領に移動すればいい」
親戚一同が集まるパーティーではっきりと宣言をした。
それからしばらくは外野からのささやきが落ち着いた。
夫妻は週末になると教会へお祈りに通っていました。
この国では地域によって守護している神が違うと言われている。
男神もいれば女神もいる。シュテイラー領は女神様がお守りになっていると言われている。
子どもが中々授からないアマリア夫人はルードルフにお願いしました。
「どうか私以外の方と縁を結びなおしてください」と
しかしルードルフはそれを拒否し二人でも幸せに生きていくことができると伝えました。
そんなある日、アマリアは体調の異変に気づきました。
侍女と相談した後、ルードルフ家専門の医者に見てもらうと
「おめでとうございます。お腹にお子がおられますよ。体を大切にして母子ともに健康に気を付けてください」
その言葉を最後まで聞く前にアマリアは涙を流し侍女に抱き着きました。
侍女はアマリアの背中にそっと手を置くと
「すぐに、ご当主様に連絡いたしましょう。そして、体が落ち着くまでは最低限の使用人にしか伝えるのを控えましょう」
そういうと、侍女が自ら家令に伝えに行った。
その侍女はアマリアが少女の時から傍にいてくれた信頼の置ける人だった。
そして、出産経験のあるその侍女はアマリアが出産したあかつきにはそのまま乳母として働いてもらうことにした。
しばらくすると、アマリアの体調が悪くなった。いわゆる「つわり」の症状が出始めた。
その状態を初めてみたルードルフはアマリアが天に召されてしまうと思い大慌てで医者を呼ぼうとしたが、その侍女にこの症状は誰しもなる可能性のあるものです。慌てずにアマリア様と相談しながら対応していきましょうとアドバイスされた。
「ああ、そうだな...。君がいて助かったよ」
ルードルフの言葉に侍女はありがとうございますと言ってから仕事に戻った。
体調も落ち着きアマリアのお腹も大きくなったころ
「ねぇ、あなたの一番上の子は女の子だったわよね?今は何歳なの?」
「はい、一番上はアマリア様の第一子が生まれるころには7才になっております。」
「お名前はなんていうの?」
「ライラと申します」
「ライラちゃんね。この子のお姉さんになってくれるかしらねぇ~」
アマリアはお腹を撫でながら侍女に聞いてみた。
「実はアマリア様のご懐妊が発表された頃からライラの様子が少し変になりまして」
侍女の言葉にアマリアは気になりお腹から侍女に視線を移す
「変って?何かあったの?」
「以前から下の子の面倒をよく見てくれてはいたのですが、復習するように練習をしているのです」
「練習?」
「はい。おむつや、ミルクの飲ませ方。そして絵本の読み聞かせです...。かね?」
侍女はアマリアに説明しながらその光景を思い出したのかフフフと笑い出した。
「確かに、今までもお手伝いはしてくれていたのですが、なんて言いますか、熱の入りようが全然違うんですよね」
「まあ、もしかして?」
アマリアがお腹をさすると
「フフフ、私が乳母のお役目を頂いたとは伝えましたがライラも乳母になるわけではないのですがね?」
アマリアと侍女は目を合わせると「フフフ」と声を揃えて笑った。
「おや?何か楽しい会話でもしていたのかな?」
そこへ、ルードルフが部屋に入ってきた。
アマリアは近づいてきたルードルフにチークキスをすると、侍女はすぐにドアの近くまで離れた。
「ええ、私達の子どもをアグネスの娘のライラちゃんもお世話しようとしてくれているみたいなのよ」
アマリアはクスクスと笑いながら説明した。
ドアの近くでアグネスが頭を下げている。
「うん。それはいい案かもしれないね。男の子でも女の子でも姉がいると私達には言えない事を相談できるかもしれないしね」
ルードルフも良い返事を出したので、折を見てライラも乳姉妹としてアグネスと一緒にお世話をすることになった。
それから数か月後、シュテイラー家に次期当主となる女の子の赤ちゃんが誕生した。
そしてその名を『エメリア・シュタイラー』と名づけた。
半年後、エメリアの誕生記念パーティーがささやかに行われていた頃
母親と一緒に本日の主役のエメリアが眠っている部屋で待機していたライラは
母親が少し席を外すのでエメリアお嬢様を見ていて欲しいと言われる。
「はい、お母さま。いってらっしゃい」
部屋にはぐっすり眠っているエメリア、そして赤子を熱心に見守るライラ
第三者がその状況を見ると、なんて愛情溢れる乳姉妹なんだろうと誉めるだろう。
『あ~、エレニ様、人族の赤子になろうともなんて尊い魂の輝きでしょう。ライラはこの世界で7年間もお待ちしておりました。早く、早く女神・エレニ様を思い出して頂きたいです。そして、その声で「ライラ」と命じてください。そうすれば、私は私は全てのものを薙ぎ払って差し上げます。』
しかし、自分の主人を目の当たりにしたライラは荒ぶる感情を抑えきれず思わず神語で語りかけ人の姿から本来の天使の姿に戻っていることも気づかなかった。
後に、エメリアをこっそり覗きに来た来客の証言によると
「私は見たんだ!月明りに照らされた後ろ姿の天使様がエメリア様にお声をかけている姿を!きっとエメリア様は女神様に祝福を受けて生まれたのに違いない!!!」
という事があったとかなかったとか。
ライラは時折まだ子ども(7歳)の精神に引っ張られるので感情的になると、元の姿(天使)に戻ります。
ただし、それはあくまでも自分の主に関すること限定ですが。
もちろん、後でエレニの母にお説教を頂いています。
最後までお読みいただきありがとうございました。




