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エメリアはデール少年との出会いが少し楽しかったのでこのまま会えなくなるのは寂しいなと思いながら奉仕活動の無い日は黙々と日々を過ごしていた。
「かといって、ライラ宛てに手紙が来るという事は緊急事態だから喜べないしな~」
エメリアの周囲はローザや婚約者以外はほぼ大人に囲まれていた為、デール少年とのコミュニケーションは意外と楽しかった。
「エメリアお嬢様、いかがなさいましたか?」
ライティングデスクで次の座学の用意を上の空で準備しているエメリアにライラが声をかけた。
「ん?デール君とお話しして楽しかったなって思い出していたの」
エメリアの言葉にライラが少し驚きながら
「エメリアお嬢様、お嬢様にはテオバルト様という婚約者が・・・。」
エメリアはライラの言葉を理解できず「ん?」と首を傾けながら聞き返した。
「あ~。そのですね。一応デールは男の子ですから。あまり気安く名を呼ばない方が良いと思いますよ」
「・・・。ライラはお友達の名前は呼ばないの?」
「・・・。オトモダチ・・・。」
ライラはエメリア一筋に生きてきた為、友人を持つという感覚が理解できなかった。
「ほら!キッチンメイドのナターシャとか!よく会話してるじゃない!」
ライラも不思議そうにエメリアを見つめたので、具体的に名前を出して確認してみた。
「ああ、ナターシャは、エメリア様の体調に合わせておやつをお出しするときに会話をしていますが、それがどうしましたか?」
「仲良さそうにみえるんだけど~」
エメリアは少し不貞腐れながら伝えてみる。
ライラは「はっ」と何かに気づくとエメリアに近づき、跪きながらエメリアの両手を握った。
「私の全てはエメリアお嬢様の為にあるのです。もし、お嬢様の気分を害してしまったのであれば、私は一生他の者と会話をしません」
そう言って自分の額をエメリアの両手に当てた。
「ですので、私をどうか見捨てないでください」
エメリアはちょっと、ほんの少しだけ拗ねたつもりだったのでライラの行動に焦った。
「ごめんなさい。そんな風に自分を思い詰めないでちょうだい。少しだけ、ほんの少しだけライラが羨ましかっただけだから!」
エメリアは優しくライラの額から手を離し、そのままギュッとライラを抱きしめた。
「私がつまらない焼きもちを焼いただけなの、他の誰とも話さないなんて言わないで」
本当にごめんなさい。と小さく付け加えた。ライラはエメリアの胸の中で小さく首を横に振った。どうやら納得してくれたようだった。
二人でしんみりしていると、エメリアの部屋のドアをノックする音が聞こえた。
ライラが慌てて、ドアの方に向かって取り次いだ後
「エメリアお嬢様、お母様がいらしています。このままご案内しますね」
といいながらドアを開けると、アマリアとその専属の侍女が部屋に入ってきた。
二人の雰囲気が少しおかしかったので、アマリアはエメリアにソファーに座る様に言った後、何があったのか尋ねた。
エメリアは、眉を下げながら先ほどの二人の会話を説明すると
「ライラ、ごめんなさいね。エメリアの事を考えて注意してくれたのに。そして、エメリア、あまりライラを困らせてはいけないわよ。彼女たちのお仕事はコミュニケーションがとても大切なの。同じ主を支えていくために連携していかなければいけないのですからね」
とアマリアのお小言が落ち着いたぐらいに、ライラ達がお茶を持ってきた。
アマリアはありがとうと一言添えた後、そのお茶を飲んだ。
「でも、エメリアの言うことも一理あるわね。あなたには年の近いお友達がいないわね。一番近くて、ローザさん・・・ですものね」
母親の言う通り一番年が近く親しいのは従妹のローザだった。しかし、ローザも何かと忙しいらしく以前のように頻繁に邸を訪ねてくることはなかった。
そのことを母親に伝えると
「ええ・・・。そうね。ローザさんも何かと忙しいのかもしれないわね」
と言葉を濁された。
「さてと、今日私がエメリアのお部屋を訪ねたのは、あなた主催のお茶会を催す事になったからなのよ」
母親の突然の提案にエメリアは驚いた。
「私主催のお茶会ですか?」
「そう、奉仕活動も始まった事だしもう少しあなたの交友関係も広げてはどうかとお父様と話し合った結果よ。ちょうど、貴方も友人がいないと悩んでいるからちょうど良いタイミングだったのかもしれないわね」
エメリアは領主の娘ということもあって交友関係は慎重に行おうと以前から夫婦で決めていた。しかし、それがエメリアに寂しい思いをさせていたとは母親は思ってもいなかった。
ライラは、エメリア様一筋です。エメリアが嫌だと言えばすべてを捨てる事ができる子です。
最後までお読みいただきありがとうございました。




