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引き続き続き続き、ローザの母イーリス回です。
連投しています19、20から読んでください。
その姿をイーリスとイザークがポカンと見ていると
「あっ・・・しまった。私は、マクナメン子爵の前でイーリス嬢を口説こうとしてしまいました。焦ってはいけないとあれほど兄に釘をさされていたのに・・・。」
イザークは口元を隠しながら本音をボロボロと零していた。
イーリスはルードルフの弟と言っていたので警戒しながら対応をしようと考えていたが、イメージよりもかなりおっとり(うっかり?)としている様子についついアマリアを思い出してしまった。
「ふっ。ふふふ」
そんなイザークの姿を見たイーリスは思わず噴き出してしまった。
淑女がそのような行動をするのは宜しくないのでイーリスも慌てて扇子で口元を隠した。
「うっうん。失礼しました」
「いえいえ、おしとやかなイーリス嬢も素敵ですが、普段のイーリス嬢もとても好ましくおもっているのですよ」
イザークの言葉にイーリスは首を傾げながら質問した。
「イザーク様とはどこかでお会いしましたか?」
イーリスのその言葉にイザークは嬉しそうに答えた。
「はい、イーリス嬢のおかげで無事に課題を提出することができたのです。ほら、木に登ってプリントを取ってくれたでしょ?覚えてませんか?」
「・・・あの時の学園の先輩だったのですね・・・。」
「はい、あの時はイーリス嬢は心ここにあらずの状況だったみたいで私の声かけにあまり反応してくださらなくて。でも、私はそんな貴方に恋に落ちてしましました」
イザークはそう言うと立ち上がりイーリスの近くに行くと片膝を立てて跪いた。
「私は、シュテイラー家の者ですからイーリス嬢の事も調べました。そして、あなたが兄に恋心を持っていたことも知っています。でも、私はそんなあなたに心を奪われてしまいました。私は、シュテイラーとあなたのどちらかを選べと言われればあなたを選びます。シュテイラーには兄がいる。シュテイラー子爵は兄の子どもが継げばいいのですから。そしてイーリス嬢と私でマクナメン領を支えていきましょう。どうか、この手を取ってください」
イザークは一気に言い終えるとそっと、右手を差し出した。
「どうか、私のこの手を取って頂けないでしょうか?」
イーリスは、イザークが想像以上に自分たちの事を考えてくれていた事に感謝し彼の手に自分の左手をそっとのせた。
「イザーク様、ありがとうございます。イーリス・マクナメンはあなた様と共に歩んでいきたいです」
その言葉を聞いた途端に、イザークは立ち上がりイーリスを抱きしめた。
「キャッ」イーリスは思わず声を上げたがイザークはお構いなしに抱きしめ続けた。
「誰よりも、貴方を大切にします。兄のことなんて忘れさせます。絶対に」
耳元で宣言された言葉にイーリスは思わず恥ずかしくなり真っ赤になりながらも何度も小さく頷くしかできなかった。
その後、二人の婚約・結婚は順調に進み、ルードルフとアマリアが盛大な結婚式を挙げた後小さいけれどとても温かな結婚式をあげることができた。
イーリスとイザークはとても幸せな日々を過ごしていた。
ルードルフに対して片思いをし、恋に敗れて泣いていた事をイザークはすぐに忘れさせてくれた。
二人の幸せな生活はそのままイーリスの体調の変化を呼んだ。
「おめでとうございます。ご懐妊でございます」
シュテイラー領主専属の医者にそう告げられるとイーリスとイザークは手を取り喜びあった。
もちろん、兄のルードルフとアマリアも心から祝福をしてくれたが、アマリアの表情は以前よりも曇っていた。
イーリスは初めての事もありそんなアマリアの表情の変化を読み取ることができなかった。
ルードルフ夫妻とも良好な関係だったが、イーリスが妊娠してから微妙な関係になりつつあった。その一部としては、領主は第一子が継ぐという決まりがあるからだった。
このままだと、ルードルフの次の代はイザークとイーリスの子になるのでは、という噂がシュテイラー領に少しずつ響くようになった。
そして、イーリスが無事に元気な女の子を産むとそのささやきが一気に暴発するようにシュテイラー領を駆け巡った。
それまでは、あまり興味を示さなかったイザークの両親シュテイラー領主もイザークとイーリスと子どものローザをよく邸に呼ぶようになった。
イザークとイーリスは始めのうちは戸惑いながらも通っていったが、長男夫婦のおめでたい話が中々聞こえなくなるにつれ二人を優遇するような対応をするようになった。
ルードルフ達は会えばいつも通りの対応をしているが、イーリス達は少し気まずかった。
そんな中ローザが一歳になった時にシュテイラー領主の夫人が病に倒れた。
夫人は最後にローザに会いたいと願ったので、イザークとイーリスは慌てて最後の面会に向かった。
主治医には今日が山場ですと伝えられると、緊張しながら夫人が眠っている寝室に入った。
そこには、シュテイラー領主とルードルフ夫妻が待機していた。
シュテイラー夫人の傍に、イザーク、イーリス、ローザが近づくと朦朧としていた夫人が意識を覚醒した。
「おばあちゃま?」まだ言葉が拙いローザが夫人を呼ぶと夫人は微笑みながらローザの小さな手をとった。
「ローザ、この領を頼みましたよ。イーリスさんも頼みましたよ」
夫人はローザと一緒にイーリスの手もそっと握りながら囁いた。
「はい・・・。お義母さま」
イーリスは少し迷った挙句そう答えた。安心してもらうことが一番大切だと思ったからだった。
その言葉を聞いた夫人は嬉しそうな表情をしながら一つ頷くとそのまま再び目を瞑ってしまった。
夫人を見送ったシュテイラー領主はそのまま引退することにし、家督をルードルフに譲った。その後、ルードルフ夫妻の長女エメリアが誕生した。
イザークはエメリアの誕生に内心ほっとした。
自分達の娘が取られてしまうかもしれないと考えていたからだ。
自分の母親を看取る時にイーリスに伝えた言葉は兄の長女が生まれた時に消滅しているはずその事をイーリスとゆっくり話し合わなければいけないなと思いつつも自分が管理している領地も中々忙しく、ローザも含めイーリスに頼りきっているところはあった。
だから、イザークは気が付くのが遅かったのだ。
イーリスが、心無い第三者にそそのかされていることを
イーリスが、その強い責任感に押しつぶされながら亡き義母の希望を叶えようと必死になっていることを・・・。
ふぅ~。やっと終わった。
次回からエメリアに戻ります。
最後までお読みいただきありがとうございました。




