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引き続きローザの母イーリス回です。
失恋をしたイーリスはしばらく体調不良と言うことで授業を休んだ。
多分アマリアとルードルフが二人でいるところを見てしまうとアマリアに対して微笑むことができなくなると思ったからだった。
「はぁ~。あれだけ貴族令嬢の嗜みを学んだとしても実際には役に立たないものね」
イーリスは自分の心の幼稚さに苛立ちを感じた。
「でも、このまま休み続けることもできないし。明日からは通う事にしよう」
イーリスはベッドの中で決断した。
翌日、両親に授業を休んだことを謝罪し今日から復学することを伝えると安心した表情になりながら「無理はしないように」と言われた。
馬車の中で心を落ち着かせながら車窓を見ていると段々と目的地に近づいてきた。
イーリスは両手を胸に置くと
「大丈夫、私はいつものお転婆なイーリスよ。アマリアと一緒に楽しい一日を過ごすのよ!」
馬車から降りると深呼吸をしてから教室に向けて歩き出した。
教室に向かう前に通り過ぎる食堂兼カフェテラスにアマリアとルードルフは座っていた。
二人で登校しているのだろうか。
イーリスはジクジクと傷む心を抑えるようにそんな二人から視線を外して再び教室に向かった。
教室には既に何人かのクラスメートが自分の席に座っていた。
皆イーリスの事を心配する声かけをしてくれた。
「心配をおかけしてすみませんわ」と声をかけてくれたクラスメイトに返事をしていると
「イーリス!」
ルードルフと別れたアマリアがイーリスの所に駆け寄ってきた。
「おはよう。アマリア。朝からとても元気ね」イーリスは微笑みながらアマリアに話しかける。
「イーリスの体調が悪いって聞いて、何度かマクナメン家に連絡をしたのだけどおばさまからは『イーリスが元気になったらまた会いに来てちょうだい』と返信がきたから」
アマリアの言葉を聞きながら、家ではなぜ自分が無断欠席したのか把握されていたことを知った。そして、イーリスの傷心を守るためにアマリアとの距離を置いてくれた事に心の中で感謝した。
「ごめんなさいね。もう私は元気よ。またいつも通り、二人で楽しく学園生活を過ごしましょ」
「ええ!そうね。学園での時間はあっという間に過ぎると言われているものね」
とアマリアも嬉しそうに答えた。
しかし、現実はそう甘くはなかった。学園生活での謳歌はルードルフも同じだったらしくいつでもアマリアの近くにいようとした。
「シュテイラー様、今日はイーリスとランチの約束をしているのですが・・・」
「アマリア、僕の事はルードルフと呼んでっていつも言ってるでしょ」
ルードルフはそっとアマリアの手を握りながら懇願する。
「・・・ルードルフ様」
「僕も一緒にお昼を取ることはできないかな?心やさしいマクナメン嬢なら許してくれると思うんだ」
以前のイーリスには見せたことのない困った表情でお願いされるとイーリスも断る事ができなかった。
「あっ、私は教授に課題の提出について確認しなければいけなかったの。今回は二人でランチを楽しんでください。アマリア、ごめんね」
イーリスはアマリアに謝罪をした後、ルードルフにお辞儀をして食堂から出ていった。
「待って!イーリス!!」
アマリアの声が聞こえたがイーリスはそのまま走り去った。
この状況はルードルフが学園を卒業するまで続いた。
仲の良かった二人の間にはいつの間にか距離ができてしまった。
ルードルフが卒業した後は、再び二人で行動できると喜んでいたアマリアだったが次年度からは学科選択制の授業が多い事から結局アマリアの甘い希望は打ち砕かれた。
アマリアは領主夫人になることが決まっていたので主に家政を中心に、イーリスは第一子の為マクナメン家を継ぐ領主の為の授業を取っていた。
イーリスの両親が治めているマクナメン子爵領はあまり恵まれた地域ではない為、イーリスなりに工夫し少しでも子爵領の人たちが楽になる為の糸口を探しながらの学びの場になった。
イーリス本人も、本来はアマリアとの時間を取りつつ領主の勉強もしていこうと考えていたのだが、ルードルフの事を考える余裕が無い方がアマリアにも優しく対応できる気がした。
あっあれ?終わらないよ・・・。次回もイーリス回です。
最後までお読みいただきありがとうございました。




