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見習い女神、ただ今職場体験実施中  作者: 鈴木 澪人


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 エメリアとライラは帰宅予定時刻を大幅に超えていたのでデール達に別れを告げて戻ることにした。


「じゃあ、私たちは戻りますね。もし困ったことがあればお父様に連絡してもらうのが一番なんだけど・・・。」


エメリアは父親にリックの事を説明しようと思っているが、領主が一領民の為に手助けをすることはあまり良くないなと思い考え込んだ。

すると、ライラがエメリアの耳元で


「お嬢様、少し宜しいでしょうか?」と話をする許可を求めてきたので「どうぞ」と答えるとライラが一枚の羽ペンを差し出した。


「エメリアお嬢様に直接御用がある時はこの羽ペンにインクを付け手紙を書きなさい。すると私の手元に届くようになっています」


と説明しながらリックにそのペンを渡した。


「こっこれは高価な魔道具ですか?」


リックは慎重に受け取りながら聞くと


「はい、そうです。ただし、とても貴重なものなので大切に扱ってくださいね」


と注意を促した。


「ありがとうございます!なるべく使わねぇ~ようにするよ」


と診療机の引き出しにしまい込んだ。

「そんなこと言わずに気軽にお手紙を書いてください。大変な状況になってからでは間に合わない可能性もでてきますからね!」


エメリアは少し厳しくリックに言った。


「デールも、お父さんが危険な事を隠そうとしていたら代わりにお手紙を書いてね」


「うん!俺、まだ字が上手く書けないけど絶対手紙を送るよ!」


リックは手を握りしめながらエメリアに伝えた。その表情をみたエメリアはうんと頷きながらライラに帰ると伝えた。



 帰りの馬車の中、エメリアはライラを見ながら


「ねぇ、あの羽ペンすっごく綺麗だったね。」


「はい。」


「私も商人が屋敷にきて色々な羽ペンを見たことがあるけど、あのような美しい羽ペンは見たことがないわ」


「・・・はい。」


「魔道具の割には魔石とか・・・使ってなかったわよね?」


「一体()()()を使ったペンなの?」


エメリアは溜息を付きながらライラを見上げた。

ライラは少し視線をずらすと



「あの羽が一番効率よく私に届くのですよ」


「痛くないの?まさか自分の翼の一部を与えるなんて」


デール達の診療所を出て馬車まで移動する時に、ライラの背中を確認したが服から血がにじみ出ている様子はなかった。怪我はしていないと思っているエメリアだった。


「まあ、抜け毛のような物ですね。でも、確かに本来は人に分け与えるものではありません」


 ライラの説明によると、時々天使は羽が抜け普段はまとめて保管しているらしい。今回の羽ペンはエメリアの10歳の誕生日に渡そうとひそかに自分の力(祝福)を込めていたらしい。本来は数年の時間をかけて作っていくものでそれでも失敗する危険性も兼ねて何枚か同時進行で作っていたらしい。


 ライラの説明を受けてエメリアは自分の為にいつも愛情をこめてくれる事に心から感謝した。本人に直接言うと泣いてしまいそうなので、せめてお誕生日にもらった時に改めて感謝の言葉を伝えようと思った。


エメリアはそんな事をつらつらと考えていると


「私は、エメリア様の為にこの世界に降りてきました。傍でお守りしたいと主様に立候補したぐらいです。ですから・・・」


ライラは少し言葉を濁したが


「今日、あの者たちが一生懸命困っている者たちを癒している姿を見ていると何か力になってやりたいという思いがあふれ出てきました。」


少し照れくさそうに微笑んだ。


「私もやはりエメリア様が愛しているこの領地を愛おしく思っているんだなと知ることができました。ですから、今の私ができることをしたまでです」


その時のライラの表情はエメリアの侍女ではなく、この世界を愛する天使の一人の顔だった。


 エメリア達が屋敷に戻ると両親と家令が顔を引きつらせながら迎えてくれた。

もちろん、しっかりお説教をされた。


エメリアは少し落ち込みながら自室で明日の座学の予習をしていたが、ライラは責任者としてもう少し両親たちに注意を受けるようにと言われた。




 ライラは、ルードルフ(エメリアの父)の執務室に入ると、ルードルフと家令が仕事をしながら待っていた。


「ライラ、そこに座りなさい」と指示されたのでソファーに座った。


ルードルフは家令にお茶の準備をするように伝えると、ライラの正面に座った。


「で、エメリアの奉仕活動はどうだった?」

ルードルフは優しい表情でライラに質問した。


実は、エメリアには注意を受けるという建前でルードルフに今日の奉仕活動の報告をするために呼び出されていたのだった。


ライラは今日の出来事の全てをルードルフに正確に伝えた。


「ジョン・ソーンか・・・」


ルードルフもその名前に覚えがあるらしく表情を曇らせた。

「はい、エメリアお嬢様は一人の領民の為に領主様にこの出来事を伝えて動いてもらうのは得策ではないと判断されました。ですが、彼の行動を見逃す気はなく何かあればすぐに報告するようにと言っておりました。」


ルードルフはエメリアの判断に満足したようでニコニコと笑いながら頷いていた。


「まだ、8歳なのに領民を公平に扱うとは将来大物になりそうだな」


嬉しそうに話していた。

ライラは心の中で大物になるんじゃなくて既に大物(女神)なんですけどねっと言っていた。


「分かった、私がソーンのエリアを直接介入することは当分辞めておこう。ただし、きちんと監視はさせるからそこは安心しなさい。エメリアには私の方から緊急時は家令に伝え、護衛を引き連れることを条件にそこに向かう事を許可しておこう」


「ありがとうございます。」


「ライラも女の子なんだから無理をしてはいけないよ?」


アグネス(ライラの母)からライラは念のために護身術も学んでいると聞いているが彼女もまだまだ幼いので無理はしないで欲しいとルードルフは願った。



最後までお読みいただきありがとうございました。

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