⑦:自然界における情報利用
⑦:自然界における情報利用
『隠蔽法』『宣伝』
隠蔽とは情報を欺瞞することから始まる。
自然界ではこの欺瞞行為を擬態と呼ぶ。
情報を隠蔽し宣伝するという行為に対して、昆虫の擬態は通じるものがある。
隠蔽は宣伝の表裏である。
当たり前だが、いくらカモフラージュした所でそれが周囲の空間から消え去るわけではない。
行為 目的
「宣伝(周知)」→「隠蔽」:自身の存在を周囲から隠す
「周知」:存在を知らしめる
情報を秘匿できるのは、それがなんら変哲のないものであるという
情報を「周囲に発信しているから」であり、敵の認識から外れるからである。
擬態による隠蔽行為そのものが敵に対する宣伝である。
両者は進んで情報発信する点において実質的に同じものである。
「隠蔽」とは情報を隠すのではない「変質」である。
地味な奴は地味な格好をしているから地味なのである。
陸上自衛隊の迷彩服2型は、北海道の主要埴生である熊笹と赤土土壌がある森の中でこそ
隠蔽効果を発揮するものであり、
イラクの砂漠や冬山で着ると周囲の配色に溶け込めないため目立つ。
そのためここでは『隠蔽法』『宣伝』を一つに纏めている。
『隠蔽法』『宣伝』にあえて擬態を選んで説明したのは、
昆虫の「擬態」についての研究は盛んであり、
その分類はあいまいな情報用語や軍事用語とは違い、はっきりと体系化されているからである。
なので此処では擬態を例にし、欺瞞行為と宣伝方法について説明する。
擬態の目的は「隠蔽」「宣伝」の二種として明確に大別されている。
またこのことから「宣伝」は「周知」であり、
「隠蔽」は「宣伝」の下位にあると推測できる。
「変質」、『認識』意図的な変質
【情報を秘匿できるのは、それがなんら変哲のないものであるという
情報を「周囲に発信しているから」であり、敵の認識から外れるからである。】
と隠蔽行為について書いた、これは目立つものを隠すという行為であり、
このプロセス上では実態と観測者の間ではズレが生じる。このズレを「変質」とする。
それ 観測者
「実態」→「何か」→「事実」
「実態」→「変質」→「事実」
「変質」は隠蔽行為以外でも常に起こる可能性があるので注意して欲しい。
「情報」は主として外からの情報を「認識」を通して処理するものである。
だが「情報」は内としての「認識」を変えることすらある。
「認識」を変えられれば、当然自己の得る「情報」も改ざんされる。
「白鳥」→「眼」→「白と認識」=「白鳥は白い」
「白鳥」→「眼」→「色眼鏡」→「黒と認識」=「白鳥は黒い」
「直接改竄」「間接改竄」
こうした他者による内側からの改竄行為は
政治工作、トロイの木馬、バックドア、NetBus、改ざん、クロスサイトスクリプティング、
洗脳、ウォードライビング、ウォーダイヤリングなど
ヒトやモノによって様々な名前で呼ばれている。
認識への介入で行動の優先順位や好みそのものを変えてしまう行為は、自然界であまりない。
強いていうなら寄生虫や妊娠などが入るだろうか。
蟻の脳に寄生して操るメタセルカリアやカマキリに寄生するハリガネムシが当てはまる。
他者による内側からの改竄行為、他者による外からの情報を間に挟んだ改竄行為といちいち書くのは面倒である。
以下からはこれらの行為を「直接改竄」「間接改竄」と呼称する。
それ 観測者
「実態」→「変質」→「事実」 「間接改竄」
「実態」→「実態」→「変質」 「直接改竄」
「隠蔽」
* 隠蔽擬態:防御目的
* 攻撃擬態:攻撃目的
「宣伝」=「周知」
誘引:
* 繁殖のための擬態
警告:
* ミューラー型擬態:毒を持っていると警戒色を周囲に示す
* ベイツ型擬態:毒を持っているふり、ミューラ型擬態の真似
擬態の種類
擬態をするものはモデル(オリジナル)の行動を真似る傾向にある他、
視覚だけでなく嗅覚や聴覚を欺瞞する例がある。
視覚:ショウユバッタの外見
嗅覚:サムライアリが他種女王アリのフェロモンを体に塗りつける行為
聴覚:物真似芸人コロッケの声真似
行動:カッコウドリの卵段階での選別(取替えっ子)による親鳥への刷り込み行為
擬態は感覚の数だけあり、多様である。
擬態の限界
擬態の種類や方法は多様であるが、それでも欺瞞には限界がある。
「①ベイツ擬態のように、無害な動物が有害な生物をモデルとした擬態の場合、
捕食者がモデルを攻撃したときのいやな記憶を長く保っていなければ効果がない。
もしもハチに刺された動物が、すぐにハチのことを忘れてしまえば、
次に(ハチに擬態した)カミキリを見つけたときにも、ためらわずに捕食するだろう。
また、ハチの模様と刺された痛みを関連づけて覚えていなければ、
次にカミキリを見つけたときにも、やはりためらわずに捕食するだろう。
したがって、脳神経系と視覚などの感覚器がある程度発達した捕食者に対してしか効果はない。
②また、捕食者があらかじめモデルの発する信号の意味を理解していなければ
(これは遺伝的なものと学習によるものとがあるだろう)、
擬態者の「偽の」信号の意味も知らないことになり、効果がない。
③もしモデルより擬態者のほうがあまりに多ければ、
捕食者は、危険なモデルよりも無害な擬態者に遭遇する頻度が高くなり、
擬態者の発する信号は機能しない。
黄色と黒のカミキリがハチよりもはるかにたくさんいるのであれば、
捕食者は、「黄色と黒は食べられる」と理解するだろう。
黄色と黒のカミキリがハチと同数ならば、「黄色と黒は危険だが、捕食を試みる価値はある」と理解するだろう。
したがって、擬態者は、モデルよりあまり多数になるような繁殖はできない可能性がある。」
Wikipedea、擬態の項目から本文抜粋
ようはたとえそれが警告(情報)でも
①見ても忘れていたら意味がない
②そもそも警告であると知らない
③失敗より成功確立が高ければやるだろ、統計的に考えて
と言う意味である。
③については多少疑問がある、
たとえ黒のカミキリがハチの数を上回っていても襲いかからない可能性があるからである。
そしてその可能性は大きいと考える。
世には虎の威をかる狐や、政治家の名をかる企業、ボスの名をかるチンピラ、
PTAの名をかる生徒などが沢山居るからである。彼ら擬態者の数はモデルより明らかに多い。
①②の単純明快さに比べて③はどうもしっくりこない。
再考の必要があるかもしれない。
「宣伝(周知)」
擬態を例に挙げて、欺瞞について説明してきたが「宣伝」、
つまるところ「周知」についても分析する。
擬態では「情報の変質」を挙げた、
重要なので二度書くが、まかり間違っても
「隠蔽」とは情報を隠すのではない「変質」である。
『①見ても忘れていたら意味がない②そもそも警告であると知らない』
『宣伝の下位に「周知」「隠蔽」がある』
この二つの概念が出来ることで「宣伝」と「周知」「隠蔽」の間に「情報を送る」
という行為が発生することになる。
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「宣伝(周知)」→「情報を送る」→「隠蔽」:自身の存在を周囲から隠す
「周知」:存在を知らしめる
情報を贈りつけるやり方には三種類ある、
すなわち「贈らない」「少しだけ贈る」「大量に贈る」
「贈らない」は口を閉じ黙ってその場から立ち去ればいい
「少しだけ贈る」のは必要な資料だけ相手に渡す
「大量に贈る」には喋り捲って資料を配ればいい
何を当たり前をと思うかもしれない、しかしこれは大切なのことである。
適切な相手に適当な情報量を与えなくては結果が見込めない、
受信者の処理量を超える「周知」は、受信者に対して「隠蔽」と同じ効力を発揮する。
情報処理能力である「認知」を量で突破することにより認識されなくなくなるためである。
ただ違うのは、上記の「隠蔽」は「変質」を加えたものであり、
「周知」目的のこれは「変質」を加えなくても良い点が異なる。
送信側を甲、受信側を乙としてそれぞれの特性を説明する。
「贈らない」:甲は乙と直接的間接的に接触を立たなければならない、これを成立させるのは非常に難しい
「少しだけ贈る」:甲は乙に接触し必要だと思われる適当な情報を送る、乙は情報を処理しきれる
「大量に贈る」:甲は乙に大量の情報を送りつける、乙は許容量を超えた情報を処理しきれない
甲が大量の情報を送り、乙の情報処理力を押しつぶす。
所謂コンピューターであるところの、スパム攻撃であり、メールボム、F5連打、Ddos、Dos攻撃である。
スパム
情報スパムが技術として使われ始めた歴史は浅い、
遡ってもせいぜいコンピューターが広まり始め、
クラッカーと呼ばれる存在が出てくるようになった1970年代からである。
新しい概念と思われがちだが、自然界にも情報スパムといえる行為が存在する。
「群れ」である。魚や兎といった小型動物は集団を形成することによって、希釈効果を得て
捕食者から単一目標に対する狙いを逸らす。これも広義の意味でのスパム攻撃といえるだろう。
ようは相手の対応力を突破するだけの量を用意すればいいのであり、この概念は情報分野以外でも
飽和攻撃、FireSale、統合作戦などと言葉を変えて使われている。