表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で俺はスライム、嫁はネコ ~転生しても妊活します~  作者: 明桜ちけ
第一部 転生して初めての子を産む話
6/42

第六話 妻との再会

本日三話目の更新です!

 しばらく休憩すると、スズネは自分から歩き出した。

 元気になってくれてよかった。


「ミュ? ミュアアアア!?」


 崩れた岩の坂道を登ると、大きく開けた空間――広間に出た。

 天井は岩肌そのままので洞窟の中だけど、床は石畳だし壁や柱のような人工物も配置されている。もうこれは、完全に部屋だね。

 そして一番目につくのが、大きな祭壇みたいな装飾だ。ここは、地下に作られた教会や神殿のような施設なんだろう。

 とても荘厳で、神秘的な場所だ。


「ミュ? ミュア!」


 部屋の様子に見とれていると、スズネが呼びかけてきた。何かに気づいたのか、前足で祭壇の方を指し示している。

 よくよく見ると、黒い物体が盛り上がってるな。あれはなんだろう?

 俺たちはその物体の方へ向かった。


「ミッ…………」


 その物体が何であるか悟ったのか、スズネが瞬時にピタッと俺に張り付く。

 それは――おそらく女性のこと切れた姿だった。

 うつ伏せになって倒れていて顔の様子はうかがえないが、見える手はすでに骨になっている。ここで亡くなってから、かなりの時間が経っているのだろう。

 誰にも見つけてもらえずに、ずっと一人でここにいるのか……。

 

「ミュア……ミュア……?」


 あまりにも不安そうな声でスズネが鳴くので、俺は触手で撫でて落ち着かせる。

 それにしても、この人は何者なんだろう?

 着ているドレスは時間が経ってボロボロになっているけど、装飾の宝石や金細工は煌めきを残している。きっと、高貴な身分の人なだろうな。

 あと気になるのが、身体やドレスから伸びている角や尻尾……それに翼も。この世界の人々は、こういった器官が付いているのか?


「ミュウ」


 やっと落ち着いたのか、スズネは俺から離れて亡骸の前へと進む。

 そしてゆったりと座ると、俺にも隣に来いと視線を送る。

 そうだな。見ず知らずの人だけど、ご冥福をお祈りしないとな。

 この世界のやり方を知らないから、異世界のやり方になって申し訳ないが……どうか安らかにお眠りください。


《スキル 黄泉送り を 習得しますか?》


 触手を二本伸ばして手を合わせる風にしてる俺に、天の声が響く。

 そういうスキルもあるのか。バトルに必要そうなものばかり見ていたから、全然気づかなかったよ。

 もちろん習得する。この人のために、祈りたい。


《スキル 黄泉送り を 習得しました》


 よし、早速スキルを使おう。


「ミュア〜ミュア〜」


 優しい鳴き声とともに、淡い光が女性とスズネを包む。スズネも、同じスキルを習得したのか?

 俺も横に並んで、一緒に祈らせてもらおう。なんて言えばいいか分からなけど……なむなむなむなむ……。


《スキル 黄泉送り を 発動》


 天の声と共に、俺の体も淡い光に包まれた。なんだか不思議な温かさが、体の内側に広がっていく。

 しばらくすると、女性の体が淡い光となって空間に溶け始めた。まるで魔素だまりの光のよう……。


「ミュア……?」


 女性の姿が薄れるのに合わせて、脳の中に不思議な映像が途切れ途切れに流れてくる。これは、この人の記憶なのか……?

 祭壇の前に、女性と男性が立っている。着ているドレスから見て、女性はこの人だろう。竜のような角や翼を持つ、とても美しい人だ。

 男性も竜のような角や翼を携えている。……それどころか、手や足もドラゴンのような鱗や爪をしているな。より竜に近い種族なんだろうか?

 二人はとても愛し合っているようだ。そして、この場所で何か――儀式のようなことを行おうとしている。

 

「ミュ……」


 しかしその儀式は、失敗してしまったのだろうか?

 ぐったりとしている女性を抱きしめて、泣き崩れる男性。やがて男性の体は変化していき、大きなドラゴンになってしまった。


「ミュア……」


 ここで映像の流れ込みが終わってしまう。

 現実に戻されて女性が倒れていた場所を見ると、強い魔素の光を放っている。これがこの世界の、最期の姿なのかな。

 俺とスズネはどちらともなく身を寄せ合い、その光を見つめる。


「ミュ……ミュア……」


 光は徐々に空間に溶けていった。悲しい最期だったんだな……どうか安らかに眠って下さい……。


「ミュ?」


 女性が倒れていた場所には、女性の姿もドレスも跡形もなく消えていた。その代わりに、一本の剣が落ちている。

 これは一体……?


《竜姫の剣 を 発見しました》


 竜姫の剣? あの女性、お姫様だったのか。

 これって、持って行ってもいいのかな? ああでも、俺たち剣が持てないじゃないか。

 試しに触手を伸ばしてみるも、うまく持ち上げられなくて落としてしまう。引きずるくらいは出来るけど、武器として扱うのは無理だな。


「ミュア!」


 剣の処遇についてあれこれ考えていると、スズネが視界に入り込んできた。何か言いたそうだな。


「ミュアミュアミュア!」


 ピンと猫立ちをしたかと思うと、スズネはみるみる大きくなっていく。いや、人の形に変化している……?

 顔立ちも猫から人間のように変化して、前足も五本指の手の形になった。猫耳やしっぽ、体毛も全身残っているが形はすっかり人間の子供だ。

 それに、すごく見覚えのある顔……。


「ュア……ぁ……ぅん……」


 あぁっ!! 寿々音の妹さんところの姪っ子ちゃんだ!!

 毛の色は白いけど、顔立ちや髪の質感がそっくり。

 いや、本当にそっくりだ! 間違いない!!

 そっくり!!

 そっくり……

 そ……そ……そ……………………


「ヒロ……ぁキ……」


 そっ!?

本日の更新はここまでです。

明日も二話更新する予定なので、どうぞよろしくお願いいたします!


■■■■


天の声

《竜姫の剣

ドラゴン の 娘 が 残した想い

変わり果てた 恋人 を 救い

家族 に 謝罪 を 伝えること を 望む》



■■■ブックマークと評価について■■■


● ブックマーク

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

続きの気になる方は、ぜひブックマーク登録をお願いいたします。


● 評価について

「面白かった!」「続きが気になる!」という方は、ぜひ応援をお願いいたします!

広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて評価応援いただけますと、幸いです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ