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異世界で俺はスライム、嫁はネコ ~転生しても妊活します~  作者: 明桜ちけ
第一部 転生して初めての子を産む話
17/42

第十七話 子どもと夫婦

 魔獣を倒してから、数日後。ようやく谷を超え、町に近い森に入った。

 ここから先は人間に遭遇することも多いからと、少しゆっくり話し合うことに。早めに野営の準備をして、夜に備える。


「町での滞在は最小限に留めて、なるべく早く立ち去った方がいいと思います。その間に先日の魔獣の素材を売って、それを資金に必要なものを買い揃えましょう」


 俺たちはプラムさんのアドバイスを受けながら、売るものを整理したり買い物リストを作ったりと忙しなかった。

 彼女と一緒に居られる間の、一度きりの滞在だからな。抜け漏れがないようにしないと。


「いつか、人の町に住めるのかな……」


 ぽつりと、スズネが呟く。

 確かに、安全に自由に町に出入りできるに越したことはない。俺たちの感覚だと、やはりいずれは人の町で暮らしたいと思うよな。

 

「お二方は近いうちに、可能になると思います。ただ――」


 何かを言いかけて、少し黙るプラムさん。パチパチと焚き火の弾ける音が耳に焼き付く。

 言い難いことなのだろうか?

 

「お子さんに関しては、なんとも言えません」

「えっ……」


 彼女の言葉に、スズネの顔が不安で曇る。

 子ども……確かに子どもが産まれた後では、状況が変わるか。


⦅何か、問題があるのか?⦆

「……現状でお二方が魔素を利用して出産すると、おそらくミューア種の子どもが産まれるでしょう。その子が言葉を理解し、亜人になるかどうか……」


 そうか、魔物で言葉を理解しているのは珍しいんだっけ。

 俺たちは人間から転生したから言葉を理解しているけど、子どもはそうとは限らない。考え方も生き方も進化も……俺たちと全然違う可能性もあるのか……。


「な、何か解決方法はないの?」


 不安そうに、スズネが質問する。

 プラムさんは俺とスズネを交互に見ながら、ゆっくりこたえはじめた。


「両親共に準亜人種以上の、亜人寄りに進化していれば……絶対とは言えませんが、ほぼ準亜人以上の子が産まれると言われています」

「なら、ヒロアキが進化してから妊娠すればいいのね!」

「ええ。ただ今度は……」


 また言葉が、止まる。

 産まれてくる子は準亜人種、ね。


⦅準亜人の子どもは高値で取引される、か⦆

「そう、なります」

「そんな……」


 狼狽えるスズネに、申し訳なさそうに俯くプラムさん。

 ここに居る誰が悪いというわけではないのに、居心地の悪い沈黙が広がる。不安からか、スズネが俺にぴとりとくっつく。

 少し震える声で話し始めたのは、プラムさんだった。


「人間の全てが悪ではありませんが、必ず悪意が混ざっています。人の町で暮らすということは、そういう存在と隣り合わせということです」


 静かで落ち着いているのに、怒りとも悲しみともとれる感情が言葉にのる。

 こうして魔物と旅をする彼女は、町での生活はあまり馴染めないものなのだろうか?


「今から心配しても、不安にさせるだけですね。生まれてみなければ、どんな子かわかりませんし」

⦅いや、話してくれてありがとう。これから俺たちがやることや……決めなきゃいけないことがハッキリしたよ⦆


 子どものためにも、俺たち自身が進化して強くならないと。それに産む場所や育てる場所も、ちゃんと考えて探さなきゃいけないんだ。

 そうしなければ、子どもを危険に晒すことになる。


「そういったことをふまえて、町を見てみるといいかもしれません。自分で見て感じたことが、自分にとっての真実ですから」

⦅わかった⦆

「うん……」


 緊張が解けたのか、プラムさんの顔がフッと綻ぶ。


「お二方は、本当に夫婦なんですね」

「そうだけど……」

⦅そんなにおかしいか?⦆

「だって――」


 今にも笑いだしそうな顔で、話し続ける。

 そういえば俺とスズネ、話を聞いてる間にびっちりくっついて座ってたな。まぁ、スズネが不安がってたからなんだけど。


「初めて会ったときは、擬態したミューアの子どもとスライムだったんですよ? お互いに仲間意識を持っていることさえ、信じられませんでした」

⦅あ……そういえば……⦆

「確かに、変かも……」


 これも異世界転生が起こした、奇跡みたいなものだからな。

 俺がただの魔物だったら、スズネが体内に入った時点で消化しちゃっただろう……そんな場面、実際に何回かあったし……。


「それがこんなに、お互いを信頼していて……協力したり、支えあったりしている……。夫婦や……家族って……こんな感じなのでしょうか」


 ひとしきり話終わると、フゥっと大きく息を吐き出す。ただ思ったことを話してるプラムさんって、珍しいかもしれない。

 それだけ、俺たち打ち解けたってことかな。


「変な話をしてしまいましたね」

⦅いや、そんなことないよ。な、スズネ⦆

「うん!」


 ニコニコしながら話し始めるスズネ。

 プラムさんの変化を、スズネも感じているのだろう。話の内容も、どんどん距離を詰めていく。


「だって私、プラムさんみたいな子が欲しい!」

「え、あ……」

「優しくて、可愛くて、気が利いて、頭も良くて、色々詳しくて――」

「そ、そんなことないですって……」

⦅いやいや、プラムさんはすごい人だよ。家族にいたら、安心する⦆

「や、やめてください……ソル……」

「バフゥ!!」


 待ってました! と、プラムさんの横に座るソル君。顔を真っ赤にしたプラムさんが、激しくソル君を撫でまわす。

 この日はかなり遅くまで、三人で他愛のない話をしていた。



 翌朝、俺たちは町へ向かって出発。その頭上を、いつもの大きな飛竜が飛び去っていく。

 なんだかその厳つい視線が、こちらを捉えていたように感じる……まさか、な。こんな小さな魔物を気にするなんて、ありえない。なれてきたけど、やはりドラゴンは畏敬の存在なんだ。

 そう思いながら、俺は町へと向かった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!


私事ですが、今日は酉の市に行ってきました。

焼き団子を買おうと思って屋台に近づいたら、味付けが醤油・田楽味噌・みたらし・こしあんの四種類。

全部好きでどれを買ったらいいか決められず、何も買わずに夫の元へ戻ってしまい笑われました。

最終的に、焼き団子はこしあんを買いました。美味しかったです。


■■■■


ヒロアキ

⦅そういえば、スズネは新しいスキルは覚えないのか?⦆


スズネ

「剣技や身体強化のパッシブ系は、かなり増えたよ」


ヒロアキ

⦅技っぽいのは覚えないのか?⦆


スズネ

「基本が強ければ、殴るだけで強いミュ!」


ヒロアキ

⦅強いミュ……⦆



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