第十三話 魔物使いと竜
翌日から、俺たちはプラムさんの薬草採集を手伝うようになった。
色々と教えてもらってるし、かなりお世話になってるからな。
「この薬草で合ってるミュ?」
「うん……ちゃんと合ってますよ。ありがとうございます、スズネさん」
「ミュ~!」
まずはスズネの服。実際は服ではなく、特殊な腕輪だ。
本来の姿の状態で腕輪をはめておくと、擬態と同時に服も装着されるというもの。そんな便利なものが、この世界にはあるんだなぁ。
それに行動範囲も広がった。プラムさんたちは魔物を避けて移動するのが上手いし、たまに遭遇しても危なげなく討伐してしまう。
おかげで、いろんな場所に行けて助かっている。
「そういえば、剣の持ち主の家族というのは、どこにいるかわかっているのですか?」
⦅いや、全然知らないんだ⦆
「持ち主は、ドラゴンみたいな角や尻尾のある女の人だったミュ」
「竜人ですか……」
⦅何か知っていますか?⦆
ドラゴンの亜人は、竜人っていうのか。ほとんどの魔物が、亜人になる可能性を持ってるんだな。
その竜人達に会いに行けば、何かわかるかもしれない。竜姫は高価そうなドレスを着てたし、竜人達にとっては有名な人かも。
薬草を摘みながら、少し困った顔でプラムさんは答える。
「存在してるらしい……という事ぐらいですね。実際に見た事はありませんし、どこに住んでいるのかもわかりません」
⦅そうなんですね……⦆
「すみません、勉強不足で……」
「そんなことないミュ! プラムは物知りさんミュ!」
ぴょんぴょん跳ねながら、スズネがフォローに入ってくれた。
新しい服が気に入ったのか、嬉しそうにクルクル踊っている。転生してから、前にも増して子供っぽくなったよなぁ。
「私のこと、擬態だってすぐ気づいたミュ。こんなすごい腕輪もくれたミュ。すごい人ミュ~」
その言葉に、プラムさんははにかむ。照れ隠しなのか、ソル君を引き寄せてモフモフボディを激しく撫でている。
「まぁ……魔物使いのはしくれとして、それくらいは、ね」
⦅プラムさん、魔物使いなんだ⦆
そうだろうとは思ってたけど、職業としてあるんだな。
⦅ソル君たちも魔物なの?⦆
「ええ、そうですよ」
⦅プラムさんは、みんなを亜人に進化させる?⦆
「うーん……」
なんて言ったらいいかな……と、プラムさんは考え込む。
あまり聞いてはいけない質問だったのかな?
「それを決めるのは、この子たち自身です。私はただ、この子たちとずっと一緒にいられれば良いなって思います」
「バフゥッ!」
プラムさんの言葉に、ソル君が嬉しそうに顔を合わせに行く。
なんというか……俺の中の、理想の魔物使いと魔物の関係って感じだな。
木漏れ日の中で、身を寄せ合う少女と犬型モンスター。なんて微笑ましい光景なんだ……!
少し離れた気の上で警戒してくれてる子達も、誇らしげな顔をしている。
「魔物使いってみんな、プラムさんみたいに優しいミュ?」
「そうでもない、かな。実際、魔物を売買するのも魔物使いですし」
「同じ魔物を操る力でも、使い方次第ですから」
⦅まぁ、それもそうか⦆
しばらく一緒にいるが、プラムさんの魔物たちは自分の意志で行動してるように見える。
魔物と戦うときも、最初に気づいた子が他に知らせて行動に移っていた。それに今みたいにのんびりしてるときは、俺やスズネにじゃれてくることもある。
「魔物を隷従させる技でも、魔物自身の意思が必要な進化は強制できません。ですが、言葉を使い考える魔物なら……脅したり、人質をとって交渉することもできてしまいます」
「ミュ……」
「あなた方が人間の町に行って、もし悪い人に捕まったら……そんな酷い目に遭うかもしれません」
⦅……そう、なんだな⦆
一番危険なのは人間、か。そう言われると、すこし複雑な気持ちになる。
でも彼女の警告は、俺たちを気づかってのことだ。ちゃんと受け止めて、これからの事を決めないとな。
「この辺りの薬草は十分に摘みました。もう少し先に、行ってみましょうか」
「行くミュ~!」
「バフバフゥッ!」
俺たちはプラムさんと一緒に、森の奥に進んだ。初めて行く範囲だな。
しばらく歩くと、大きな湖のほとりに辿り着く。湖面が太陽を反射して、キラキラと輝いている。
「ミュミュミュ~!!」
⦅すごい! こんな場所があったのか!⦆
そして頭上には、久しぶりの真っ青な空。ずっと洞窟の中や、深い森の中だったからな。
青空を見あげてるの、すごい開放感。太陽の光を浴びるのって、大事!
テンション上げて日差しを浴びていると、急に大きな影が落ちた。それは巨大なドラゴンが、頭上を飛んでいく姿。
⦅うあわわわっ!!⦆
慌てて後ろにジャンプすると、スズネとぶつかってしまった。スズネも、同じく後ずさったのか……。
こんな近くを飛んでいくなんて、そりゃビビるよな。
「あのドラゴンは、大丈夫ですよ。こちらが手を出さなければ、襲ってきません」
数年前からこの辺を巡回するようになったんですよね、と落ち着いて見上げている。
あっという間にドラゴンは遠ざかったが、その後ろ姿は未だに大きい。
⦅あんな大きなドラゴンに、ちょっかい出すやつなんているのかよ⦆
「……以前ある魔物使いが、捕獲しようと手を出しました。あっさり返り討ちにあい、大けがをして町に運ばれてましたね」
⦅うわぁ……⦆
「いるもんだミュ……」
「お金のためなら何でもするという人間は、一定数居ますから」
いくらお金のためだからって、俺だったらそんな危険なこと絶対しないよ。
あんな強そうなドラゴン、目を付けられないように気を付けよう!
ここまでお読みいただきありがとうございます。
明日も引き続き、一話更新となります。
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スズネ
「プラムさん、すっごく良い子ミュ!」
ヒロアキ
⦅だな!⦆
スズネ
「賢くて、気がきいて、優しくて……ずっと一緒にいてくれたら、いいのにミュ〜」
ヒロアキ
⦅ははは、でもワガママ言っちゃダメだよな⦆
スズネ
「はあぁ……亜人になれたら、一緒にいられるのかミュ……?」
ヒロアキ
⦅どうだろう。……きっと、もっと自由に生きる人だと思うよ⦆
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