6-4 ドラゴンと戦おう 4
二匹の翼の生えた竜が、大空で激突する。
赤い炎と青い炎。なにもかも破壊する力が絡み合い、真っ白な輝きとなって大空に花開く。遠く王都からも観察されたほどの閃光だった。
エヴェリーナは片手で顔を覆い、目を守った。
「あの赤いの、倒せるの!?」
ドラゴンが飛びながらに首を振る。
「分からん。タナカのやつ前よりも色がくすんでいるというか、赤銅色になっている」
「封印したときも真っ赤でした」
コリーが背にしがみつきながら言う。
「岩の中に閉じこめられて力が変化したのかもしれません」
「強くなってるの、弱くなってるの?」
エヴェリーナに返事をするかのように、タナカが火炎を放射する。フジタは降下してかわす。熱気が襲った。
「離れているのに熱い!」
「前より強くなったようだ」
ドラゴンのタナカが笑う。
「あのディロックとか言うやつが、魔術師に水晶を強化させていたからな。当人は魔炮銃を強くするつもりだったようだが、おかげで俺の力が上がった!」
「それでようやく俺と互角くらいだ」
「黙れ! 前と違うところを見せてやる!」
タナカは赤い炎を小刻みに吐いた。炎は無数に別れ、真向かいから雨のように襲いかかる。
フジタは片翼だけ羽ばたかせると、真横に曲がった。
「つまらない技だ」
「なめるなよ!」
かわしたはずの炎の群れが、フジタのあとを追った。
操られているかのように追跡する。上昇しようが降下しようが、追いかけており、近くまで来て爆発した。
「熱い熱い!」
エヴェリーナは叫んだ。これ以上近づいて爆発したら、髪も服も燃えてしまうだろう。
「オクトバーとコリー! 前に封印したときはどうやったのよ!?」
「コリーが魔術で攻撃を防いで、レザーラが弓で足止め。俺がその隙に全力で近寄って一撃与えた。それから封印した」
「同じことできる!?」
「俺たち飛んでるんだぞ」
「だからなによ」
「やってみるか」
「じゃあ行こう!」
エヴェリーナがフジタの首筋をばんばん叩いた。
フジタは尻尾を振って方向を変える。目的に気づいたタナカが、再び火炎の雨を降らせようとする。
襲いかかる誘導された炎。大きいのはフジタが身をひねって回避し、それでも来るものはコリーが魔術の盾をかざした。半透明のもので、かなり大きい範囲を防御することができる。
続けざまに爆発するが、盾のおかげで、あまり痛みも熱さもなかった。
「フジタは平気!?」
「俺はドラゴンだぞ! まだ耐えられる!」
フジタはタナカに接近していく。本来ならここで足止めだがレザーラはいない。その代わり、フジタの速力がある。
タナカが避けようとするが、一瞬早く到達した。
「てりゃー!」
裂帛の気合いと共に、オクトバーが剣を振る。タナカの羽の付け根を切り裂いた。人のような、真っ赤な血が噴き出す。
と思ったら止まった。傷も見る見るうちに塞がっていく。エヴェリーナは目を丸くした。
「再生した!?」
「ドラゴンだからな。俺もあんな感じだ」
フジタが言う。
「呑気なこと言ってないで、どうやったら止められるのよ!」
「だから封印するんだ」
「オクトバー! どうやって封印したの!?」
オクトバーが剣を構えたまま返事をする。
「あのときはコリーが封印する道具を持っていた」
「コリー、今はある?」
「ありません」
「どうすんのよ!」
コリーは魔術の盾をまた張り、炎の爆発から全員を守った。
「封印に必要なのは水晶なんです」
「あー、魔炮銃に使ってたあれ」
「特別なものなので、そうそうあるものでは」
「そんなの誰も持って……」
そこまで口にしてから、ポケットの中にあるものを思い出した。
急いで探る。手に固いものが当る。
取り出すと、透明な結晶体が炎が光っていた。
「それです!」
エヴェリーナより先にコリーが言った。
「封印に使えます! どこにあったんですか」
「ポケットの中」
「どういうことです!?」
「前に古くからのダンジョンを攻略したら見つけて……あとよあと!」
フジタに叫ぶ。
「なるべく近寄って!」
「近寄るだけでは難しいぞ」
「オクトバー、どうやるの!?」
「そいつを口の中に放り込むんだ。一個しかないだろ。一発勝負だ」
「上等じゃない。やるわよ!」
フジタがまた速力を上げた。
正面に回り込み、赤い炎を吐くのを見はからう。タナカが口を開けた。
エヴェリーナは投げようとした。が、それより早く炎が出現したのでフジタが方向を変えた。彼女は危ういところで投げるのを止めた。
「どうやんのよ!」
「だからまず俺が一撃加えたんだ」
オクトバーが言う。
「ただここ空だからなあ。怯ませたら落ちるかもしれない。あとを追ってもすぐ目覚めるかもしれないし」
「あーもう、どうしよ……」
エヴェリーナは嘆きながら前方を見た。
ひときわ壮大な建築物が見える。ハーネリア城だ。丘の上に建っていて、城下の町からはやや離れたところにある。
ひとつの方法を思いついた。
「フジタ、ハーネリア城のところまで飛んで!」
彼女の言葉に逆らわず、ドラゴンは身を翻した。




