6-2 ドラゴンと戦おう 2
グリフォンは文字通り全力飛行すると、鏖竜要塞に突っ込むようにして着陸した。
エヴェリーナたちは背中から転がり落ち、立ち上がりると同時に駆け出した。
「みんな集まって、集合集合!」
コボルドの一人が広間の隅に置きっぱなしになっていた銅鑼を鳴らす。各部の長を緊急召集する合図だ。
急いで駆けつけた人間、亜人たちを前に、エヴェリーナは言った。
「赤龍が復活したわ」
広間が少しだけざわつく。この音声はコリーによってカラベルの村にも届いていた。
「まあここにはドラゴンがいるから驚くようなことじゃないけど、火を吹きながらハーネリア城に向かっている。このままじゃ壊滅よ」
彼女は腕を振り回した。
「あななたちが人間にどんな感情を持っているかは分からない。でも商売相手がいなくなったら困るでしょう。せっかく作ったダンジョンが全部水の泡。だから助けるわよ!」
「どう、やる」
ドルルの質問に「考えがある」と答えた。
「ハーネリア城下の人たちを、避難させるわ」
これにはさすがに驚きの声が上がった。村とは違い城下町なのだから、かなりの人数がいる。どれだけ避難させられるのか見当もつかないのだ。
エヴェリーナは迷わない。コボルドのテラルに言う。
「カラベルの村で、避難民を受け入れられる?」
「ちゃんとした家は作れませんが、野宿でいいならどうとでも。回りになにもないですからね」
「テラルが指揮を執って。必要な資材や食料は、鏖竜要塞にあるのをいくらでも使っていいから。特に食べ物をちゃんと配布して」
テラルはうなずいた。
「ヘイラ、モンスターで荷物を運べるのはテラルに回して。空飛べるのは、避難誘導のための人員乗せて、帰りに動けないお年寄りや子供たちを背中に乗せて戻ってくるの」
今度はコリーの持つ通信用の水晶玉に言った。
「ハイニーレーン、聞いていた?」
「ええ。リュカはもう準備をはじめています」
「飛行モンスターを一度そっちで下ろすわ。ゴブリンやコボルドたちに避難誘導してもらうけど、住民驚かさないように人間になる魔術かけて」
「いいですけど、そのままでもきっと大丈夫ですよ」
「非常時で?」
「私は長生きしてるから知ってますけど、ここの人たちが驚くのは最初だけです。すぐに慣れます。リュカも冒険者の人たちもそうだったでしょう」
「信じるわ」
ヘイラにうなずく。彼女はすぐ庭へと戻っていった。
「あと、魔術が使えるのはゲキャが指揮官になって、火災を消して欲しいの。ドラゴンが燃やし回っているから、とにかく延焼させないことを第一に考えて欲しい」
「了解した」
「残りは街道からカラベルの村まで行って、受け入れの準備をして。さあ、やるわよ!」
亜人たちが一斉に散っていく。
エヴェリーナはカラベルの村に移動しようとしたオクトバーを捕まえた。
「あなたたちはちょっと待って。個別に指示するから」
「どうかした?」
「ホグレンは副ギルド長として、冒険者ギルドが混乱しないようにして欲しいの。テラルに助けが必要だったら協力してあげて。オクトバーとコリーは、私と一緒に来て」
ホグレンと別れると、三人は小走りに移動した。
たどり着いたのは、ドラゴンの居室であった。ドラゴンのフジタは、猫のように丸まっていた。
「……なんだか騒がしいな。寝られん」
「仕事よ」
「どんな。プラチナダンジョンができたら俺を最後のモンスターにするとか言ってたが、ちっともそうならないぞ」
「それ今度。赤龍が復活して、あちこち燃やして回っているのよ」
「なんだと」
突如、ドラゴンの瞳に生気が戻った。爛々と輝く。
「どこにいる」
「空の上」
「よし」
ドラゴンが翼を広げる。風が巻き起こり、三人は思わず身体を低くした。
「俺のやることは?」
「私たちと、あとレザーラを乗せて飛んで。あのドラゴンを止める」
オクトバーたちは赤龍を封印した経験がある。それに賭けたのだ。
フジタの瞳が動く。
「本気だな」
「もちろん。手伝ってくれるでしょう」
ドラゴンが笑う。
「むろんだ」
承知したドラゴンが吼える。天井が振動しひびが入る。そしてがらがらと崩れた。大音量にエヴェリーナたちは耳を塞ぎ、振ってくる土塊を慌てて避ける。
天井にはドラゴンでも悠々上昇できそうな大穴が開いていた。
「全員乗れ」
三人は鱗を足がかりにして背中に登った。
「エヴェリーナ、首の付け根より少し上に逆さになった鱗があるが、絶対に触るなよ」
「なんで」
「とても痛いんだ」
「どうしてそんなのあるのよ」
「逆鱗と言って、俺の世界の一部にそんな伝説が……まあいい。とにかくあるからいじるな」
「分かったから、早く飛んで」
「捕まっていろ」
ドラゴンが大きく羽ばたく。巨体が浮かび上がり、天井の穴から外に出た。
エヴェリーナ眩しさと寒さに身をすくめた。鏖竜山脈の上空に出ていた。ハーネリア城方面の地面からは煙が上がっている。その上には赤龍の姿。
「行くぞ」
フジタは一直線に飛んでいった。
不定期更新気味になるかもしれません。




