5-15 妹と対決しよう 4
先ほど気づいたのですが、「5-13 妹と対決しよう 2」を間違って古いバージョンでアップしてしまいました。新しいものに修正しましたので、よろしければもう一度ごらんください。
ディロックたちは右の道を進む。先頭の冒険者はランタンから松明に持ち替えた。それからゆっくりと左右に揺らした。
「なにをなさっているのかしら……?」
シルミナは首を傾げる。ディロックにも分からない。
突然、その冒険者が叫んだ。
「来るぞ!」
ウィンラートの名を持つ冒険者たちは、一斉に武器を構える。シルミナは驚愕した。
「ど、どうしたのです!?」
「この先で戸が開いた。モンスターが襲って来る!」
長女らしき女性が目線を外さず叫ぶ。松明の炎が不自然な揺れ方をしたことで、戸が開いて空気の流れが変わったと判断したのだ。
前方から、通路の横幅にいっぱいに埋め尽くした骨の兵隊がやって突っ込んでくる。武器と防具を身につけた戦う人骨、骨装兵だ。
ウィンラートの次男が長剣で骨装兵の攻撃を受け止める。その間に、後方の魔術師が火力で吹き飛ばす。瞬時に全滅したと思いきや、新たな骨装兵が出現した。
骨装兵は人骨に似ているが、腕が四本もあるのが特徴だ。並みの人間では、攻撃をかわすことすら難しい。
だがディロックの雇った冒険者たちは慣れており、慌てることなく処理していく。三兄妹だけ会って連携も完璧だ。通路に剣の音が鳴り響くが、悲鳴は聞こえなかった。
「僕もやるぞ!」
ディロックは魔炮銃に水晶を装填した。水平に構える。
前方の冒険者たちが慌てて伏せた。引き金が引かれ、魔力が弾丸となって放たれる。
弾丸は、縦に並ぶ骨装兵を四体まとめて貫いた。骨装兵はばらばらになる。石の床に崩れ落ちる前に、もう一発発射。
今度は五体も撃ち抜いた。これが最後の骨装兵であり、発射音のみが残響となっていた。
シルミナは音の大きさに耳を塞いでいたが、その威力に思わず拍手した。
「凄いですわ! さすがは私の夫です!」
「僕の武器はたいしたものだろう」
ディロックも胸を張っている。威力を目の当たりにしたのははじめてのようで、声が上ずっていた。
冒険者の一人は骨を蹴飛ばして道を開けながら言う。
「たいしたもんですが、攻撃する前にひとこと言って下さい。危なくてしょうがない」
「戦闘とは瞬時を争うものだ。君たちが察したまえ」
冒険者は呆れたのかなにも反論しなかった。
ディロックは度胸と傲慢さを取り戻した。彼は魔炮銃を握りしめ、いつでも撃てる素振りを見せながら先を進んだ。
◇ ◇
「なんか凄い威力ね」
シルミナが褒めたのと同じ頃、エヴェリーナも驚いていた。
「骨装兵がまとめてやられたわ。あれフジタが作ったのかしら」
「フジタ?」
コリーが首を傾げる。エヴェリーナは口を押さえた。
「あー……ま、まあいいじゃない。それよりあなたが作った、魔具を利用した罠はちゃんと動くのよね」
「私は一部提供で、ほとんどドルルさんが作ったようなものです」
「こんなの渡されたわ」
エヴェリーナの足元に石板があった。溝が何本も掘ってあり、そこに色分けされた石がはめ込まれている。石は左右に動いても、外れて落ちることはなかった。
「これ、あなたが考案したって聞いたけど」
「はい」
コリーは石板をエヴェリーナの膝の上に乗せる。
「重……」
「鏡を見てください。ちょうどパーティーが青色の石壁にさしかかりますよね。石板の青色の石を右にずらしてください」
言う通りにする。すると、鏡の中で真横から数本の槍が突き出てきた。
冒険者が急いでディロックとシルミナを引きずり倒す。別の冒険者が槍を根元から切断した。
「たいした仕掛けねえ」
「とっさに反応したあの人たちもたいしたものです」
「オクトバーの好敵手ね」
「だから知らないって」
オクトバーは渋い顔をした。
その後もエヴェリーナは石板を駆使し、隠し扉や落とし穴、炎を吐くガーゴイル像などを駆使する。だがウィンラート三兄妹がすぐに見抜き、ことごとく解除した。
「まあ、ここらは想定通りよ」
エヴェリーナは少し残念そうに言った。オクトバーが訊く。
「僕らがディロックと一緒にダンジョンに入ったときも、こんな仕掛け作ったのか?」
「作ったけど、こんな便利な遠隔石板はなかったわね。ゴーレムの群れは強力にしておいたから、戦い抜いたあなたたちの実力は本物」
「なんとなく安心した」
「こっちの罠とモンスターも、これからもっと強力になるわよ。プラチナ1にふさわしくね。ディロックたちはどうするか……」
冒険者の一人、ウィンラートの長男が弓を構える。突然、矢を通路天井の隅、つまり監視用の魔具へ向けた。
矢が放たれた。鏡に先端が大写しになり、消える。
今度のエヴェリーナは正真正銘驚倒した。
「なにあれ!?」
「魔具の場所が見抜かれたみたいです」
コリーも驚いている。鏡は自動で監視装置を切り替えるが、それらも矢によって次々に破壊されていった。
エヴェリーナはまだ驚愕が抜けない。なにも映さなくなった鏡を見つめた。
「……あたしドルルがちゃんと仕掛けたわよ……? 絶対見つからない自信があったのに」
「思ったよりずっと手強いですね」
「……プニチナ1のダンジョンにふさわしいモンスターを配備してるんだけど」
「攻略されたらどうします」
「それはいいの。元々ともしびの泉に火をつけたらディロックとシルミナの頭に文字がともりましたってのが目的なんだから。でも……」
彼女はいったん口をつぐんだ。
「どうも嫌な予感がする……」
振り返り、一緒になって観ているものたちに告げた。
「様子見に行ってくる」
「ええっ!」
驚いたのは、来たばかりのフィーリーだ。やっと観られると思ったら鏡がなにも映さなくなり、しかもエヴェリーナがダンジョンに行くと言い出したのだから当然だ。
「危ないですよ!」
「あたしが作ったのよ。様子見ないでどうするの」
「せめて誰が連れて行ってください! いや僕が行きます!」
フィーリー一人だけというわけにもいかないので、オクトバーとホグレンも同行することにした。
コリーは残って鏖竜要塞の管理者代理となる。エヴェリーナに小さい指輪を渡した。
「中指にはめてください。私といつでも話せる魔具です」
「便利ね」
「宝石部分に話しかければいいです」
プラチナ1のダンジョンまで移動するには、やはりグリフォンを使うしかない。一番早いグリフォンを選ぶと、エヴェリーナたちはさっそく飛び立った。




