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悪役令嬢は冒険者ギルドを作る【第一部完】  作者: サクラくだり
第五幕 悪役令嬢は妹を嵌める
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5-13 妹と対決しよう 2

 エヴェリーナは鏖竜要塞でモンスターを飼育しているメデューサ、ヘイラに会っていた。


「頼みがあるの。モンスターを貸して」

「いいよ。誰を食べさせる?」

「違うって。鳥みたいに空飛んで怪しまれなくて、頭のいいモンスターがいいんだけど」

「ブラウンバットってのがいるけど。コウモリなのに昼も飛ぶ」

「それ貸して。首からこれ提げて欲しいの」


 エヴェリーナはペンダントを渡した。銀でできており、台座には宝石の代わりに鏡がついている。


「これ、着けたものが見たものを、離れたところの映し出す魔具マジックアイテムなの」

「あー、上空から地上の監視をさせるのね」

「良く分かったわね」


 ヘイラが笑い、髪の毛がうねった。


「あのコリーって娘が作ったの?」

「なんでも作るのよ」

「ならあと二つ、全部で三つ必要だね」

「そんなに?」

「上空から監視するなら、ブラウンバットを三交代で一日中飛ばす必要があるから」

「なるほど!」


 エヴェリーナはさっそく同じものを二つ用意して届けた。

 ブラウンバットは空に放たれ、ハーネリア城は監視下に置かれた。こうしてディロックのパーティーは出発直後から察知されたのである。

 受信用の鏡は鏖竜要塞の広間に置かれた。ここで誰かが必ず見ており、妙な動きがあればエヴェリーナに知らされることになっていた。


「あれが君の婚約者?」


 隣で見ているオクトバーが言う。鏡には、馬上でパーティーの先頭に立つ男性の姿が、はっきり映っていた。

 エヴェリーナが嫌な顔をする。


「元だって」

「プラチナ1のダンジョンに向かってるって確信はあるんだろ」

「もちろん。そうしたから」


 プラチナ1のダンジョンはこのために作ったのである。名誉挽回を狙うディロックをおびき寄せるためだ。他の冒険者に攻略されないよう、内部は恐ろしく困難なものとなっている。プラチナ1の難易度は虚構でも何でもなかった。


「真ん中あたりに馬車があるでしょう」

「あの豪華なやつだな」

「シルミナの馬車なの。あんな金のかかるの、まだ維持していたのね」


 追放される前に、妹が自慢しているのをよく聞いた。エヴェリーナ自身はそもそも馬車を持っておらず、どこからか借りてくるか歩いて移動した。


「あの娘も来るようにしたのよ。ダンジョンにわざわざともしびの泉まで作って、噂を撒いたからね。伝説時代は昔からあるから、引っかかるはずよ」


 婚姻の伝承となると必ず人の口にのぼるのが、ともしびの泉だ。これも実は作り物で、ドラゴンが古王朝の箔づけのためでっち上げたのである。ただ作ったのが100年ほど前なので、ここまで年を経ると「伝説」というのも嘘ではない。


「燭台に男女で火をつけると繁栄と財宝が手に入るっていうけど、もちろんそんなことにはならないわ」

「どうなるんだ」

「魔術が発動して、ディロックのシルミナの頭の上に、ぴかぴか光る文字が浮かぶようになるの」

「なんだそりゃ。ずいぶん可愛いな」

「人の思考を読み取るって文字にするのよ。たとえば、シルミナが他の貴族令嬢のことを口先だけ『綺麗』と言っても、頭の上には『ブサイク』って出るわけ」

「本音が出るってわけか」

「そういうこと。もうあの子もディロックも心の内を隠せないわ。遠くからでも見えるから、目立ってしょうがないでしょうね。長い間消えないから、大人しくなるでしょう」

「なるほどなあ。それもコリーの考えた魔術か」

「ええ。古い本に載っていたんだって」

「性格のよくない魔術師が書いたみたいだな」


 エヴェリーナはオクトバーに言った。


「で、悪いんだけどプラチナ1までの道を掃除してもらえる?」

「ほうきとちりとりを使えって意味じゃないよな」

「ディロックとシルミナがダンジョンまで到達できるように、余計なモンスターを退治してもらいたいの。脅して追っ払えばいいわ。ヘイラに回収させるから」

「どうも管理者殿は人使いが荒いね」


 文句を言いながらも、オクトバーは出発していった。

 次にドルルを呼んだ。


「ダンジョン内の準備はいい?」

「全部、いい、用意、した」

「ヘイラのモンスター使わないでよ。万が一ディロックに倒されたら可哀想だから」

「鎧、骨、像、使っている」


 ドルルは生物ではなく、無機物のモンスターを配置していた。これらはヘイラの管轄ではなく、ドルルが流れ作業によって大量生産できるようにしていた。


「宝、入れた、泉、ある、鏡、見えない、ある」

「いいわね。じゃあ。ディロックたちがどうやるか、見物といきましょう」


 エヴェリーナは全員分のカップを並べると、手ずからお茶を注ぐ。悪役令嬢って他人の分までお茶を入れるものなのかしらと、彼女は思った。

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