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悪役令嬢は冒険者ギルドを作る【第一部完】  作者: サクラくだり
第一幕 侯爵令嬢はドラゴンに師事する
5/60

1-3 ダンジョンの作り方 1

 案内されたのは、先ほどの広間よりは狭い空間であった。ただ天井は同じくらい高く、扉もドラゴンが通れるくらい大きい。

 入った途端、エヴェリーナは目を細めた。

 部屋の大半を、煌めくような宝物が占めていた。金や銀。名前も知らないような剣に甲冑。王族の頭や首を飾る宝飾類。文字通り宝の山であった。


「すごーい!」

「だろう」


 ドラゴンは誇らしげだ。エヴェリーナは極端なほど顔を輝かせていた。


「これ使い放題なの!?」

「ちょっと違う。全部ダンジョン内に設置するものだ。あれが分かるか」


 宝物の中に、木製の箱がある。


「箱の中に収めて、ダンジョンの最深部に配置する。人間たちはあれ欲しさにダンジョンまでやって来るというわけだ。無論、噂も流すぞ。さきほどのオーガを見ただろう。彼らが焚き火を囲んでダンジョンと宝の話題を出す。立ち聞きした冒険者が酒場で噂を広めるというわけだ」

「なーるほど」


 エヴェリーナは感心した。ダンジョンに隠された宝物の話は、何度も聞いたことがある。こうやって作られていたのだ。


「じゃあさっそく、宝を置くことにして」

「そう急くな。手順がある」


 ドラゴンは隣室の扉を開け、彼女に入るよううながす。

 内部はやはり広い。しかも騒がしかった。木材や金属の塊が置かれ、工作用の台の上では、鎚や鋸が振るわれている。

 それらを扱っているのは、背の低い亜人たちであった。


「わっ、コボルド」

「オーガと同じく雇っている。手先が器用だから、こうやってダンジョン内の仕掛けを作らせているのだ」

「ただ働き?」

「もちろん賃金は払う」


 一人のコボルドがこちらに気づくと、首を傾げ、ドラゴンを見た。

 ドラゴンはエヴェリーナに理解できない発音で、なにごとか告げる。コボルドは納得し、小さく頭を下げた。


「あの男がこの部屋の長だ。お前のことを説明しておいた」

「じゃあ私のために仕掛けをこさえてくれるのね。罠も作り放題。うふふ」


 質の良くない笑みを浮かべるエヴェリーナ。ドラゴンが不安そうな顔をする。


「一応作法というものがあるぞ」

「別にいいじゃない。そういえば……」


 彼女は、不意に思い浮かんだことを質問した。


「どうしてこんなに宝とか素材を手に入れたの?」

「苦労した。まず集めるところから始めねばならんからな」

「そもそもなんで、こんなダンジョン作ってるのよ」

「それはな」


 ドラゴンは口を開いたが、すぐに閉じた。

 思案するように、紅玉ルビーの瞳を左右に動かす。


「……ま、いずれ話すこともあろう」

「なによ」

「とりあえずダンジョンを作ってみるぞ」

「ここだってダンジョンよね」

「舞台裏だから人間に見せたりはしない。我々が迷わないように案内もある」


 よく見ると、壁に地図が貼ってあった。これがあれば外に出るのも簡単そうだ。

 コボルドが話の切れ目を見はからい、ひとつのスコップを持って来る。エヴェリーナに渡した。


「ただのスコップじゃない」

「魔法のスコップだ。土や岩肌、人工物でなければ砂を掘るよりも易く穴を穿つことができる」

「え、自力で掘るの」

「使われなくなったダンジョンを再利用するやり方もあるが、いちから経験するべきだと思ってな」

「任せて」


 彼女はスコップを担いだ。


「ちょっと行って掘ってくる」

「慌てるな。ダンジョンの作法というものを……」

「作ってしまえばいいのよ!」


 ドラゴンが止めるのも聞かず、エヴェリーナは部屋を飛び出していった。

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