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悪役令嬢は冒険者ギルドを作る【第一部完】  作者: サクラくだり
第四幕 悪役令嬢は冒険者ギルドを経営する
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4-4 冒険者ギルドを宣伝しよう 2

 金鳩亭は古ぼけた外観だったが、横に大きい店だった。深夜にもかかわらず煌々と灯りが点き、人の出入りもある。客はほとんどが武器をぶら下げていて、冒険者なのが分かった。


「よし、宣伝に行くわよ!」


 意気揚々と入店しようとするエヴェリーナ。それをフィーリーが止めた。


「エヴェリーナ様、しばらく待ってください」

「なによ」

「さきほどの酒場がちょっと」

「エールがまずかった?」

「いえ、チラシを胡散臭げに眺めていたのが気にかかるのです。今まで存在も知らないものなのですから当然なのですが」

「だから知らせるために宣伝するのよ」

「今度のところは客が武装しています。チラシを疑った彼らが血気にはやったら……」


 つまり、荒事になったら大変だというわけである。外から見ただけでも客は十人以上いる。全員が武器を抜くと、一瞬で不利な立場になる。


「でも宣伝しなきゃ意味ないわよ」

「僕一人で行ってきます」

「もっと意味ない。私のような可憐な女の子が交渉した方が有利になるの」

「可憐……?」

「なにが言いたいのよ!」

「三人で行こう」


 こう言ったのはオクトバーである。彼は二人と違って落ち着いていた。


「話の分からないところじゃない。冒険者が安心するための店だから、穏やかだよ。入ってみればいい」


 オクトバーは返答を聞かず、先に立って入店した。

 酒場の内部はかなり広い。壁にはドラゴンやリヴァイアサンといった、大型モンスターの絵が描かれている。冒険者はパーティーごとにテーブルを囲んでおり、酒を飲んだり料理をつついていた。

 オクトバーはエヴェリーナをうながした。彼女はチラシを抱え、店主に話す。


「ねえ、ここに冒険者ギルドのチラシを貼らせてもらいたいんだけど」

「なんだいそれは」


 エヴェリーナが説明する。店主は返事をしない。代わりに、近くの冒険者たちに訊いた。


「なあ、誰か冒険者ギルドって知ってるか!?」


 冒険者たちは全員首を振った。


「そういうことだ。あいつらは命のやりとりが商売だから、知らないものを気軽に手を出したりしない。諦めるんだな」

「あえて加わってみようって人はいないの」

「無理を言うな」


 そこにオクトバーが口を挟んだ。


「店主、俺だよ」


 眠そうにしていた店主の目が見開かれた。


「……オクトバーか!?」

「久しぶりだな」

「生きていたのか!? リッティアの洞窟でくたばったって聞いたぞ!?」

「見ての通り五体満足だよ」

「じゃあコリーやレザーラも……?」

「みんな無事だ」

「ホグレンは!? とっつぁんはどうした!」

「死ぬわけないだろう。誰よりも長生きするよ」

「こいつは驚いた! おい、こいつはわしがいつも話していたオクトバーだ!」


 たちまち店内の冒険者たちが集まってきた。皆顔を紅潮させ、口々に自己紹介し、オクトバーの話を聞きたがった。

「あんたのパーティーは王都じゃ一、二を争うって聞いた」

「ミーノリ空中庭園の話を聞かせてくれ!」

赤竜レッドドラゴンを倒したって本当か!?」


 オクトバーは手を上げて制した。


「待ってくれ。今日は別の話があってきたんだ。冒険者ギルドのことだ」

 エヴェリーナをうながす。彼女はぽかんと眺めていたが、はっとした。


「そ、そうね、つまり冒険者のための互助組織よ。ギルドの長はこのオクトバー」


 彼の胸元を指し示す。


「あの鍵が見えるでしょう。最高の冒険者の証、プラチナ1よ。オクトバー、ホグレン、レザーラ。コリーがプラチナ冒険者としてギルドの理事をやってるの。偉大な冒険者が管理しているギルドなんだから、偉大なのよ!」


 いささか強引な口上だったが、冒険者たちは真剣に聞いていた。なによりオクトバーがいるというのが、保証となっていた。


「冒険者ギルドの本部はカラベルの村にあるわ。全部ここに書いてある。あげるから持っていって」


 皆、エヴェリーナの説明が終わる前に手を伸ばした。

 あっという間に全員がチラシを持っていく。フィーリーは店主の許可を取り、残りのうち半分を置かせてもらうことにした。


「すまないな」


 オクトバーが店主に詫びる。店主は皺だらけの顔を歪ませた。


「いいって。オクトバーの頼みだ。お嬢さんこそ、失礼な態度を取って悪かった」

「気にしてないわ。私だって突然言われたら警戒するもの」


 三人は金鳩亭を辞した。店主は「飲んでいけよ」と誘ったが、宿を探すからと断わった。

 外に出て、さっそくエヴェリーナが訊く。


「オクトバーって、ここらへんじゃ有名人だったの!?」

「自覚はないんだけどね」

「死んだと思われてたみたいだけど」

「大変なダンジョンだったから。コリーが引退したいって言い出した原因だよ」

「やっぱりあなたたちをプラチナにした私の眼力は間違ってなかったわね」


 自画自賛をする。大きく手を叩いた。


「さあ、じゃんじゃんチラシを撒くわよ!」

「宿を探したいんだけど」

「だったら宿を探して寝て、朝になったら撒くわよ!」


 こうして三人は、王都中で冒険者ギルドの宣伝をおこなった。

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