3-15 冒険者ギルドを作ろう 4
カラベルの村に空き家は多かったが、朽ちるに任されていたため、ほとんどが使い物にならなかった。石造りの家が一軒だけあったが、木造部だった屋根がない。
「この家に屋根をかけて、仮の住まいにしよう」
ホグレンがエヴェリーナに進言した。
「ギルドの本部と酒場はいちから作るしかない。ここは休憩と食事の場所にする。建て終わったらリュカたちの家にするのがいいんじゃないか」
リュカの母親は驚いていた。
「こんな立派なところに住むなんて……」
「どうせ主人が居ないんだから、使っちゃっていいのよ」
エヴェリーナはそう答えてから。
「ホグレンはこういうのって慣れていそうね」
「まあな。うちは代々建築技師だった。親父は大工を何人も使っていた」
「今は冒険者なの」
「人生ってのはおかしなもんだ。オクトバーは元密売人。レザーラは軍の先導役を務めるレンジャーだった。コリーは浮浪児で、魔術学校の窓の下に座って字と魔術を覚えた」
「へー」
「お前さんも本当は侯爵令嬢だろう」
「今は悪役令嬢よ」
確かに、あっという間の出来事だった。零落して食べるのにも困ってよさそうなだったが、偶然も重なってこのような立場にいる。エヴェリーナ自身も人生の不思議を感じてしまう。
「ギルドの本部をここにするんだから、カラベルの村も復興することになるわね」
「村の将来も含めて、設計できる人材が必要だぞ」
「ああ、それならドルルができるんじゃないかしら」
エヴェリーナは一度鏖竜要塞に戻った。
さっそくドルルに話を持っていく。コボルドの長は少し考えてから返事をした。
「他の、やつ、使う」
「ドルルの他にもこういうの得意な人いるの?」
ドルルは工作室の奥から一人のコボルドを呼んだ。
「テラル、とても、得意」
彼はテラルという名で、若そうな外見をしている。ドルルに訊くと、エヴェリーナより二歳だけ年上であった。
「私とあまり違わないのに、この手の仕事得意なんだ。なんか置いてかれる気がするわね」
「エヴェリーナさん、どうぞよろしく」
人間の言葉も巧みだった。エヴェリーナはますますたじろいだ。
「私も早くコボルドの言葉を覚えないと……。ええとね、実はこれこれこういうわけで、冒険者ギルドの本部と村の将来図が必要なのよ」
「それならあります」
エヴェリーナは驚いた。
「あるの!?」
「退屈だったとき、自分なら村や町をどう作るか考えていたんです。いくつもあるので、よさそうなのを手直しすればいいだけですよ」
「すぐ持ってきて!」
テラルは自室から村の計画図を取ってきた。
ドラゴンに教えてもらった方眼紙に書き込んであり、見やすく色分けまでされている。
「これがいいですね。中央広場の南側に兵舎があるのですが、冒険者ギルドの本部に変えればいいでしょう」
「最高。よくこんな細かいの作ったわね」
「いずれこういう仕事がしたかったんです」
「存分にやらせてあげるから、村までついてきて」
彼女はテラルだけではなくフィーリーも伴って、カラベルの村へ戻った。
時間節約のため、グリフォンを使って飛行する。リュカは突然飛んできたグリフォンに目を丸くしており、一緒に下りてきたテラルに驚愕していた。
「コ、コボルド……」
「心配しないでいいわ。ちょっと見かけが違うだけで、私より頭いいわよ」
テラルはリュカに挨拶し、少女はぎくしゃくと応えた。
エヴェリーナは全員を集めた。
「じゃあ村の再建と冒険者ギルドの建築をはじめるわよ。テラルが全体の指揮を執って、ホグレンが建築の監督をする」
「人手はどうする。材料は」
ホグレンの質問に、テラルが答えた。
「僕が仲間を呼んできます。材料はダンジョン建築用の資材がありますから流用しましょう」
「ここらは私たち以外誰もいないから、コボルドが大勢来ても平気だと思うけど、役人に見つからないよう見張りを立てないとね」
エヴェリーナがテラルのあとを引き取る。
「さっそくはじめて。フィーリーとリュカはこっちに」
二人を呼んだ。
「フィーリーは実際にギルドができたら、どうやって冒険者を管理するか練って、やり方をリュカに教えて。実際に受付するのはリュカの仕事だから。私は鏖竜要塞に帰る」
「ここで見ていかないんですか?」
「冒険者が攻略するためのダンジョンが必要でしょう。作らないと」
そう伝えると、エヴェリーナはグリフォンで鏖竜要塞に戻っていった。




