3-14 冒険者ギルドを作ろう 3
鏖竜要塞から出てファブの森に入り、街道を目指す。王国を貫く街道は大陸内において主要交易路のひとつであったが、西端はファブの森の中で終わっている。
ファブの森の切れ目にさびれた村が存在している。地図に載っていないがそれも当然で、街道からそれたところにあるものだから寄る人間がいない。かつては栄えていたのだが、王国内の動乱と盗賊団の襲撃、凶作などが重なり人がいなくなったのだ。そして今は王国の権威が届かないため、存在そのものが忘れられようとしている。
「前はたくさん人がいたっていうから、住みやすいところだと思うのよ」
エヴェリーナは冒険者たちに語った。
「使っていない家があったら、再利用してもいいし」
「街道から外れているのなら、そもそも人が来ないんじゃないか」
ホグレンがもっともなことを口にした。エヴェリーナは答える。
「それはそう。だから道も作らないと」
「勝手に作ったら、それこそ王国やクララホルト侯爵に目を付けられるだろうに」
「税を納めればいいのよ。どうせここらへんは王国もお義父様の力も届いていないんだから、お金払ってりゃ文句言ってこないわ」
「ギルドが大きくなったら目を付けられるぞ」
「そのときはそのとき」
一行は村に到着した。
古い記録によるとここはカラベルの村という。当然のことながら、村内は荒れ果て、かろうじて使えるらしい井戸の他は廃屋が並んでいた。
「住んでる人がいないか探そう」
エヴェリーナ自身が率先して人の気配がないか探った。
かなりの時間をかけたが、一家族しか見つからなかった。母親が一人、娘が二人の三人のみ。これがカラベルの村の全てであった。
闖入者に母親と娘は怯えており、「罪を犯すつもりはない」と伝えるのに骨が折れた。夜盗のたぐいに見つからないよう、息を潜めて暮らしていたようだ。
エヴェリーナは温かい飲み物を渡しながら言う。
「村長はどこかしら」
「ずっと前に亡くなっています。皆出ていきました。私たちは行くところもないので……」
「そっか。私たちはここに何件か家建てて冒険者ギルドやるつもりだから、許可が欲しいんだけど」
「自由にしてもらって構いません。私たちが暮らすところさえあれば」
「ははあ……。だったら働く気ある?」
不思議そうにしている母親に、エヴェリーナは続ける。
「人手が欲しいのよ。接客できる人が特に。ギルドはじめるとたくさん冒険者が来るはずだから」
「私は身体が弱くて、それに下の子を育てないとなりません。あまり自信が……」
「お母さん、だったらあたしが働く」
と言ったのは上の娘だった。
「働けば、お金もらえるんですよね」
「リュカ……」
と言ったのは母親。心配そうな顔をしていた。
リュカは母親に「大丈夫だから」と答えた。
「力仕事は難しいですけど、他はなんでもやります」
「遅くまで働いてもらうことになるけど? 冒険者がやって来るのに時間指定できないから」
「だったらご飯も食べさせてください」
リュカははっきりした声音だった。
「たくさん働きます。その代わりご飯も欲しいです。家でも私がご飯の用意をしてるんです。お母さんと妹にも食べさせたいです」
「交渉上手ねえ」
エヴェリーナは苦笑した。
「リュカが作ってくれるなら、朝食と夕食をつけましょう。お母さんと妹にも食べさせていいわよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ店作りと行きましょうか」
エヴェリーナはオクトバーたちにうなずいた。




