3-11 ダンジョンの現状
エヴェリーナはダンジョン管理のやり方を確認した。
まず地図を広げると、鏖竜山脈を中心にして扇状に広がるダンジョン全てに印を付けた。それからドラゴンのところへ向かう。
ドラゴンの住まいは、山の中腹をくりぬいた巨大な部屋だ。高い天井からは日光が差し込んでいる。エヴェリーナが要塞を管理をすることになったため毎日のんびりしており、今も広げた翼を床につけてくつろいでいた。
「ちょっと、起きて」
「寝てない。ぼんやりしていただけだ」
ドラゴンの目はとろんとしている。史上最強のモンスターと呼ばれる威厳はどこにもなく、ほとんどひなたぼっこをしているトカゲである。
エヴェリーナは地図を見せた。
「このダンジョンって管理してるの?」
「一応な。誰かが踏破したら印を付けて、定期的にオーガをやって宝の補充と罠の整備をしている」
「どこが簡単だとか難しいとかの管理は?」
「前にも説明したが、街道沿いは楽なダンジョンで、森林の奥や山奥は難しいダンジョンだけだ」
エヴェリーナは、ふんふん言いながらメモを取った。
「どこにどんな宝を置くかも、あなたの一存で決めてるのよね」
「ドルルたちにも意見は聞いている」
エヴェリーナはドラゴンの部屋を辞すると、ドルルたちの仕事場に向かう。
工作室では、相変らずコボルドたちが黙々と作業をおこなっていた。ドルルを見つけると、ドラゴンと同じ質問をした。
「宝、色々、置く」
「それってドルルの経験でやってる?」
「そう」
ドルルに礼を言い、今度は冒険者たちの元へ行った。
冒険者たちは武器の手入れをしている。さきほどお試しダンジョンにまた潜り、別の順路を試した直後だった。
エヴェリーナが話しかけようとしたら、オクトバーが先に喋った。
「ちょうどよかった。ダンジョンのことで提案がある」
「私も相談があるんだけど、先にどうぞ」
「ダンジョンに難易度をつけたらどうだろう」
オクトバーは磨いていた剣を柄に収めた。
「今のダンジョンってただ入り口があるだけで、どういうものか分からないだろ。ダンジョンってのはそういうものだけど、難易度をつければ、自分の実力と照らし合わせて入れるところと入れないところが分かると思うんだ」
「今のままだと、街道沿いが簡単っぽい、くらいしか分からないしね」
「そうそう。冒険者が無謀な挑戦をして、死ぬことも少なくなるだろう」
冒険者は一般的に金を持っておらず、財産は身の回りのものだけという場合が多い。それもあり、一攫千金を狙ってダンジョンに突入するのだ。当然、二度と出てこなくなることがある。
オクトバーは、そういうことをなるべくなくしたいと語っていた。かつての仲間たちが死んでいくのを見たからだという。
「難易度をつけても入るやつはいるだろうけど、そこまでは面倒見切れない」
聞いていたホグレンが口を挟む。
「だが冒険者が自分の実力を見極めていないと、無謀な挑戦は後を絶たんぞ。自分を客観的に評価できる者は多くない」
「そうなんだよねえ……」
腕を組むオクトバーに、エヴェリーナは言った。
「実は、あなたたちに相談したいのがそこだったのよ」
彼女は早口で説明した。
冒険者たちは侵入するダンジョンをなんとなく決める。オクトバーら熟練の冒険者は酒場などで情報を収集するが、確実なものではない。情報をきちんと管理して提供する組織が必要なのだ。
「で、冒険者ギルドを作ろうというわけ」
「そういや王国にはないなあ。商売人のギルドはあるんだよな」
「でしょう。それと、考えたことがあるの」
エヴェリーナは不敵に笑い、ひとさし指を立てた。




