3-9 ダンジョンを試作しよう 4
戻ってきたコリーを、エヴェリーナは自ら案内することにした。場所は研究所である。
コリーは研究所が外にあることに驚いた。そして中を見て、もう一度驚いていた。
「ここ……宝の山ですよ!?」
研究所の内部はコボルドが定期的に掃除しているため、大変綺麗だ。塵や雨染みなどはなく、換気も怠っていないため、空気が澱むこともない。
だがコリーが注目していたのはそんなことではなかった。内部に整然と収められている魔術書、魔具、各種薬品や素材などを見て、心の底から驚嘆していた。
エヴェリーナはむしろその反応に驚いた。
「そうなの。あたしにはよく分からないんだけど」
「王都の学問所にもこれだけのものはないはずです。どうしてここに素晴らしいものが……!?」
「あるんだから、あるのよね」
そうとしか答えられない。魔族云々は伏せておいた。
「コリーにはここで存分に研究して欲しいのよ」
目を輝かせて歩き回るコリーに告げた。
「自由に好きなだけ魔術研究していいけど、研究時間の半分くらいはダンジョンに役立つものに当てて」
「言われなくてもやります」
コリーは見るからに興奮していた。
「さっき部屋を借りましたけど、あそこじゃなくてここの二階にしてください」
「いいわよ。食事はどうする?」
「食べてる暇はありません!」
そうはいかないので、研究所まで運ばせることにした。
コリーはエヴェリーナに、力を込めて抱きついた。
「ここなら好きなだけ魔術の研究ができます。ありがとうございます!」
「そ、そう……。痛いから離して」
「感謝の言葉もありません! 本当です!」
「離してってば」
なんとかコリーから逃れる。
戻ってみると、冒険者たち三人はすでにダンジョン探索の用意を整えていた。コリーのことを離すと。全員が「やっぱり」という顔をした。
「魔術のことだとすぐああなるのね」
レザーラが呆れる。
「あの娘、お試し探索は無理ね。私たちだけでやろう」
「そうしよう。レザーラ、簡単な魔法ならできるだろう」
「ええ]
「俺たちがダンジョンに入って、全部の通路と罠を確認してくる。戻ってから具合を報告すればいいんだよな?」
オクトバーの言葉に、エヴェリーナは「それで十分」と返事をする。
冒険者たちは出発していった。お試し用で罠にも致命的なものはないが、油断すると怪我をする。彼らなら場数を踏んでいるから大丈夫だろう。
フィーリーがやって来る。
「エヴェリーナ様、さきほどオーガの一人から報告があったのですが」
「昼間っからオーガが外に出ると人間に目撃されない?」
「木の伐採に出たんだそうです。ともかく、クララホルトの城から街道を西に向かう兵を見たと言っています」
「兵士ねえ……。冒険者じゃないのよね」
「はい」
「こっちに来るのね。放っておいてもいいけど……」
エヴェリーナは腕を組んで考える。すぐに思いついた。
「フィーリー、要塞の中でモンスターがたくさんいるところ、知ってるでしょう」
「ええ、一応」
「そこに行ってきてもらえる。メデューサのヘイラに頼んで欲しいの」
「僕が一人で行くんですか……?」
はかばかしい返事ではない。猛獣のところへ飛び込めと言われたのだから、当然だろう。
「あんたが変なことしなきゃ平気よ。ヘイラにイービルアイってモンスターを借りてきて。それでね……」
エヴェリーナは、フィーリーにやって欲しいことを細かく指示した。




