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悪役令嬢は冒険者ギルドを作る【第一部完】  作者: サクラくだり
第三幕 悪役令嬢は冒険者ギルドをはじめる
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3-7 ダンジョンを試作しよう 3

 連れてこられた冒険者たちは四人。全員茫然としていた。

 どうも空を飛んだ経験がはじめてだったらしく、いまだに信じられないといった顔をしている。それはフイーリーも、実はグリフォンに乗るまでエヴェリーナも同じだった。


「というわけで、あなたたちはここで働いてもらいます」


 一通り説明した後、エヴェリーナが言った。


「内容はもっぱらダンジョンの試験攻略。どこに罠を置いたら効果的か、どこで休憩するのが体力的に正しいかを確認するように。給金は日払いで、休みの日は外に出るのも可。ただし鏖竜要塞の情報を持ち出すのは厳禁。住居は余ってるから無料で提供するし、食事もタダよ。なにか質問は?」


 一番背の高い剣士の男が、恐る恐る挙手をする。


「ええと……君はどなた?」

「名乗ってなかったっけ。エヴェリーナと呼んで」

「クララホルト侯爵家令嬢? 追放されたって噂聞いた」

「そう。だから貴族でもなんでもなくなった」

「ていうか、ダンジョンってこんな秘密があったんだ!?」

「実はそうなの」

「俺たちを雇いたいってことだよな」

「ええ。でも束縛したいわけじゃないの。根拠地をここにおいてくれればいい。あらかじめ言ってくれれば遠くのダンジョンを探索に行っていいし、他の依頼を受けてもいい。ここの秘密さえ守ればね」

 剣士の男はうなずいた。軽い仕草だったが、エヴェリーナは「この男は約束守るだろうな」と感じた。


「剣士のあなた、お名前は?」

「オクトバー」

「よろしくオクトバー。他の方も教えて」


 一番年かさの斧使いはホグレン、すらりとした女性の弓使いはレザーラ、背が低くマントを引きずっている薬師はコリーと名乗った。

 ホグレンが発言を求めた。皆から「とっつぁん」と呼ばれている男で、いかにも経験を積んでいそうな年期の入り方だった。


「試作したダンジョンにわしらを入れたいらしいが、死なない出られないんじゃないだろうな」

「罠もモンスターも、あえて弱くしてあるわよ」

「弱かろうと罠が仕掛けてあれば、普通は危険と考えるもんじゃ」

「だからあなたたちを雇うんじゃない。腕利きなんだから回避できるって信じてるわよ」


 エヴェリーナはホグレンの自尊心をくすぐった。

 今度はレザーラが訊く。


「パーティー組んで、ダンジョンの具合見て、あとはなにを?」

「さっきも言ったけど、自由にどうぞ」

「商売はじめていい? もともと私は店をやりたくて金貯めてるから」


 レザーラは冒険者らしく、実用性第一の簡素な恰好だが、はっとするくらいの美人だ。店頭に立てばさぞかし繁盛するだろうと思われた。

 エヴェリーナはうなずく。


「いいわよ。土地はどこにするの? 探そうか?」

「そこはじっくりやろうかなって」

「あのう……」


 最後のはコリーだ。グリフォンに驚いてなかったのが彼女である。マントのフードを目深にかぶっているから、表情がよく分からない。


「私は、できれば引退したいんですが」

「え、そうなの?」

「お試しのダンジョン入るくらいならいいんですが、本物はそろそろやめようって考えていたんです」

「なにするつもりだったの。あなたも店?」

「魔術書とか読んで過ごすつもりでした」


 コリーは薬師だが、魔術にも精通している。今までダンジョンを探索していたのも、魔術書を購入する資金のためであった。

 エヴェリーナはピンときた。


「それならいいのがあるわ! あなたにぴったりな仕事」

「なんでしょう」


 それにはまだ答えず、エヴェリーナはオークを呼んだ。


「あなたたちの部屋を用意させるから、彼についていって。コリーはあとで私のところに来てね」


 ごく当然のようにオークが来たものだから、四人の冒険者は仰天した。それでも即座に危険はないと判断したところは、さすが歴戦のものたちであった。

 冒険者たちがオークに連れられていったあと、彼女はフィーリーに言う。


「彼らへの報酬の算出はお願いね。平均額よりは上乗せしておいて」

「分かりました」

「あと」


 エヴェリーナは一呼吸おいた。


「シルミナはどうしてる?」


 血の繋がらない妹こそが、エヴェリーナを追放した黒幕である。ディロックとの婚姻が無効になったことは鏡を通して見ていたが、その後は知らない。

 シルミナと義父のことは、常に把握しなければならない。なのでつい先日まで城内にいたフィーリーに訊ねたのであった。


「しばらくは部屋で荒れていました。服を持って来るのが遅いと侍女を怒鳴り、食事がまずいと料理人に当たり散らしていました。僕が暇を出されるころには落ち着いていましたが、辞めた召使いもそれなりにいたはずです」

「お義父様は?」

「シルミナ様に新しい婿を見つけようと、貴族の間を訊ね回っています」

「お義父様らしいわね」


 でも軽く見られるだろうなと思った。クララホルト侯爵家の令嬢ともなれば、男の側から婚姻の申し出があるのが当り前だ。しばらく待っていれば良縁は舞い込むだろう。なのに自分たちから探すのは、焦ってますよと触れ回るようなものだ。

 シルミナもそんなことは分かっているはず。ディロックの失敗のこともあるのだから、荒れるのも当然だ。


「城にはまだあなたと仲良い人がいるでしょう。連絡取って、シルミナの情報を欠かさないようにしてくれる?」

「はい。でもエヴェリーナ様、そんなに気になるものなんですか?」

「まあねえ……。どうもあの娘、またあたしの邪魔してきそうな気がするのよねえ」

「なにかそんな気配でも」

「どっちかって言うと、あたしの勘」


 エヴェリーナに根拠があるわけではなかったが、多分外れてないだろうなと考えていた。

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