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追放剣士の剣戟無双【魔力0だけど強力スキルと剣術で無双する】  作者: SIGMA・The・REVENANT
第一部・第一章:魔力0の剣士
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その日の放課後

 あの後、俺はまたしても呼び出しをくらい説教を受ける羽目に……。


 しかし俺に〝本気でやれ〟と言った教師が自身の失言であったと認めた事でそう時間はかからずに解放された。


 そして指導室を出るとそこにはエレインが立っており、どうやら俺の事を待っていたようだ。



「なんか悪ぃな……待たせっちまったみてぇで」


「気にしなくていいよ。さっきの体育館でのアレの事について聞きたいだけだったから」



 あのぉエレインさん……何か怒ってます?



「まったくもぉ……いきなりあんな大技使うなんて誰も思わないでしょ」


「いやぁ本気でやれって言われたからよ」


「だとしてもせめて中級程度の技を使うでしょ!私だってローゼクロイツ流の初級技だったのに」



 〝なるほどその手があったか〟という顔をしたら白い目で見られた。


 エレインは大きくため息をつくと、話題をクラス分けの話へと変える。



「君は文句無くSクラス確定だろうね……私も自信あるけれど、でもまだ結果が出るまでは安心しないけれどね」


「そうか?俺から見ればお前さんもSクラスに入れると思うが」


「見てたの?」


「見てたよ。構えもしっかりしていたし、蹴り足への力の込め方も良かった。強いて言えばもう少し回転を加えれば的を貫くことが出来ただろうなって感じかな」



 そう解説するとエレインは驚いた表情をしていた。


 彼女のあの刺突は生半可な鍛錬では辿り着けないレベルだった。


 騎士団長になるという想いの本気さがよく分かるものだった。


 しかし、もう少し手首だけでなく腕全体の回転を加えれば更にその威力は向上するだろう。


 そうアドバイスを付け加えるとエレインは直ぐに顎に手を当てて俺のアドバイスについて考え始めた。


 こうして人のアドバイスを真摯に受け止めて次に繋げようとする姿勢も彼女の強さの理由の一つなのかもしれない。


 そして校舎を出た俺はそのままエレインと別れようとすると、彼女は疑問符を浮かべて俺に訊ねてきた。



「どこ行くの?」


「どこって……宿に戻るだけだけど」


「え?」


「ん?」



 俺とエレイン、互いに疑問の声を上げる。


 どうやら彼女は俺が宿に住んでいる事を不思議に思っているようだった。



「寮じゃないの?」


「寮って金かかるだろ?しかもかなりの。学費だけでも高ぇってのに、寮にまで入ったら更に金がかかるわ。だから宿の方が安いんだよ。別に寮に入るのは強制じゃねぇだろ?」


「確かにそうだけれど……でも、宿代を払うお金はあるの?」


「まぁ、こう見えて働いてるからなぁ」


「働いてる?」



 なおも疑問を抱くエレインに俺は首にかけていた金属製のタグを取り出してそれを見せる。



「これは?」


「討伐師に与えられる身分証のようなものだ。去年からここの学費を稼ぐために登録したんだよ」


「討伐師って……かなりの対魔物戦闘のスペシャリストじゃないか!しかもよく見たら白金(プラチナ)級だし!」


「あぁ、村を襲っていた竜種を倒したら昇級した」


「竜種を倒し………」



 あっ、エレインが固まってしまった。


 まぁ白金級討伐師は少ないらしいし、同級生がその存在だったって知ったら誰でも驚くか。



「いや、私が驚いてるのはそこじゃないから!」



 おっ、復活した。


 エレインは混乱する頭を抱えながらなおも俺に疑問をぶつけてくる。



「竜種を倒した?そ、それはもちろん何人かでだよ……ね?え?何その顔……もしかして、ま、まさか……」


「あの時は本来、群れからはぐれて暴れていた狩猟狼(ハントウルフ)の討伐だったからなぁ……そこに偶然、獄炎竜(インフェルノドラゴン)が来るとは思わなかった。俺一人だけだったけど、意外と斬撃一発で倒せたな」



 それを聞いたエレインはその場でへたり込んでしまった。


 言っとくが嘘ではないぞ?


 その時の村の人達が証人だし、証拠として獄炎竜の角もギルドに提出したからな。


 それで当時は銀級だったのが二階級特進で白金級になったんだし。


 などと軽く話してたら再びエレインが頭を抱え始めた。



「大丈夫か?」


「ちょっと何の変哲もない金属が実はオルハリコンだったぐらいの衝撃だよ」


「そこまでなのか?」


「逆になんでそう言えるのか疑問だよ」



 そしてブツブツと独り言を始めるエレイン……大丈夫そうで何よりだ。


 〝意気投合した友人がこんな化け物とか〟などと言ってはいるが……。


 おい、流石にそれは失礼じゃないか?


 暫く独り言を言っていた彼女は急に何か思いついたかと思うと、俺に向かってこんな事を言ってきた。



「ムメイ、私と連絡先を交換しよう!」


「は?なんだよいきなり」


「私、早朝は必ず自主練習をしてるんだよね。でも一人だけだとなかなか気づかないことが多くて……でも君と二人なら互いに気づく事があってアドバイスし合えるだろう?」


「なるほどそういう事か。けど、寮なのに大丈夫なのか?」


「寮長にちゃんと理由を言えば許可してくれるんだ。だからその為に連絡先を……って、あれ?」



 俺と連絡先を交換する為に通信結晶を取り出そうとしたエレインだったが、どうやらその通信結晶をどこかに落としたらしい。


 制服のポケットやらカバンを必死に探しているが見つからないようなので、多分落としたのだろうと推測する。


 ちなみに通信結晶は小型の板状で、お互いにその通信結晶を触れさせると連絡が取れるようになるという代物だ。



「ごめん……どうやら何処かに落としてきたみたい」


「一緒に探してやろうか?」


「いいよ、多分どこで落としたか予想できるから、そこを探してみるよ。だからムメイはここで待ってて」


「分かった。気長に待つわ」


「ありがとう。それじゃあ探しに行ってくるね!」



 手を振りながら校舎の中へと戻ってゆくエレイン。


 それを見送った俺は通路の脇に置かれたベンチへと寝っ転がって彼女を待つことにしたのだった。






 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼






 通信結晶を落としたことに気づいた私は、その場にムメイを残して校舎内へと戻ってきた。


 そして落とした可能性の高い場所をくまなく探し、そしてようやく中庭のベンチの下に転がっていた通信結晶を見つけて拾った。



「あった……良かった……」



 安堵していると背後に視線を感じ、振り返るとそこにはダルディーノ男爵子息であるオドバンがニヤニヤしながら私を見ていた。



「……何の用事かな?」


「おいおい無理して演技しなくてもいいんだぜぇ?もうテメェが女だって事は知ってんだからよぉ」



 下卑た笑みでそう話すオドバン。


 私は鋭い目付きで彼を睨みつける。



「ビックリしたぜぇ……なにせ医務室から体育館に向かう途中でテメェらが中庭で話しているのを聞いちまったからよぉ」


「盗み聞きとは感心しないね」


「女ごときが俺に説教たれてんじゃねぇよ」


「男だとか女だとか関係ないんじゃないかな?」


「ムカつく女だな……女なら男である俺に逆らわねぇで素直にケツでも振ってろや!」



 本当に下衆の考えは理解出来ない。


 そんな男尊女卑な思想は時代遅れだと言うのに、オドバンにとってはあたかもそれが当然の事であるらしい。



「君みたいな人に喜んでそうする女性は居ないだろうね。僕だって嫌だし」


「そんな事言っていいのかぁ?この俺に逆らったらテメェが女だって事バラしっちまうぜぇ?」


「誰も信じないと思うけどね」


「はん!これを見ても同じ事言えんのかよ!」



 オドバンはそう言うと懐から丸い水晶を取り出した。


 もしかしてあれは映像結晶?


 オドバンが映像結晶を起動すると、そこには私が中庭でムメイと話している様子が映っていた。


 しかもご丁寧にその時の会話までバッチリ録音されている。



「ひゃはは!これがあればテメェが女だって事がバレちまう。そうなりゃテメェは性別詐称で退学だな!」



 それは非常にまずい……もし退学なんてなったら騎士団長への道が閉ざされてしまう。



「何が望みだ?」


「話が分かるじゃねぇか。なぁに、大した事じゃねぇよ。ただテメェの純潔が散るってだけの事だ」


「この……下衆野郎……!」



 悔しさに表情を歪める私にオドバンは下卑た笑みで私の両手を縛る。


 そして私はどこかへ連れていかれるのであった。



(ムメイ……助けて……)



 そんな届かぬ救いを求めながら……。






 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼






 あれから数分経ってもエレインが戻ってくる様子は無く、しかし俺は帰らずに未だにベンチの上に寝転んでいた。


 すると寮がある方向から数人の男子生徒達が現れ、ゾロゾロとどこかへ向かおうとしていた。


 その際に俺と目が合ったのだが、その途端に〝ヤバい〟という表情で目を逸らしたので、怪しく思った俺が奴らへと近付く。


 そして逃げ出そうとしたのを阻止して俺は奴らに話しかけた。



「こんな時間にこんな所でそんな人数で何処に行くんだ?」


「お、お前には関係無いだろ……」



 男子生徒の一人がそう言っているが、震えているので大して怖くは無い。


 だから俺は拳を鳴らしながら奴らにこう言ってやった。



「俺さぁ……こう見えて格闘なんかも得意でさ。お前らの腕や足の骨をへし折るのなんて今日のテストで使われたミスリルを斬るよりも簡単に出来るんだぜ?でも俺も人間だからそういうのは極力避けてぇんだ。だからさ……素直に教えてくれるよな?」



 その脅しが効いたのか男子生徒達は直ぐに全てを話してくれた。


 それを聞いた俺は直ぐに奴らが向かおうとしていた場所へと駆け出す。


 建物を飛び越え、いくつかの曲がり角を曲がり、そして辿り着いたのは野外訓練で使う道具がしまわれている倉庫。


 俺がその扉を開けると、そこには両手を縛られた状態のエレインの姿。


 上着は破られたのか胸があらわになっており、しかもよく見れば今朝、彼女の取り巻きになっていた女生徒達の姿もある。


 そして彼女達の他に男子生徒が三人……一人は朝にエレインに倒されていた奴だったが名前が思い出せない。


 そして他の二人は完全に初見で、片方はデカい図体で、もう片方は片手で折りたたみ式ナイフを弄んでいた。


 そしてその光景を見た俺は、気づけばエレインの前に立っていた男をぶっ飛ばしていたのだった。


ちなみに通信結晶は魔力の少ない人でも使えるように作られている為、魔力0のムメイでも使用する事が出来ます

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