学園総合競技会
「今月は学園総合競技会が行われます」
学園総合競技会────それは全学年全学科全クラス対抗で行われる行事で、生徒達は様々な種目にて競い合う為、この日の為に研鑽を積んできたと言っても過言ではないという生徒達が大半らしい。
「種目は〝総合闘技〟、〝剣術闘技〟、〝魔法闘技〟、〝障害物競走〟、〝探索競走〟の五種目となります」
「最後の〝探索競走〟って、なんか楽な種目だな」
俺の一言にその場にいた全員が注目する。
「ムメイは高等部から来たから分からないよね……実はその探索競走が五種目の中で一番過酷なんだよ」
「そうなのか?」
「紙に記された指定のエリアから、指定のアイテムを持ち帰るだけですけれど、毎年それで何人もの怪我人が出ているんですのよ」
「例えば?」
「そうだな……確か一番外れクジで〝火蜥蜴〟の発火袋というのがあったな」
火蜥蜴の?
もし俺がそれを引いたなら、別に過酷でも何でもないもんだな。
「ムメイの基準と世間一般の基準を一緒にするな」
「ンだよそれ……それだと、あたかも俺が常識外れな奴みてぇじゃねぇか」
〝え?そう言ってるんだけど〟という顔をするな。
しかも全員そんな顔してんじゃねーかよ、おい。
「コホン……それでは各種目の説明へと入ります。まず始めに────」
アリストテレス先生の説明を要約すると────
〝総合闘技〟は剣士や魔導師に関係なく出場出来るもので、〝剣術対魔法〟といった勝負が見どころらしい。
〝剣術闘技〟と〝魔法闘技〟は説明しなくても読んで字のごとくだ。
〝障害物競走〟は転移先に配置されたルートを通り、ゴールを目指すのを競うリレー方式の種目なのだが、その行く先々に様々なトラップ等の障害が設置されているらしい。
最後の〝探索競走〟についてはマリアベルが説明してくれてたな。
出場出来る種目の数に制限は無く、全ての種目に参加してもいいらしいが、まぁ全種目出場する奴は未だかつていないらしい。
俺についても確実に〝魔法闘技〟には出場出来ねぇしな。
「魔法闘技については、魔法を用いての戦闘であれば良いとの事で、つまりこのクラスでも多少なりとも魔法を使える者は出場できます」
「ならエレインとマリアベルは出場したらどうだ?」
「「……へ?」」
「いや〝へ?〟じゃなくてよ。エレインは氷結系魔法が使えるし、マリアベルは雷撃系魔法が使えるだろ?なら出場してもいいじゃねぇかって、そういう話」
ちなみにこのクラスで魔法を使えないのは俺だけだったりするのだが、まぁ使えなくても困らないので別に気にしてはいない。
「ではローゼクロイツさんとレッドフィールドさんは魔法闘技に出場という事でいいですね?」
「ちょっと待って下さいまし!私、まだ出るとは言っておりませんわよ?!エレインもそうですわよね!」
「わ、私は出てもいいかな〜って……」
「エレイン?!」
「では二人は魔法闘技に出場、と……」
「先生?!」
つっこむマリアベルを他所にアリストテレス先生は魔法闘技の下に記された出場欄にエレインとマリアベルの名を書いてゆく。
それにより、諦めて席に座り直すマリアベルだったが、何を思ったのかいきなりこんな事を言い出した。
「ではムメイは魔法闘技以外の種目に出場という事でよろしいですわね!」
「……は?」
「なるほど、確かにそれは良いですね。ではミツルギ君、魔法闘技以外の種目は任せましたよ」
「了解っス」
「慌てふためかないですわね、この男……」
俺が慌てふためく姿が見たかったのだろうか?
まぁマリアベルに言われなくとも出る気でいたし、人数が少ない分、誰かが多めに出た方がいいだろうしな。
────という事で騎士・剣士学科一年Sクラスの出場種目割り当てはこうなった。
〈総合闘技〉※各クラス三名
ムメイ・ミツルギ
アルフォンス・ルーカス・フォン・アルカトラム
御龍院神楽
〈剣術闘技〉※各クラス三名
ムメイ・ミツルギ
エレイン・フォン・ローゼクロイツ
叢雲刹那
〈魔法闘技〉※各クラス三名
エレイン・フォン・ローゼクロイツ
マリアベル・フォン・レッドフィールド
御龍院神楽
〈障害物競走〉※各クラス五名
ムメイ・ミツルギ
エレイン・フォン・ローゼクロイツ
マリアベル・フォン・レッドフィールド
リン・マオ
叢雲刹那
〈探索競走〉※各クラス五名
ムメイ・ミツルギ
エレイン・フォン・ローゼクロイツ
アルフォンス・ルーカス・フォン・アルカトラム
リン・マオ
叢雲刹那
とまぁこんな感じになった。
ちなみにルゥは正規の生徒ではないし、神獣が参加するとなると色々と混乱が生じるらしい。
本人は出たがっていただけに、非常に残念である。
「と言うか神楽は魔法使えたのか?」
「陰陽術、呪術、幻術、仙術、妖術、それに神術も使えるぞ」
「最初の五つは聞いた事あるが、神術は知らねぇな。いったいどういうもんなんだ?」
最初の五つはジジイから聞いていたから知ってはいるが、神術だけは知らない魔法だった。
すると神楽は自慢げに、お世辞にもあるとは言えない胸を張って神術についての説明を始める。
「神術とは神霊と契約を結ぶ事により、その神の力を発現させる術の事じゃ。妾が契約しておる神は太陽神・天照────光と炎を司る神じゃ!」
神の力を……ねぇ……。
まぁとりあえず多種多様な魔法を使える神楽は魔法戦闘において心強いという事だな。
そんな神楽だが、何を思ったのか不意に俺の顔を覗き込み、訝しげな表情をしている。
「俺の顔に何かついてんのか?」
「いや、なに……改めて観察してみるとの、お主何やら凄まじいものを身に宿しておるの?」
「何だよ、その〝凄まじいもの〟って?」
「知らぬ。妾も今まで見たことの無いものじゃ」
最初は〝剣鬼顕現〟の際に出てきたアイツの事を言っているのかと思ったが、どうやらそうじゃないらしい。
だが神楽が知らない事は当然、俺も知らない。
「一つはまぁ、鬼じゃ。あの老いぼれと同じような存在じゃな。その他にお主の身体に得体の知れない何かがおるようじゃ」
「急にビビらせんじゃねぇよ」
「妾だって恐ろしいわ。まぁお主には何の危害も及ばなさそうじゃが、ひとつ間違えば脅威になりうるの」
「さいですか」
今あれこれ考えたって意味もねぇし、知らねぇもんは知らねぇ。
一先ず何もねぇんならそれでいいか。
「ともかく、今は目下の競技会に集中しようぜ。どうせ出るんなら全て優勝を目指さねぇとな」
「その意気ですよミツルギ君。ちなみに競技会には個人戦と団体戦がありますので、今のうちに連携などを考えておいた方がいいでしょう」
それは先に言って欲しかった。
何はともあれ、俺達はその日から競技会に向けての訓練を始めるのであった。




