エピローグ
アルガナムの事件を終え、騒々しいながらも大団円を迎えたムメイ達。
その一方で新たに学園へとやって来る者が現れる事になる。
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アルカトラム帝国を西に遠く離れた地にある大国、〝神聖エルサレム法国〟。
アルテラ教の総本山であるこの国の大聖堂にて、一人の少女が朝の礼拝を行っていた。
そんな彼女の背後で、一人の神父がその様子を暖かい目で見守っていた。
「…………ふぅ」
「礼拝は終わりですかな?」
少女が礼拝を終えたのを見計らい、神父がそう声をかける。
すると少女は振り返り、女神の如き笑みで返事をした。
「はい、エリオル神父様。我らが主に留学へ行く旨を伝えておりました」
「実に敬虔な方だ。流石は聖女様と言った方が宜しいかな?」
そう悪戯っぽく笑みを浮かべながら話すエリオルに対し、〝聖女〟と言われた少女は頬を赤らめながら返答する。
「もう……エリオル神父様は意地悪な方ですね。貴方は私が赤ん坊の頃から育てて下さった、いわば父親のような方です。そんな方にそう呼ばれるのは少し寂しく思いますので、いつものように〝ルナマリア〟と、そうお呼びください」
「ははは……まったく、あの日この大聖堂の前に捨てられていた君を拾ってから、本当の娘のように育ててきました。そんな娘が聖女に認定され、そして今、他国へと渡ろうとしている……寂しいというのならそれを見送らねばならない私の方が寂しいよ、ルナ」
「本当に……本当にここまで育てて頂きありがとうございます、お父様」
涙を浮かべるルナマリアに、エリオルはそっとその頭を撫でる。
そして父親のような面持ちで彼女に忠告をした。
「いいかいルナ……世界には悪しき心を持った者が多い。しかし善なる心を持つ者がいるのもまた確か。その事を胸に刻み、そしてその者を見極める力を育てるのだ。聖女は全てに等しく慈悲を与える存在ではあるが、時には悪しき者を罰する事もまた必要なこと。優しいお前には辛いだろうが、それが世の常なのだよ。その事をしっかりと憶えておきなさい」
「はい、お父様」
「宜しい。それでは旅立つ娘を見送ることにしようか。もう随分と馬車を待たせてしまっているのでね」
「そんな!それならば早く言ってくだされば良いのに!」
「ははは!神への祈りを捧げるお前に、いったい誰が邪魔を出来ようか?さぁ、馬車に乗ろう。そして世界をその目でしっかりと見てきなさい」
「はい!」
そうしてエリオル・セントフィリアの義娘であるルナマリア・セントフィリアは馬車へと乗り込み、父親との別れを告げた。
馬車には従者として派遣された女性聖騎士フレア・フォン・エスメラルダと、僧侶のガウェイン・ノストラムダが同席している。
目指すはアルカトラム帝国……まだ見ぬ大国に胸を躍らせながらも、ルナマリアは静かに馬車に揺られるのであった。
ところ変わって極東の島国〝桜皇国〟────
ここではルナマリアと同様にアルカトラム帝国へと旅立つ少女がいた。
彼女の名は〝御龍院神楽〟……この桜皇国の姫君で、この度アルカトラム帝国総合学園への留学が決まった人物である。
彼女は煌びやかな装飾が施された太刀を下げ、手にしていた扇子を勢いよく開きながら従者である龍族二名に指示を出していた。
「行くぞお主達!目指すはアルカトラム帝国!妾に並ぶに相応しい者を見つけにの!」
「「ははぁ、姫様!」」
神楽は開いた扇子で口元を隠し、満面の笑みを浮かべながらこれから向かう国へ思いを馳せる。
(風の噂でかの剣鬼の弟子が帝国の学園に通っておるらしいの。ならばこの妾が直々にこの目で確かめてやるわぃ)
小さくも強力な龍族の少女が今まさにムメイの元へと訪れようとしていた。
そして最後にもう一人……桜皇国と海を挟んで隣国である大国〝華陵国〟────
ここにもまたアルカトラム帝国への留学が決まっている少女がいる。
彼女の名は〝菲蘭〟……彼女は華陵国王に代々仕える拳法の名家〝菲家〟の生まれで、今回武者修行を兼ねて留学することに決まったのである。
彼女自身もまたかなりの拳法使いで、また華陵国特有の〝気功術〟の使い手でもある。
女性の身ながら菲家次期当主候補にも挙がっており、その強さは華陵国の全ての民が周知している事であった。
「蘭よ……向こうでも鍛錬を怠るでないぞ?」
「もちろんアルよ!李老師の教え、絶対に忘れないアル!」
「宜しい。では行って参れ!世界を見て、更なる上を目指すのだ!」
そして蘭も馬車に乗り師匠達に見送られる。
住む場所も立場も全く違う三人……しかしこの三人がそれぞれに騒動をも運んでくることになるとは、この時はまだ誰も知る由が無かったのだった。
こうして新たな物語の幕が上がる……。
─第一部・第一章、完─
これにて第一部・第一章は終了となります
ここまでお読み下さりありがとうございました!
これからも剣戟無双をどうぞ宜しくお願いしますm(_ _)m




