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追放剣士の剣戟無双【魔力0だけど強力スキルと剣術で無双する】  作者: SIGMA・The・REVENANT
第一部・第一章:魔力0の剣士
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決闘─それぞれの視点─

 ─エレイン視点─


 ムメイの介添人として立ち会った私は一瞬の出来事に目を疑ってしまった。


 開始前にセツナさんが何やら言っていたようだけれど、その直後からムメイの様子が変わった。


 私はそれがとても怖くて、思わず肩が震えてしまう。



(ムメイ……大丈夫だよね?またあんな風になったりしないよね?)



 私の脳裏には、まだギガンウルブスだったルゥちゃんとの戦いで見せた、あの怖い状態のムメイの姿が浮かんでいた。


 あの後、ムメイが寝ていた部屋へと訪れた私だったが、内心ではかなり躊躇っていたのである。


 彼は幾度となく私を助けてくれた。


 それこそ入学式の日にオドバンとブルガス達に襲われていた時に助けられてから……。


 当時はあの時に抱いた感情が何だったのかは分からなかったけれど、ギガンウルブスに噛みつかれ、叩きつけられた彼の姿を見て、私は彼を失う恐怖に呑み込まれてしまった。


 その時なんだろうね……私が彼に抱いていた感情が〝恋〟だと知ったのは。


 だから彼があんな風になった時は、彼が私の手の届かない所へ行ってしまいそうで本当に怖かった。


 だから二度とあんな風にはなって欲しくない。


 そう思って彼の決闘を見届けようとしたのだが、アリストテレス先生が開始の合図を発したと同時に、気づけばムメイはセツナさんを叩きつけていた。



「……へ?」



 そんな素っ頓狂な声を出してしまったのは仕方がない事だと理解して欲しい。


 それ程までに彼の速さは異常だった。


 今まで見たことの無いくらいの速さ……目で捉えることが出来ず、セツナさんが叩きつけられた音でようやくそうなったと理解出来た程だ。


 ふと観客席に顔を向けてみれば、マリア達も同様に何が起きのか分からないという顔をしている。


 ルゥちゃんに至ってはマリアに抱きついてブルブル震えてしまっていた。


 アリストテレス先生についても最初は全く動じていないように見えたけれど、よく見たら頬に一筋の汗が伝っていた。


 そしてムメイが何を言ったのか、セツナさんが悔しそうな顔で彼を見上げている。


 彼の怒りように私は思わず声をかけそうになったけれど、直ぐにグッと堪えて、最後までこの決闘を見届ける事に決めたのだった。


 この決闘が終わったあと、またいつものような笑みで戻ってきてくれることを信じて……。




 ─アルフォンス視点─


 東方で言うところの〝羅刹〟とはこの事を言うのであろう……私は怒気を放っているムメイを見てそう思った。


 彼は私の唯一無二の親友であり、様々な面でとても頼もしい存在と言えよう。


 しかしその親友は今まさにオーガでさえも裸足で逃げ出すほどの羅刹と化している。


 その姿に私は息と共に唾をも飲み込んでいた。



「ご主人が怖いー……」



 人間体のルゥがマリアベル嬢に抱きつきながらそんな事を呟いている。


 無理もない……一度彼のあのような姿を間近で見ていたルゥにとっては畏怖すべき対象であろう。


 それ程までの怒りを抱いた理由は定かでは無いが、それでも彼が怒りを抱くほどのことがあったのだと理解した。


 だから私は隣にいたマリアベル嬢達に対しこう告げる。



「マリアベル嬢、リン、そしてルゥ……もしもの事があった場合、私達で全力で止めるぞ?」



 三人は返事こそしなかったが頷いて私の言葉に了承した。


 そして私はそうならない事を祈りながら、この決闘の行く末を見届ける事にしたのだった。




 ─マリアベル視点─


 ムメイが怒りを放った事に、(わたくし)は震えながら抱きついてくるルゥを受け止めながらその様子を見ていましたわ。


 ムメイがあのような姿を見せるのは二度目……いや、エレインが襲われていた時の事を含めると三度目ですわね。


 怒り狂ったムメイは恐怖そのもの。


 故に彼をそこまで怒らせたあの叢雲刹那(セツナ・ムラクモ)という方には逆に感服してしまいました。


 遠くながら彼女が彼に何かを言っていたのが分かりましたけども、いったい何を言えばあれ程までに怒らせる事が出来るのでしょうか?


 別に教わりたいわけではありませんのよ?


 自ら進んでムメイを怒らせるなど、自殺行為の何ものでもありませんから……。


 それをよくもまぁこんなにも怒らせましたわねと逆に感心しているんですのよ?


 ムメイは開始早々に彼女を叩きのめしておりましたけれど、あれでもまだ本気ではありませんわね。


 もし本気でしたのなら今頃、彼女の頭は見るも無惨な状態になっていたでしょうから。


 殿下から忠告を頂きましたが、果たして私達で止められるのでしょうか……。


 私は未だ震えているルゥを落ち着かせながら、この行く末を固唾を飲んで見守るのでした。




 ─アリストテレス視点─


 私の合図と共に叩きつけられるセツナ・ムラクモ。


 何故そうなったのか?


 誰がそうしたのか?


 などと単純明快な疑問は抱くことすら馬鹿馬鹿しい程に、彼────ムメイ・ミツルギは一刀のもとに彼女を叩き伏せていた。


 かなりの脚力で距離を詰めたからだろうその余波である突風が私の髪を靡かせる。


 彼の実力は選別テストの結果からも伺えましたが、合宿訓練で実際に目にしてから更にその実力が私達の推測を遥かに上回っていると断言出来る。


 極めつけはギガンウルブスを追い詰めただけでなく、その後エンペラーフェンリルへと進化したソレを手懐けてしまった事だ。


 あまりの規格外さに私の常識が完全に崩れ落ちてしまいました。


 さて……この時点で勝負はついていると判断出来ますが、このまま続行させましょう。


 開始位置へと移動する際に聞こえてきたセツナ・ムラクモのあの言葉は私にも聞こえており、人を差別や蔑み、また侮蔑や愚弄する事を嫌う私にとっては許せない事でしたから。


 でもムメイ・ミツルギのあの怒りようではやり過ぎてしまう可能性も否めない為、程よいところで止めるとしましょう。


 まぁ、その前に決着がつきそうですが……。


 私は襟元を直し、姿勢を正して少し乱れた髪を整えると、この決闘の行く末を見届ける事にしたのであった。


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