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追放剣士の剣戟無双【魔力0だけど強力スキルと剣術で無双する】  作者: SIGMA・The・REVENANT
第一部・第一章:魔力0の剣士
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剣鬼顕現

「ジジイ」呼びがいつの間にか「爺さん」呼びになってたので修正しました

 腕を切り落とされたオークロードが、その腕を抑えて絶叫している。


 俺はそれを静かに見据えていた。



「ムメイ!」


「よぉ、エレイン。言った通りにちゃんと後を追って来たろ?」


「うん……うん……」



 少し涙ぐんでいるエレインを見て俺は小さく微笑んだ。


 そしてその隣にいるマリアベルに目を向ける。



「無事そうで何よりだ。ここにいる奴らも無事なところを見るに、アルのお陰だろうな」



 そう言いながらアルに目を向けると、アルは俺に気づき手を挙げて無事であることを示していた。



「敵を前にして呑気ですのね……でも、まぁ、貴方が来てくれて心強いですわ」


「休んでてもいいんだぜ?」


「冗談はよしてくださいまし。まだゴブリンキングがいるんですのよ」


「ならそっちは任せてもいいか?」


「もちろんですわ!ねえ、エレイン?」


「当っ然!」


「ならば私も援護しよう」



 いつの間にいたのかアルもそう言って剣を抜いた。


 俺はオークロードを、エレイン、マリアベル、アルの三人はゴブリンキングを、そして他の生徒達は負傷者の手当や俺達の援護に回る。


 先ず動きを見せたのはオークロード────奴は残った左手で大鉈を掴むと、雄叫びと共に俺に斬りかかってきた。


 俺は横薙ぎに迫ってくるオークロードの大鉈を伏せてかわすと、そのまま奴の両足に一閃を放つ。



「ブモォ!?」



 両足を斬られバランスを崩したオークロードは仰向けに倒れ、俺はすかさず奴の胸の上へと立った。



「もう少しテメェと遊んでやりてぇところだが……悪ぃな。こっちも急いで帰らなきゃならねぇんだよ」



 そしてオークロードの首筋に鬼正の刃を当て、俺は勢いよくそれを払った。



「御剣一刀流、〝首討ち〟」



 呆気なく撥ねられたオークロードの頭はそのままゴロゴロと転がっていき、自分達の親玉の無惨な姿を見たオーク達は一斉に逃げ始める。


 だがみすみす見逃してやるほど俺達は甘くはない。


 逃げるオーク達に生徒達が魔法や矢を放ち次々と仕留めてゆく。


 そんな転がるオーク達の亡骸を見ていた横では、エレイン達もゴブリンキングを見事に仕留めていた。



「先ずは一安心といったところだな」



 俺はそう言いながら、鬼正をゆっくりと鞘に納めたのだった。


 そして俺達は洞窟の外へと出て、新鮮な空気を堪能する。


 だが、俺は直ぐにある事に気づいて戦慄した。



「ギガンウルブスの死体がねぇ……」



 そう呟いた矢先、俺の身体を鈍い衝撃が襲った。


 見れば倒したはずのギガンウルブスがニヤリと笑いながら俺に噛み付いていたのだった。



「ムメイ!!!!」



 エレインの悲鳴とも取れるその声を聞きながら、俺はなんとかしてギガンウルブスの牙から抜け出そうと試みるも、その前にギガンウルブスに投げ飛ばされ、岩壁に叩きつけられた俺はそのまま意識を手放した。






 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼






 なんという事だ……。


 この私、アルフォンス・ルーカス・フォン・アルカトラムはギガンウルブスにより岩壁へと叩きつけられたムメイを見てそう思った。


 彼は私が知る中でもとても優れた剣士であり、彼のああいった姿を見るのは何かの冗談だと思ったのだ。


 しかし現実に叩きつけられたムメイが動く様子はない。


 その事に私はおろか、エレイン嬢やマリアベル嬢を含めた生徒達が絶望の表情を見せていた。


 ギガンウルブスは目の前で、まるで私達の絶望の表情を嘲笑うかのように遠吠えをしている。



「貴様……我が親友(とも)に危害を加えて、楽に死ねると思うなよ?」



 自分でも驚くほど低く重い声が発せられていた。


 怒りが絶え間なく溢れている私は愛剣〝七星剣(グランシャリオ)〟を抜き放つと、ゆっくりとギガンウルブスへと近づいてゆく。


 しかし途中でエレイン嬢とマリアベル嬢の二人に止められてしまった。



「待ってください殿下!」


「ええい離せ!奴を細切れにせねば気がすまん!」


「お気持ちは分かりますが、殿下は将来この国を背負ってゆく立場なのですわよ!」


「国を守る前に、親友の一人すら守れぬようでは皇太子として恥だ!故に私は────」



 そこまで言ったところで私は今までに感じたことの無い悪寒を覚えた。


 見ればエレイン嬢とマリアベル嬢も同様に、僅かながら震えている。



(これは……恐怖か?震えが止まらん……)



 顔を向ければ叩きつけられていたムメイがいつの間にかギガンウルブスの足元に立っていた。


 ギガンウルブスもその事に気づいたのか、ムメイに顔を向けて驚愕の表情を浮かべている。


 そして次の瞬間────



「ぐぎゃあっ!」



 見えなかった……。


 目にも止まらぬ速さでギガンウルブスの右前脚が肘から斬り飛ばされ、その事で奴は体勢を崩して倒れ込む。


 鞘から抜いた刀を手にしギガンウルブスを見下ろしているムメイの身体からは筆舌に尽くし難いオーラが滲み出ていた。



(ムメイ……我が親友よ……お前は何なのだ?)



 ムメイを見て私はその言葉しか頭に出てこなかった。






 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼






 ギガンウルブスに叩きつけられ、意識を失った俺は夢を見ていた。


 それはかつてジジイと剣の稽古をしていた際に、ジジイと何気ない会話をしていた時の夢だった。



「〝剣鬼顕現〟?」



 聞き慣れない単語に俺が訝しげな表情をしていると、ジジイは頷いてから話し始めた。



「そうじゃ。これは我が身に鬼の氣を宿す事で普段よりも何倍もの力を引き上げる事が出来るスキルじゃ」


「すげぇ……俺も出来るようになれるのかな?」


「ふぉっふぉっふぉっ。お主ならば必ずや体得する事が出来よう……しかしこのスキルには一つ気をつけねばならん事がある」


「……?」



 先程まで温和だったジジイが途端に真剣な表情になったので、俺も無意識に姿勢を正してしまう。



「これを発動すれば確かに強力な力を振るえるじゃろぅ……しかしこれは云わば諸刃の剣じゃ。気をしっかりと持っておらんと簡単に呑まれてしまう」


「呑まれるとどうなるんだ?」


「手当り次第暴れた挙句に誰彼構わず危害を加え、その身滅びるまで決して止められる事が出来ない……つまりスキルに取り殺されるという事じゃ」



 ジジイの話に悪寒が走る。


 何かの冗談かとも思ったが、ジジイの目は本気であった。


 しかし危険と分かっていてもそのスキルを使いこなせなければ剣神になるなんて無理だろう。


 その翌日から俺はその〝剣鬼顕現〟の会得と、それを使いこなせる為の鍛錬を始めた。


 普段の稽古も行っての鍛錬だったのでかなり疲労困憊になる事が多かったが、それでも俺は〝剣神になる〟という夢の為に頑張った。


 そして遂に〝剣鬼顕現〟を会得し、俺は早速使ってみる事に……。


 しかし発動した途端、俺の中に得体の知れない存在が入ってくるかのような感覚に襲われ、俺は瞬く間にソイツに呑みこれたのだった。



「お……きろ……お……い……────起きろ、ムメイ!」


「うわっ!!?」



 ジジイの声に起こされ目を覚ました俺はキョロキョロと周囲を見渡す。


 するとそこは先程までいたはずの森の中ではなく、ジジイと住んでいる山小屋の中だった。


 見ればジジイが心配そうな顔で俺を覗き込んでおり、その手には濡れた手ぬぐいがその力によりひしゃげている。


 そして窓から見える空が真っ黒であることから、今が夜であると判断できた。



「夕方になっても戻らんから心配して探しに行ったら森の中で倒れとったんじゃよ。魔物に襲われておらんかったのが幸いじゃったな……して、一体何があった?」



 ジジイにそう訊ねられたので森の中での事を偽りなく話したところ、それを聞いたジジイは深いため息をついた。



「やはりのぅ……いいかムメイ?お主は今後、ワシが許すまで〝剣鬼顕現〟を使ってはならん」


「分かった……けど、俺はどうなってたんだ?」


「それは明日教えることにしよう。今はゆっくりと休むがよい。腹は空いておらんか?」


「減ってるけど……動けない」



 起き上がろうとしたが指一本すら動かせないほど、俺の身体は疲弊しきっていた。


 ジジイはウンウン頷いたあと、いつもの温和な声で今の俺の状態を教えてくれた。



「〝剣鬼顕現〟の反動じゃな。お主の歳を考えれば、いつものように動けるまでには時間がかかろうて。ちと待っとれ」



 ジジイはそう言うとどこかへ行き、そして脚の無い椅子のようなものを持ってきた。



「これは座椅子と言ってのう、座りながら足を伸ばしたりも出来るものじゃよ。ほれ、動かすぞぃ?」



 ジジイは俺の頭と背に手を滑り込ませゆっくりと起こし、静かに持ち上げながら座椅子とやらを俺の腰へと置く。


 確かに座ってみれば足を伸ばしながら背もたれに寄りかかれるので楽である。


 そしてジジイは食事を持ってきて俺の口に運んでくれた。



「これは精進料理と言うてのぅ、食べれば精がつく。疲労回復にも効果があるからしっかりと食べるんじゃぞ?」


「うん……。」



 その日は食事をとった後、直ぐに眠りについた。


 驚くことに今まで無かったくらいにぐっすりと眠れた。


 翌朝、ジジイに背負わされた俺は森へと連れられ、そこで見た光景に目を見開いた。


 木という木が切り倒され、地面には斬撃の後が無数に残っていた。


 見ればそこかしこに魔獣らしき死体もいくつかある。



「ほぅ……昨日は薄暗かったので分からんかったが、どうやら襲ってきた魔獣も倒しておったようじゃの」


「これ……俺がやったのか?」


「正確には〝剣鬼顕現〟の暴走により我を失ったお主じゃな。じゃがこれで分かったじゃろぅ?剣鬼顕現に呑み込まれるとどうなるか……」



 俺は返事こそしなかったが、改めて剣鬼顕現の危険さを思い知ったのだった。


 その後はジジイの指導で剣鬼顕現に呑み込まれない為の鍛錬を続けていたのだが、未だにその許しは得ていない……。


 そして急に夢の内容が変わり、何も無い真っ暗な空間の中に俺はいた。


 辺りを見渡せども先の無い黒い空間が広がっているだけで、その事に俺は困り果てていた。


 すると背後から誰かに話しかけられる。



「よォ、お目覚めカ?」



 振り返ればそこには緑色に光る一本の角と目を持つ黒い人型の何かがそこに立っていた。


 ソイツは目を細めると、首を傾げながら口を開く。


 その口の中も緑色に光っており、そこからこれまた緑色の炎がちらりと出ている。



「ンな〝誰だ?〟って顔するんじゃねぇヨ。テメェ自身気づいてんだロォ?」


「まさか……鬼か?」


「ハッハッハっ!正解のようで不正解だナ。俺は剣鬼顕現そのものだとでも思ってくれヤ。そしてテメェ自身でもアル」


「は?」



 俺はソイツ(以降は黒鬼と呼称する)の話に疑問符を浮かべた。


 だが黒鬼はお構い無しに話を続けた。



「テメェは今、危ねぇ状態にアル。まさに〝危機的状況〟ってやつだナ。だから勝手ながらこの俺が剣鬼顕現を発動してやっタ。あとはテメェが目覚めるだけダ」


「それはありがてぇけどよ……でも俺はまだジジイから許しを貰ってねぇし、暴走しねぇわけでもねぇだろ」


「ハハハ!しょうもねぇ事で悩んでんナ、オイ?ンな心配もう要らねぇんだよテメェはよォ。なにせ俺が暴れてやろうと思っても出来てねぇんだからナ」


「どういう事だ?」


「テメェが思ってるほど、テメェの精神はンなやわじゃねぇって事ダ。試しに目を覚ましてみロ?それで分かるはずだからヨ」



 黒鬼がそう言ったところで俺の身体を何かに吸い寄せられるような感覚が襲う。


 抗えないその力に引っ張られてゆく俺に、黒鬼は手を振りながらこう言ってきたのだった。



「頑張れヨ、相棒」



 そして目を覚ました時、俺の視界には遠吠えをしているギガンウルブスの姿と、それを見て絶望しているエレイン達の姿があった。


 そして俺の身体にはかつて剣鬼顕現を発動した時のあの感覚が沸き起こっている。


 俺はゆっくりと立ち上がる……岩壁に叩きつけられていたはずなのに痛みなどは無い。


 意識はちゃんとある……俺はそこで完全に剣鬼顕現をものにしているというのを理解した。


 そして力を込めていないはずなのに気づけばギガンウルブスの足元まで移動しており、こちらを見て驚いている奴の右前脚を鬼正でいとも容易く撥ね飛ばしていた。


 体勢を崩し倒れるギガンウルブス……俺は奴を見下ろしながら怒りを含んだ声でこう言ったのだった。



「さっきはよくもやってくれたな?ぶった斬ってやるからかかってこいよ」


ムメイ「だいぶ更新速度が落ちてきたな?」


作者「サーセン……」

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