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追放剣士の剣戟無双【魔力0だけど強力スキルと剣術で無双する】  作者: SIGMA・The・REVENANT
第一部・第一章:魔力0の剣士
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違和感

レビュー、感想、評価お待ちしております

 森の中へと入り探索を始める俺達。


 木漏れ日が差し込んでいるので奥へ進んでも未だ明るいその地は、魔物以外の小動物の姿もちょいちょい見受けられた。



「レザーラビットだ!あの毛皮は防暑防寒で有名なんだよな」


「あそこにはフォレストボアがいるな。アレの肉は上質で上手い」


「これはクルルの実じゃない!?この実を使ったスープは絶品よ!」



 各々に動物や植物を見つけては嬉々としている三人に思わず〝何をしに来た?〟というツッコミを入れそうになる。


 しかしアリストテレス先生の話では定められたポイントを集め終えるまでは森の中での野宿も辞さないということらしいので、ここいらで食料調達をするのも必要か。


 俺は俺は鬼正を構えると、悠々と歩いていたフォレストボアに向かって刀を振り下ろした。


 すると刀から斬撃が放たれ、フォレストボアの首を切断する。


 それを見ていた五人が唖然としていた。



「ムメイ……今の、なに?」



 エレインが目を見開きながらそう訊ねてくる。



「ん?あぁ、今のは御剣一刀流抜刀術の一つ、〝飛燕一閃〟だ。遠くにいる相手に対して有効な一撃で……」


「いやいやいや!私達が知りたいのは技じゃなくて、どうして遠くの敵を斬ることが出来るのか聞いてるんだよ!」



 あぁ、そっちか。


 俺は落ちていた木の枝を手に取ると、エレイン達の前でそれを軽く振る。


 エレイン達が後ろに吹き飛ばされた……どうやら力加減が足りなかったらしい。



「まぁ、今みてぇに振ると風が起こるだろ?」


「普通は突風なんて起こせないけどね。君がどれだけ規格外なのか、改めて思い知らされた気がするよ……」


「まぁまぁ。そんで飛燕一閃はそこに刃を乗せて放つンだよ。ジジイ曰くそれなりの筋力とコツを掴めりゃあ出来るんだとよ」


「詳しく聞いても何も理解出来なかったとだけ言っておくわ……」



 どうやらまだ分かりやすく説明出来ていなかったようだな?


 今後、他人にも分かりやすく説明出来るよう纏めてみるか。



「絶対、ムメイが考えてる意味では無いと思うけれどね……」



 そうなのか?


 解せぬ。



「ともかく食料が手に入ったって事でいいじゃねぇか。ムメイのあの技がありゃあ、簡単に食料が手に入るって事だろ?」


「貴方はもう少し細かいところに目を向けてみたらどうなの?そんなに大雑把じゃあ苦労するわよ?」


「まったく……ダークエルフのくせに小せぇ事気にするなぁ?もう100歳超えたババア────」



 ハイゼルの頬を一筋の矢が掠めていった。


 自身の背後にある木に刺さり、衝撃で振動している矢を見て、彼の頬を冷や汗と血が流れ落ちる。



「ねぇ……今なんて言おうとしたのか、私に教えてくださるかしら?まさか女性に対して老婆を指す蔑称で呼ぼうとした訳では無いわよね?そうよね?もしそうだとしたら……」


「そうだとしたら……?」


「貴方の粗○ンを一生使えないようにしてあげるわよ?」



 ハイゼルの表情が一瞬で青ざめた。


 その横でガロンは両手で自身の股間を抑え萎縮し、アリストテレス先生は少しだけ顔を赤らめながら咳払いをしている。


 〝口は災いの元〟とはよく言ったもんで、ハイゼルもそんな軽口を叩かなければアウローラを怒らせずに済んだものを。


 俺が怯え震え上がっているハイゼルを見ながら呆れていると、エレインが俺の服の袖をちょいちょいと引っ張ってくる。



「どうした?」


「ねぇムメイ……〝粗○ン〟って何?」


「……お前は知らなくていい言葉だ」



 エレインが学園に来る前にどれだけ箱入りで育てられたのがよく理解出来た質問であった。


 なるべく彼女の前で汚い言葉は控えて欲しいが、まぁアウローラの気持ちも分からなくもないので、今回は仕方の無い事だと言えるな。


 そしてハイゼルよ……どのような女性に対しても〝ババア〟とは言ってはいけねぇぞ?


 大事な息子を再起不能にされたくなければな。



「まぁまぁアウローラ……確かに長寿であるエルフ族系統の15歳は人間からしてみればお年寄りよりも長生きだ。しかしエルフ族系統から見ればお前はまだまだ若い子供だよ。それにせっかく美人なんだから、ンな汚ぇ言葉は口にするなよ」


「フォローに聞こえるようで聞こえないのだけれど?」


「エルフ族系統に対して年齢の事であれこれ言うことなんてねぇからな。でも流石に男の急所はやめとけ。狙うならケツの穴だ」


「おい待てゴルァ!なんでそうなるんだよ!?」


「???」



 俺の言葉に名案だとばかりに表情を明るくさせるアウローラと異議を唱えるハイゼル。


 そしてエレインは理解出来ずにただただ首を傾げるばかりであった。


 本当にエレインは天使か何かなのだろうか?



「コホン……馬鹿な会話はそこまでにして、さっさと魔物討伐を行いますよ?」



 先程よりも……というより明らかに顔を真っ赤にさせながらアリストテレス先生が嗜めてくる。


 彼女は見た目よりも初心なのかもしれないと、エレインを除いた俺達四人はそう思ったのだった。






 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼






 アルフォンス殿下と共に訓練を始めた私、マリアベルは他の学科の方々と共に順調に魔物や魔獣を討伐しておりました。


 ちなみにムメイやエレインのパーティーは私達が出発してもまだ揉めていたのですが……流石にもう訓練を始めていますわよね?



「レッドフィールド嬢。何か考え事かね?」


「殿下……前々から思っていましたのですけれど、いい加減に私を〝レッドフィールド〟と呼ぶのはよしてくださいまし。〝マリアベル〟で結構ですわ」


「いいのかい?」


「いいも何も、殿下と私は今はクラスメイトです。クラスメイトにそんなよそよそしい呼び方をなさるのはおかしい事ではありませんの?」


「確かにな!ではこれからは〝マリアベル嬢〟と、そう呼ぶことにしよう!」


「ですから……〝嬢〟も不要ですわよ」


「そうか!では〝マリア〟と呼ぶことにしよう!」


「急に愛称で呼ぶんですのね……まぁいいですわ。それと、エレインに対しても同じように名前で呼んであげてくださいな?」


「いいのだろうか?」


「同じ事を二度も言わせないでくださいまし」


「ふむ……分かった」



 殿下は何となく、私の手のかかる弟と同じように思えますわね。


 私は殿下と共に次々と魔物や魔獣を屠りながらそんな会話をするのであった。



「おいおい……世間話しながら魔物や魔獣を殺りまくってんぞ?あの二人……」

「俺ら完全に蚊帳の外じゃん……」

「これ……私達がいる意味ある?」

「今回はパーティーでの訓練だから協力しあって貰いたいんだがなぁ……」



 向こうの方で御三方と先生が何やら言っておりますが……いったい何をお話になってるんでしょうか?


 誰かご存知の方がいれば、私に教えてくださらない?






 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼






 森の更に奥へと進むと、どんどん魔物や魔獣が姿を現してきた。


 今はゴブリンとファングウルフの群れが集まっている姿を、物陰から観察しているところである。



「ゴブリンとファングウルフが一緒にいるなんて珍しいね……」


「どうやらファングウルフに騎乗して闘うようだ……ほれ、あそこの方を見てみろ」



 俺が指さす方向には、ファングウルフに跨り周囲を警戒しているゴブリンの姿があった。


 あれは俗に言う〝ゴブリンライダー〟であるようで、周囲のゴブリンと共に哨戒を行っているのだろう。


 ここで一つの可能性が見受けられる。


 俺はその可能性をアリストテレス先生へと報告した。



「もしかしたらゴブリンキング、もしくはゴブリンジェネラルがいる可能性がありますよ?」


「嘘でしょう?!ここは学園でも認められた比較的安全な場所よ?冒険者ギルドや討伐ギルド、更に調査ギルドからも認められているのだから」


「立ち入っていない間にどちらかが誕生したんじゃねぇんスかね?他ではごく普通の事らしいですし……」


「見て!あそこにいるの、オークじゃない?!」



 今度はアウローラが別の方向を指さす。


 確認すると、確かに数体のオークがゴブリン達に接近していた。



「もしかしたら縄張り争いが起こるかもしれませんね」



 アリストテレス先生はそう話したが、しかし実際は俺達の誰もが予想だにしなかった事態へと変わった。


 なんと、オークとゴブリン……その二種族が争いを始めるどころか、互いに労い合い始めたのである。


 これにはアリストテレス先生も驚愕の表情を浮かべていた。



「そんな……嘘よ……オークとゴブリンが争わないなんて……」



 ゴブリンがオーガの配下になる事はよくある。


 しかしオークとゴブリンがあのように打ち解けあうのは有り得ない事であった。


 この事にアリストテレス先生は非常事態を視野に入れ始め、俺達に撤退するよう指示を出してくる。



「貴方達、ここは危険よ……もしかしたら有り得ない事が森の中で起こっている可能性が高いわ。直ぐに撤退し、宿営地に戻ること。私はその後直ぐにこの事を連絡します」


「残念だが、そういう訳には行かなさそうっスよ?」



 アリストテレス先生を含めた五人は気づいていなかったようだが、俺は既に気づいていた。


 ゴブリンライダーの何体かが、俺達の存在に気づいていることを……。


 俺は鬼正を静かに鞘から抜くと、他の五人にこう言った。



「構えろよお前ら……来るぞ?」



 そう言った直後にゴブリンライダー達がこちらへと向かって駆け出した。


 俺は勢いよくその場から飛び出すと、ゴブリンが騎乗しているファングウルフの首を刎ね飛ばしてゆく。



「エレイン!」


「分かった!」



 俺が声をかけるとエレインも飛び出し、ファングウルフを失って体勢を崩しているゴブリン達の頭を細剣で射抜いていった。



「くそったれ!やるしかねぇのかよ!〝我が炎が敵を焼き尽くす〟……〝豪火球(フレイムボール)〟!」


「〝誘導の矢(ホーミングアロー)〟!」



 ハイゼルとアウローラもそれぞれに攻撃を繰り出しゴブリンを屠ってゆく。


 どうやらゴブリンは二人に任せても良さそうだ……なら、俺達は────



「こっちだぁ!〝逆鱗起こし(グロウヘイト)〟、〝鉄壁要塞(アイアンフォートレス)〟!」



 〝逆鱗起こし〟は周囲の敵のヘイトを自身に集めるスキル、〝鉄壁要塞〟は自身の防御力を底上げし一定時間ダメージを軽減させるスキルだ。


 ガロンのスキルによりオーク達のヘイトが彼に集まる。


 しかし鉄壁要塞を発動しているとはいえ、流石にオーク五体はキツいか……。



「ハイゼル、アウローラ!ゴブリンは任せた!エレイン、俺達はガロンの援護に向かうぞ!」


「分かった!」



 俺はエレインと共にガロンに引き付けられているオーク達の背後へ飛び出すと、空中で同時に剣を構えた。



「御剣一刀流抜刀術────〝乱刃吹雪(みだれはふぶき)〟!」


「ローゼクロイツ家細剣術────〝荊棘(プリュイ・ド・)(エグランティーヌ)〟!」



 斬撃の雨と刺突の雨により跡形もなく消し飛ぶオーク達……。


 とりあえず周囲にいた魔物達は全滅したようで、俺達は休憩と体力回復を行うことになった。



「ほれ」


「すまん、助かる」



 ガロンに回復のポーションを手渡し、俺は周囲を警戒する為に〝広域探知〟スキルを発動させた。


 このスキルは探知系スキルの中では上位のスキルであり、俺の場合だと半径1キロ圏内の魔物や魔獣、そして生物の反応を把握出来るのである。



「しかしオークとゴブリンがなぁ……」



 ハイゼルがマナポーションを飲みながらそう呟いた。



「オークとゴブリンが協力体制にあるなんて聞いたことが無いわ……」


「他にもゴブリンやオークの軍勢がいるかと思うとゾッとする……」


「ねぇ……」



 三人を横目にエレインが小声で耳打ちしてきたので、俺も小声で対応する。



「ムメイは今みたいなの見た事があるの?」


「ねぇな。俺も初めて見たんでまだ困惑している」


「やっぱり……これ、もしかして異常事態なのかな?」


「だろうな。まさかとは思うが、ゴブリンキングの他にオークロードがいる可能性も視野に入れといた方がいいかもしれん」


「オークロード?!」



 〝オークロード〟という単語にエレインが大声を上げてしまった。


 そのせいで三人が一斉にこちらに注目してしまう。



「オークロードがどうかしたのですか?」



 先程まで他の教師と連絡を取り合っていたはずのアリストテレス先生までもがこちらに反応してくる。



「え……いや、あの……これは……」


「いいよエレイン。一応、意見ってのは言っといた方がいいからな」


「ミツルギ君……何故、今オークロードのことを口にしたのですか?」


「いやぁ、ゴブリンキングの他にオークロードもいる可能性が高いかなと思ったんで……」


「その根拠は?」


「オーク達の統率が取れ過ぎているって点ですかね」



 オーク達の動きは統率が取れ過ぎていた……そもそもオークは行動しても二体程だ。


 なのに五体も、しかも武装し完全に哨戒行動する事など有り得ない。


 ゴブリンやオークは他種族の女性をよく狙う事で有名なのだが、エレイン、アリストテレス先生、そしてアウローラがいるというのに完全に殺す気で襲ってきた点も見過ごせない。


 待て待て……そもそもゴブリンキングやオークロードが現れたってだけでこんなにも統制の取れた動きをするだろうか?


 いや、戦闘に関してはそこら辺の魔物と変わりはないが……なにか違和感を感じたのには変わりはない。


 なにか……俺達の知らないところで得体の知れない何かが動いているような……。



「ミツルギ君!」


「うぉっ?!」



 どうやら考え込んでしまい周囲が見えていなかったようだ。


 横でアリストテレス先生や四人が心配そうな顔で俺を見ていた。



「いきなり黙ったりなんかして……心配になるでしょう」


「すんません。ちぃっと嫌な予感がしたもんでして……」


「嫌な予感?」


「はい。先生、どうやら事は俺達が思ってるよりも深刻かもしれませんよ?」


「……と言うと?」


「一刻も早く対処しねぇと手遅れに──「いやぁぁぁぁぁ!」──なんだ?!」



 突然聞こえてきた悲鳴────


 これが学園史上大きな事件の幕開けの合図となるのだった。


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