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追放剣士の剣戟無双【魔力0だけど強力スキルと剣術で無双する】  作者: SIGMA・The・REVENANT
第一部・第一章:魔力0の剣士
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訓練場にて

 あれから一週間後────


 俺達は訓練場にて剣を使用した訓練を行っていた。


 とは言っても真剣ではなく木剣や木刀、木槍などであるが、各々にペアを組んで型を確認したり、中には模擬戦を行う者もいた。


 俺はエレインに誘われて、二人で軽い打ち込みをしているのだが、何となく俺がエレインに稽古をつけている状態である。



「右足!左足!動きを止めるな、防戦一方に追い込まれるぞ!おっと……今の刺突は良かったな」


「ホントに!」


「はい、油断すると隙を突かれるぞ〜?」


「あっ……!」



 エレインは俺の言葉につい隙を見せてしまい、手にしていた木剣を払い飛ばされてしまった。



「実戦ではわざわざ隙を見逃して貰えねぇからよ、そこに気をつけろよ?」


「いたたた……簡単に払い飛ばされちゃった」


「小指付近を狙ったからな」



 人間、物を掴む時に力が入るのは中指、薬指、そして小指の三つである。


 そこを狙ってやれば相手から剣を払い飛ばす事は簡単なのである。


 まぁ、剣の腹に当てて飛ばすという手もあるが、確実なのは前者の方だ。



「う〜……だからって本気でやらなくても」


「手を抜いてくれる相手が何処にいるんだ?そもそも今のは全く力を込めてねぇよ。そうだな……足の小指を箪笥にぶつけると痛てぇだろ?」


「うっ……確かに……」



 その状況を想像したのだろう、エレインは自身の足の小指付近を触れる。



「まぁそこが急所ってわけでもねぇんだが、有名なのは〝正中線〟だな」


「セイ……チューセン?」



 正中線────それは人間を含めた生物の中心を通っている線の事で、不思議な事にその正中線に位置する部位のほとんどが急所とされている。


 鼻下と上唇の間にある人中、顎の先、喉、水月……つまり鳩尾、あとは男性限定として金的、言わずもがな股間。


 それを丁寧に指をさしながら説明してやると、エレインは〝へぇ〜〟と関心した声を漏らしていた。



「特に相手の動きを鈍らせるなら顎がオススメだな。打撃で顎を撃ち抜いてやれば脳が揺れ、気絶させることも出来る」


「それって受けた方はどれくらいのダメージなの?」


「あ〜……ジジイが言うには〝全力疾走で思いっきり岩に激突したくらいの衝撃〟らしいぞ?」


「うわぁ……」


「いったい何をそのような物騒な話をしてらっしゃるんですの?」



 俺とエレインが人体急所について話していると、呆れ顔のマリアベルと、笑みを浮かべたアルが混ざってきた。


 二人の様子を察するに、一緒に訓練をしていたのだろう。



「そのくたびれ具合から察するに、模擬戦でもしてたのか?」


「ご明察ですわ。もう……相手が殿下だから相当やりずらかったですわ」


「いやいや。レッドフィールド家に伝わる斧槍術、とくと堪能させて貰ったよ」


「そんなことを言って、ずっと距離を取らせてくれなかったではありませんか」


「槍使いを相手に距離をとる馬鹿が何処にいんだ?」


「貴方に言われるとグゥの音も出ないですわね……」



 槍使いを相手に距離をとるのは言語道断。


 長物系武器はそのリーチの長さが売りで、しかし至近距離での扱いは相応に難しい。


 達人ともなればその事は関係なくなるのだが、全ての長物使いがそうではなく、至近距離での戦闘を自然と避ける傾向にあるのだ。


 なので槍使いなどの相手との戦闘は距離を詰め続けながら行うのが得策なのである。


 しかしながらマリアベルには距離を詰めさせぬ方法があるのも事実。



「ちょっとその槍貸してみろ」


「へ?えぇ、まぁいいですけれど……」



 俺はマリアベルから斧槍を借りると、少し距離を置いてから身体を中心として槍を振り回し始めた。



「何をしているんですの?」


「まぁ見てろって。アル、試しに俺に打ち込んでみろ」


「分かった。……む?これはなかなか、距離を詰めるのが難しいな」



 剣を構え距離を詰めようと体勢を低くしたアルだったが、直ぐに眉間に皺を寄せてそう口にした。


 それもそのはず────


 なにせ俺の体を軸として槍の切っ先や石突きが回転しているものだから、迂闊に距離を詰めれば剣は弾かれ、切っ先か石突きが襲ってくる状態なのだ。


 ただ闇雲に振り回しているようでそうでは無い。


 ジジイ曰く〝攻撃こそ最大の防御〟と言うやつだ。


 東の大国〝蓮華国〟に伝わる連接棍(ヌンチャク)と呼ばれるものがあるが、それも身体に纏わせるように振り回して使う武器である。


 それと似たような感じで槍も扱えるのだ。



「このようにしつこく距離を詰めてくる相手にはコレが有効的な方法の一つだ。だが体幹が悪けりゃ軸がブレて効果を発揮しねぇから気をつけろ」



 最後に槍を返しながらそう言うと、マリアベルは早速実践してみたかったのか、ゆっくりと俺の真似をするように槍を回し始める。


 まだ動きがぎこちないが、そこは今後の訓練や鍛錬で良くなってくるだろう。


 そういやさっきから周りが静かだな?


 見渡してみれば他の奴らは座ったり、壁に寄りかかったりして談笑を始めている。


 どうやらいつの間にか休憩時間になっていたらしい。


 そして同じく気づいたのかエレインも訓練場のベンチへと腰掛けていた。


 その隣にアルも座っていたので、俺もその隣へと腰を下ろす。


 すると何を思ったのかアルがこんな話を始めた。



「そういえばここから西の方角にある神聖エルサレム法国で勇者が誕生したらしいぞ?」


「勇者ぁ?」



 勇者とは魔物や魔獣を倒しながら旅をし、魔王軍や魔王を滅ぼす存在だと聞いている。


 そして神聖エルサレム法国はこの世界で唯一の宗教である〝ハイラント教〟の総本山がある国である。



「ハイラント教の教皇であるセントフィリア女教皇様や四聖枢機卿全員から認定されたらしいからね。相当な人物だと推測するよ」



 教皇は世襲制ではなく、それに相応しい者が即位する。


 確か今代の教皇はエルサレム初の女教皇で、しかもまだ20歳と若いと聞いたな。


 その女教皇や、エルサレムにおいて力を持つ四聖枢機卿全員からのお墨付きとあれば、なるほど世界にとってこれ程心強いものは無いな。



「どんな奴なんだろーな。その勇者って奴ァ」


「それは私にも分からないな。会ってはみたいとは思っているが……」



 そこまで会話が続いたところで訓練再開の合図が出され、俺達は今度は四人で訓練に励むのであった。






 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼






 その日の帰りのホームルームにて、アリストテレス先生からこんな話が伝えられる。



「そろそろ野外訓練合宿の時期が迫ってきました。合宿では遂に魔獣や魔物との戦闘を行って貰うことになります。我々教師陣がついているとはいえ、決して気を抜かぬように、貴方達に気を引き締めて貰いたいところですね」



 魔物や魔獣との戦闘か……正直、学園に来るまで討伐師として活動していたので、特に驚くことでもない。


 発見もあるので喜んで参加したいくらいだ。



「当日にも説明しますが、合宿中は常にペアで行動して貰います。野外なので不測の事態に備えての事です。そしてこの合宿は他の学科のSクラス生徒達との合同ですので、戦闘や訓練の際はその生徒達とパーティーを組んで貰うことになりますので心に置いてくださいね?決してくだらない諍いは起こさぬように」


「毎年恒例みたいなんだけれど、どうしても仲が悪い学科があるんだって」



 アリストテレス先生の説明にエレインがコソッと補足を入れてくれた。


 確かに、討伐ギルドでも剣士と魔導師でどちらが優れているか口論していた時があったな。


 互いに補える部分があるのだから、それを念頭に置いてれば口論など起こらないのだが……。


 実際はそうも行かないらしい……謎だ。



「認識の相違ですわね。一方では自身が前衛で動いてるからこそ魔法が使える、また一方では自身が魔法支援をしているから戦えていると、その認識が無くならない限りは延々に続きますわね」


「くっだらねぇ……」


「えぇ、くだらないですわね」


「お互いがお互いに良いところを認め合えればいいのに……」


「ローゼクロイツ嬢、それは言っても詮無きことだ」


「そうですね。私も、貴方達がちゃんと話を聞く事が出来たなら、更に良くなると思うのですけれどね」


「「「「あ……」」」」



 人はお喋りに夢中になるとどうしてこうも周りが見えなくなるのだろうか……。


 とりあえず、この時のアリストテレス先生の〝貴方達は普通の罰則では足りないようですね〟はかなり怖かったとだけ言っておこう。


マリアベル「アリストテレス先生から怒られる時は絶対にムメイが原因ですわ……」

ムメイ「全て俺のせいにすんなや」

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