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縁結び  作者: 藪裏柑子
2/2

初デート

 それから4月の最後の週末まではあっという間だった。その前に彼からメールが来て、時間と場所を打ち合わせして、前日の土曜日にはデート用の服を買いに行き、うきうきしながら早めに布団に入ったが、一向に眠れない。


寝なきゃ寝なきゃと思っているうちに、空が白くなってきた。


もう寝るのを諦めて、神社に行き、境内の掃除とおにぎりを備えて、お参りした。


(どうかデートが上手くいって、恋人となれますように。)


青空が広がる中、待ち合わせ場所に着くと、30分前なのにもう彼が来ていた。


「おはよう。待ちました?」


「イヤイヤ、待たせたといえば、1ヶ月位待たせたからね。今日くらいは待ちますよ。では、行きましょう。」


すぐにでもハグしてほしかったが、流石に素面では言えない。


「今日の予定はどこ行くの?」

「デートは詳しくないので、友達に聞いたら、最初は映画が定番らしい。映画みてから、ご飯食べて、ブラブラ回ろうか。」


 話しながら歩いていると、周囲の人がこっちを見ているような気がする。中にhはクスクス笑っている人もいる。


えーなになに。


よく見ると、彼が視線を集めているようだ。

前に回り込んで全身を見てみた。


横からは上に着た革ジャンで見えなかったが、白いTシャツにでかでかと

唯我独尊の文字と、アカンベーをした男の子の顔が写っている。


「これ何?」

「お、気づいたか。お目が高い。いいだろうこのシャツ。」


いい社会人が着るものとは思えない。

どこで買ったのだろう。


「ちょっとこっちへ。」

アタシは革ジャンの前を留めると、近くにあったお店に入り、入りそうなサイズの普通のTシャツを買った。


「これ、プレゼントです。早速着てください。」

「ありがとう。でも、今着ている方がカッコよくないか。」


「いいから、これ着て!」

彼のファッションセンスがずれていることがよくわかった。


そうやって着替えさせた後、映画館に着くと、どれを見るか相談する。

幸い彼と趣味は違わないようで、派手なアクション映画にすることにした。


ホラーとか言われたらどうしようと思っていたが、映画は日常を忘れてスカッとする奴がいいということで一致した。


映画はわりと満足がいく内容だったし、お昼時になり、ランチを探すが、彼は調べてきたのか、どんどん進んでいく。


「ちょっと待って。」

追いかけると、彼の腕に手を回し、

「いいでしょう。」と聞くと、

照れたように周りを見ながら、頷いていた。


着いたところはイタリアンのお店だったが、全然お洒落っぽくない。


おばちゃんと3人の若い男性でやっているようだ。


「ボンゴレ大盛りとナポリタン普通」「あいよ」

大きな声が飛び交っている。


「うるさいところだけど、おいしいし、量もある。好きなもの頼んで。俺はボロネーゼの特大。」


「じゃあ、アタシはカルボナーラで。」


あいよと大きな声が返ってくる。

しばらく経って運ばれてきたスパゲティを見ると、洗面器に入っているようだ。


「これ、本当に全部食べるの?」

「もちろん。ちょっと食べてみる?」


取皿をもらって食べると美味しい。


自分のところに来たカルボナーラもかなりの量がある。

「アタシ、大盛りって言ってないんだけど。」

「それは普通盛りだ。そういえば、ここの普通は他の店の大盛りくらいあるらしい。」


「早く言ってほしかった。多すぎるよ。」

「残したら俺が食べるから。」


彼はどんどん食べていった。

アタシは3分の2くらいでダウンして、食べてもらった。


やっぱりこんなに大きな体だから、いっぱい食べるんだ。

いい食べっぷりだった。男の人はいっぱい食べた方がカッコイイ。


お店を出て、ショッピングに行くことにした。

ちょっと気になっていたブランドの服を見ていると、


「似合うんじゃない。」と声をかけ、彼は店員にこれ下さいと頼んだ。

「いいです。」と言うが、残業手当がいっぱい出たし、使うあてもないから

遠慮しないでと買ってもらってしまった。


そのまま歩いていくと、登山用品のお店がある。

「ちょっとだけ、いいかな。」と言うと、彼はそのお店に入っていった。


(そういえば、趣味は山歩きと言っていたかな。)

以前に飲んだときの微かな記憶を思い出しながら、後を追っていくと、

登山靴を熱心に見ていた。


何度か試し履きして、決めるとそれを買って、

「お待たせ。いい靴があってよかった。連休に登山に行くので、用意しないとと思っていたんだ。」


それを聞いて、思わず

「アタシも山に行きたいので、連れて行って下さい!」

と言ってしまった。


「ホントに。じゃあ、次回はハイキングに行こうか。登山用の靴は持ってます?」

嬉しそうな顔で言われてしまった。


ないと言うと、

「じゃあ、これがいいかな。」と見繕って、買ってくれた。


やった!次回のデートの約束も取り付けた。


ここまで会話の8割はアタシが喋っていて、彼がデートを楽しんでいるのか不安だったが、次の約束もしてくれたということはアタシを嫌がっているわけではなさそうだ。


そのあと、腹ごなしにとボーリング場で遊んでから、居酒屋に入る。


彼のビールをガブガブと飲んでいる姿を見ながら、アタシも結構歩いて疲れたのかビールが美味しくて、おかわりを重ねた。


思わずほろ酔い加減で、またあれこれと話をする。

うんうんとちゃんと聞いてくれるので、なんとも話がしやすい。


「そろそろ帰ろうか。」と声をかけられる。

時計を見ると、もう10時になる。


「ハイキングはいつ行きますか。」

「そうだねえ。これからは落ち着くと思うので、連休明けの休日に行こうか。

計画を立てて連絡しますね。」


駅前まで行くと、彼にハグを要求し、抱きついていった。

しばらくハグしてもらっていると、周りから口笛が飛んできた。


「もういいかな。」

彼に体を引き離されて、温かさがなくなっていく。

でも、来月には会える。


アタシは上機嫌で電車に乗った。




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