勇者、大魔王を抜く
「どういう状況?」
大魔王が復活したことを知らされた勇者は、打ち倒す為に魔王城まで訪れると――あらビックリ。
玉座の前で大魔王が刺さっていた。
「おおっ!? その声は勇者か!? 頼む助けてくれ!」
上半身が完全に埋まり、両脚だけが床の上に生えているような状態で大魔王は勇者に助けを求めた。
「………………」
勇者は無言で聖剣を構えた。
「いや待て待て待て!? 何攻撃しようとしてんだ!?」
目視できなくても気配で察することができる大魔王は、勇者の攻撃に待ったを掛けた。
「いやなんか、脚が喋ってるみたいで気持ち悪くて」
「理由酷くない!?」
「ていうか魔王何で埋まってんの?」
「あー、前に聖剣を封印してた魔法陣ってのを、トラップとして利用できないもんかと思って試してたんだけど、ちょっと躓いて頭から落っこちて……」
「運よく詰まったけど抜け出せなくなったと」
「……ハイ」
勇者は聖剣を構えた。
「だから殺そうとすんな!」
「だって元々僕魔王倒しに来た訳だし。動けないなら丁度いいじゃん」
「それが人間のやることか!? 勇者のやることか!?」
「これも世界平和の為だから」
「大義名分掲げりゃいいって話じゃないだろ!? せめて正々堂々戦って倒してくれ! マジ頼むから!」
「あーもうわかったよ」
必死で懇願された勇者は、渋々大魔王を引っ張り出すことにした。
勇者は大魔王の両脚を掴み、力一杯上に引っ張る。
「ぐぎぎぎぎっ!」
しかし大魔王の体はまるで上がらない。
「何これかたっ! ねえ魔王、全然動かないんだけど?」
「あー、どうも角が刺さってるのが原因みたいだ」
「えー、じゃあどうする?」
「この際角が折れてもいいから、もっと力入れて引っ張ってくれ」
「今のも結構力一杯だったけど?」
「腕だけじゃなくて、体全体を使って引っ張ってみたらどうだ?」
「そう言われても」
「例えば、俺の足にしがみついて持ち上げるとか」
「なるほど」
言われた通り、勇者は大魔王の両脚にしがみついた――と同時に大魔王から「ふおっ!?」という妙な声が上がった。
何故なら、大魔王の脚に途轍もなく大きくて柔らかいマシュマロが押し付けられたからだ。
「………………」
「あの、ユウシャサン?」
「……そうか、これがお前の目的か」
大魔王から離れた勇者は、聖剣を大魔王の大事なところに向けて構えた。
「待て違う!? そんなつもりは、てかどこ狙って――」
「成敗っ!」
「ぴぎゃあああああっ!?」
こうして再び世界に平和が訪れた。




