屋台は必須
「わかばちゃん、あんまり食べると夕飯が入らなくなるからね。」
「ハル、大丈夫だよ。」
わかばちゃんが、にっこり可愛い笑顔で微笑みながら言った。
何が大丈夫なんだろう。もう食べないから大丈夫なのか、どんなに食べても大丈夫なのかすごく気になるけど、ここはスルーする場面なんだろうな。
ふと横を見ると考え事をしているふわまろの顔。
「ふわまろ、どうしたの?」
「ああ、なんや大事なことを忘れとる気ぃする。」
「ふわまろも? 僕もなんか重大な見落としがあるような気がするんだよね。」
「風曜日までまだ日にちがあるから、宿でチェックしなおす?」
ああ、わかばちゃんが珍しく会話に加わった。
「うーん、何だろう? 権利も買ったし、パーティ登録もしたし・・・。」
「ジャムもホットジンジャーもあるよ。」
「竹コップやストロー、屋台の飾りつけの布もあるよ。」
僕は、マジックバッグの中を探りながら言った。
「それや!」
「え? どれ?」
急にふわまろが、大声を出したのでわかばちゃんもふわまろを見上げている。
「屋台! 屋台をまだ引き取りに行ってへん。」
「「あ!」」
なんで、屋台なんて大物を忘れていたんだろう。
食品を扱うから、必須だよね。とか言って最初に買いに行ったのに、色々あってすっかり忘れていた。
僕たちはそのまま広場から職人街へ行き、中古屋台屋さんへ向かった。
「すみません。」
「はーい。」
「こないだ買った屋台を引き取りに来ました。」
屋台を買った時の店員さんが、店の奥から足早に僕たちのところへ来てくれた。
「もうすっかり修理は終わってますよ。代金ももらってますから、このままお持ち帰りなさいますか?」
「はい。」
「ハル、ハルんとこに入れといて。」
僕が頷くと、ふわまろが言った。
へ? 入れとくって?
「こないなもん、押して宿屋まで帰るき?」
「いやー、どうやって持って帰るのかなとは思ってたけど。」
「ハル、マジックバッグに入れれば大丈夫だよ。」
「ああ、そうか。」
一応屋台には、引っ張れるように取っ手みたいなものはついてるんだけどね、これを引いたり押したりして宿屋まで行くのはカンベンしてほしいな。
「あー、いいなあ。屋台が入るぐらいのマジックバッグをお持ちなんですね。」
店員さんがニコニコしながら、羨ましがっている。
「ええ、まあ。一応冒険者ですし。」
僕が苦笑いしながら答えると、ふと思いついたかのように言った。
「今は、お客さんが少ないから、ここで屋台の飾りつけ済ましてしまっても良いですよ。」
「ほんなら、遠慮のーさせてもらいます。」
え? ここで飾りつけするの?
「ハル、一度ここで店開いて、不便が合ったら直せるか聞いた方が良いと思う。」
わかばちゃんも目をキラキラさせながら言った。
いつもなら、お腹いっぱいになったらすぐに、ふわまろに抱っこされておねむモードになるわかばちゃん。
とっても楽しみにしてたんだね。
「では、お言葉に甘えさせてもらいます。」
僕はマジックバッグから飾りつけの布を取り出す。
ふわまろは屋台を組み立てて商売用にしてた。
「こちらに、おつりを入れる小引出が付いているんです。」
店員さんがふわまろに、説明している。
ホットジンジャーの鍋を入れる穴も完成していた。
「普段は、この天板をこうすると穴がふさがります。」
さすが本職は違うね。色々便利になるように工夫がされている。
僕たちは、屋台を引いて移動しないけど、移動しても物が散らからないように工夫されていた。
ホットジンジャーの鍋を穴に入れて、器に注げるか試してみた。
僕とふわまろは問題なし、わかばちゃんは届かなかった。
ダメじゃん、メインの売り子である、わかばちゃんが届かなかったら、ダメじゃん。
「ああ、長椅子がありますから、踏み台代わりにいかがですか?」
店員さんがすかさず商品を進めてくれた。
この屋台には収納できないけど、僕達にはマジックバッグがあるからね。
「そういえば、ジャムと・・・、これは何ですか?」
「ああ、ホットジンジャーですよ。」
僕はマジックバッグからコップを取り出してホットジンジャーを注ぎ手渡した。
「サービスしますから、飲んでみてください。」
「ふうー、甘くておいしいですね。体も暖まる気がします。」
よし、大成功。
「ええ、色々薬草も配合してあって身体にもいいんですよ。」
「そうなんですか?」
「冒険者は身体が資本やから。」
ふわまろがニヤリと笑いながら言うと、店員さんもにっこりしてた。




