赤ちゃん!
「そういえば、わかばちゃんはどうしてここに居るの?」
「? 木を成長させるため。」
うーん、そうだけど、そうじゃない。
「僕は、山道を歩いてて道を踏み外して、あの奥の枯葉の山に落ちたんだ。」
「わたしは、生まれたから。木を育てようとしてたの。」
えっと、わかばちゃんは精霊武装していないときは、3~5歳くらいだったから・・・
少なくとも数年は、この洞窟の中? じゃあ、この世界のことは知らないんだ・・・どうしよう。
「じゃあ、わかばちゃんもここが何処だかわからなんだ・・・。」
「? 解るよ」
「わかるの!!」
「うん、生まれるときに、頭の中にばーってなって、解るの。」
おー、精霊すごい!!!
なんか、声の調子から両手を腰に当てて、どや! って胸を張るわかばちゃんが見える気がする。
「ここは、人族が『精霊の祠』っていう場所。」
おー、人族ってことは、他にも人間が居るってことね。よしよし。
「そういえば、精霊って何を食べるの?」
「魔力とかマナとか、人族の食べるものも大丈夫。」
前2つは僕には無理だな。
「人族の食べ物はここにあるの?」
「ない。」
・・・。ですよねぇ・・・。
「何年も、魔力とかマナだけで生きていけるんだ。」
「生きていけるけど、私はまだ生まれて 3日だから人族の食べ物は食べたことがないの。」
・・・・。はい?
「わかばちゃん、3日だと夜が3回しか来てないことになるよ?」
笑いながら、そういう僕にわかばちゃんは・・・。
「そう、3回夜を一人で過ごしたの!」
・・・えー!!!、まさかの生後3日?
3カ月でも、3年でもない、生後3日?
・・・・・・・・・。
親ぁー!、親出てこぉい!!
「こんな小さな女の子を一人で放置するなんて、親はどうしたの!?」
語気も強く、言い捨てた僕にまさかの回答。
「私は、女の子じゃないよ。」
「はい?」
「この世界では、成人するまでは性別はないよ?」
「はい?」
「私はまだ生まれたばかりだから、成人してないよ?」
「はいぃ!!?」
「それに、精霊には、王様は居るけど親は居ないよ。」
「なんか、ごめん」
「?」
「えっと、僕はこの祠から出たいんだけど、わかばちゃんはどうする?」
「行く、一緒に行く!、だけど、その前に葉っぱを少し持っていきたい。」
少しって、若木には少ししか葉っぱついてないじゃん・・・・。
あれ?目がおかしいのかな?若木に葉っぱがこんもり茂ってる。
僕は、武装解除して、わかばちゃんを見ている。
わかばちゃんは、若木から葉っぱをちっぎってスカートに挿していた。
うん、かわいいワンピースのスカートにスリットが入ってたからね。
スカートが元に戻ったのに、まだ葉っぱを摘んでいる、見ているとポシェットに葉っぱを入れていた、大きさ的にありえないんだけど・・・。
「ハル、ノム ハッパ」
わかばちゃんが、葉っぱを差し出した。
ちょっと悩んだけど、かじってみる・・・。
少し、甘い?別にまずくはないけど、おいしくもない。
「これ、何か意味あるの?」
「つながると、話がしやすくなる。」
おー、精霊武装していないのに、会話がスムーズだ。
「つながっていると、精霊武装している時と同じように会話できるよ。あと、声に出さなくても会話できるけど。」
いわゆる、『念話』という、やつですね・・・。
今まで、僕は武器に独り言を言っていたんだ。
・・・誰も見ていなくてよかった。
「あと、ダンジョンを移動するなら、武器も必要でしょ?」
あー、モンスターとか出そうだもんね。
あれ?わかばちゃん何か小さい子に諭すように話してない?