ポコタン
「そういえば、森の中にはゴブリン以外にも魔物は居るの?」
「ああ、スライム・ゴブリン・オーク・オーガ・シャドーウルフとか普通の魔物が居るよ。あと、珍しいのはポコタンやな。」
ん? ポコタン?
「ポコタンってどういう魔物?」
「あー、親指の先ぐらいの丸い魔物で、群れで生活してるんや。スライムの仲間ちゅうもんも居たな。」
僕は、じっと親指を見た。かなり小さい?
「他の魔物は聞いたことがあるけど、ポコタンってどういう技を持っているの? 気を付けることは?」
「技かぁ・・・・、『刺殺』かなぁ・・・・。」
「結構怖い技もってるんだね。」
「まあ、居る時は群生してるから近寄らなければええんやし、こっちから攻撃せんかったら引っ越し時以外は大人しいし。」
「そんなに、小さかったら気付かずに近づいてしまうかも。」
「ああ、あいつらの防具はかなり目立つから大丈夫やと思うよ。」
「防具? そんなに個性的なの?」
ふわまろが、ニヤリと笑って言った。
「ハルと初めて会ったときに俺が着てたやろ? 今も左腕につけてるやん。」
え? 僕は思わず自分の左腕を見た。
・・・もしかして、ふわまろの外見?
「ハル、なんか失礼な事考えてへんか?」
「か、考えてないよ。 でも、会った時のふわまろが一杯居るなんて、かわいいかも。」
「引っ越しの時以外は、そうかも知れへんけどな。風に乗って移動するときも綺麗やし。」
「えー、見てみたい。コレが風に浮かぶんだぁ・・・。」
ファンタジーじゃん。ふわふわもこもこの白い綿毛のような塊が、風に乗って移動するなんて。
絶対に見てみたい。
「ふわまろ、どこに行けば見ることが出来るの?」
「ハル、ポコタンは危険。」
「え? わかばちゃんもポコタンを知ってるの?」
「ポコタンが獲物に襲い掛かって、群れで吸血してるのを見たことある。」
え!!! 吸血? マジですか・・・。
ドン引きしている僕を見て、ふわまろが苦笑しながら言った。
「だから引っ越しするときは、近寄るなって言うてるやん。」
「ハル、見せたるから果実水買って来て。あ、その前に武装解除してや。」
「ハル、私の分もお願い。」
ふわまろが、実演してくれるって言うから、僕は下の食堂で果実水を買ってきた。
もちろん、わかばちゃんの分と自分の分も買ってきたよ。
部屋に戻って来た僕が見たときは、ふわまろは最初にあった時の姿になっていた。
「果実水を隣の木のコップに移してや。」
僕は、言われるままに下で買ってきた果実水を机の上に置いてあった空のコップに移した。
「では、危機感のないハルに実演しまぁ~す。」
これまた、危機感のない声でふわまろが開始の合図をした。
「刺殺」
ふわまろが物騒な声とともに、木のコップにくっついた。
しばらく見ていたら、ふわまろの色が果実水のオレンジに変わりだした。
「え? 色が変わって来たよ。」
「これが、『吸血』やねん。・・・ふう。こないなもんかな。」
ふわまろが、コップから離れた。
「ハル、コップを見てみ。」
「え? 中身がない。」
「そうやねん、ポコタンの防具は武器にもなるんや、このふわふわの毛が魔力を通すと細い針になって中の管を通って吸血できるんや。」
何それ、怖い。
「もう、『精霊武装』してもええで。」
「刺さらない?」
「・・・。魔力を通さへんといつもの毛並や。」
少々呆れたような、ふわまろの声が聞こえた。
「ハル、かわいいからって、ポコタンの群れに近づいてはだめよ。」
わかばちゃんが、真剣な表情で言った。




