精霊武装
いきなり、わかばちゃんの顔が笑顔になった。
「ハル イウ 『セイレイブソウ』」
「ん、僕が『セイレイブソウ』と言えばいいの?」
言い終わるとほぼ同時に、わかばちゃんが緑色に光って消えた。
目を見開いていると、その光は僕の持っている枝に集まって・・・枝が杖になりました。
うそ、.....わかばちゃん.....枝を杖にする魔法を使って、力尽きたとか?
でも、.....わかばちゃんが言えって.....。なんか急にあたりがぼやけてきた・・・・。
カランと音がして、杖が地面に落ちた。
杖の近くの地面に、ぽつりぽつりと黒い水玉が増えていく。
山道から転がり落ちて、見知らぬ場所で目を覚ました時から、実は心細かった。
わかばちゃんに出会えて、ほっとした。
言葉は片言だったけど、意思の疎通ができる存在に、ほっとしていたんだ。
どうして、言ったらどうなるか聞かなかったんだろう。
取り返しのつかない一言って、こういう場合のことなんだろうなぁ.....。
どれぐらい、うつむいていたかわからないけど、とりあえず・・・・。
じーちゃんが言ってた
『どんなに頑張っても状況が良くならなかったなら、全然違うことをしろ』
そのときは、公園のコンクリートでできた富士山滑り台に登れなかったんだけどね。
お茶を飲もう。
地面に座って、リュックからタオルを取り出す。
顔を拭いたら、タオルをしまって水筒を取り出す。
お茶はまだ暖かかった。
水筒をしまって、リュックを背負い、杖を持って立ち上がる。
(ハル、聞こえる?)と、わかばちゃんの声。
「え、わかばちゃん? どこ? どこにいるの?」
焦って、周りを見渡す。
でも、見つけられない。
(どこって、ここにいるよ。それより、『精霊武舞』って、杖を苗木に向けて振ってみて。)
.....。
「その言葉を.....言ったら、どうなるの?」、姿は見えないけど、答えてみる。学習効果☆
(どうって、苗木が成長する。)
「苗木が成長したら、わかばちゃんは消えてなくなるの?」
(なくならないよ。)
「今、僕からはわかばちゃんの姿が見えないんだ。」
(え、わからないの?苗木が成長してないからかなぁ・・・)
「苗木が成長したら見える?さっきの言葉を言ったら、声が聞こえなくなったりしない?」
(しないよ)
「本当だね、信じるからね。」
深呼吸をしてから、杖をかまえる
「精霊武舞」
言いながら、苗木に向けて円を描くように杖を振ってみる。