採取入門:のんびり移動
昨日早目に休んだので、今日は6時の鐘より早く起きた。
日本では冬なので、6時前はまだ暗いけど、こっちでは冬ではないのかな?
そんなに寒くもないし、日も短いということもない。
ばっちり顔も洗って、服も着替えたし2人が起きるまで、冒険者ギルドで貰った封筒の中身を確認していた。
いやー、もっと早く確認しようと思っていたんだけど・・・なんか、疲れて昨日は寝ちゃったんだよね。
『採取入門』と書かれた小冊子には、近くの森で採取できる植物や鉱物などの絵が、特徴の説明文とともに描かれていた。
(魔物の討伐部位も載っていた。)
あ、持ち物のページがある。
【 持ち物 】
・採取品を入れる袋
・採取入門の小冊子
≪ あると便利な持ち物 ≫
・水筒
・非常食
・防寒用品
・武器、防具
うーん、なんだろう。遭難決定のような・・・、しかも最後の方魔物と戦うの前提?
6時の鐘が鳴ると同時にわかばちゃんが起きてきた。
「おはよう、ハル。」
「おはよう、わかばちゃん。」
腕時計は流石に無いけど、町の塔に時計が付いていて、朝6時~夜8時まで2時間ごとに、鐘が3回なる。その塔は結構高いので街中からなら割とどこからでも見ることが出来る。
冒険者ギルドまでは、徒歩20分(わかばちゃんは除く)なので、7時半までに宿を出れば大丈夫だ。
「早くご飯を食べに行こう。」
わかばちゃんが、かわいく朝食のお誘い。
「うーん、ふわまろがまだ起きていないからなぁ・・・。」
「精霊は食べなくても大丈夫。」
わかばちゃん、全然説得力無いよ、その台詞。
でも、今日は2人だけ受講だから、ふわまろはまだ眠っていても大丈夫といえば、大丈夫だよなぁ。
「あー、おはようー。」
2人で話していたらふわまろも起きたようだ。
「ご飯を食べようと思うけど、ふわまろは今日どうする?」
「ギルドまでは、一緒に行く。」
「先にご飯食べに行ってるね。」
「・・・おう。」
まだ眠たそうなふわまろを残して、わかばちゃんが部屋を出た。
今朝の朝食は、鮭定食だった。
ご飯に、お味噌汁、漬物に、鮭。
・・・お米もあるのね、異世界定番のマズ飯じゃなくてよかった。
お米を求めて、世界を旅するなんて全然冒険ぽくないしね。
「はよー。」
「おはよう、ふわまろ。」
「わかばちゃん、魚の骨は出した方が良いよ。」
「大丈夫、噛み切れる。」
わかばちゃん、歯が丈夫なんだね・・・。
「ごちそうさま。」
はや、ふわまろ何気に食べるの早いね。僕も急がなきゃ。
「おはようございます。採取入門講座を受講の皆様は、こちらにお集まりください。」
僕たちが冒険者ギルド前についたときには、すでに10数人の受講者らしき人が居た。
「じゃあ、ふわまろ僕達は行ってくるね。」
「説明は8時の鐘の後に行いますが、今から受付を開始します。封筒の中の木札を手にして4列にお並びください。」
一応もらった、小冊子に予定表があったんだけど、それによると木札で人数確認をするらしい。
朝 :受付
班編成
その後:森へ移動
もう一度人数確認後、小班に分かれて探索
昼 :人数確認と午前中のまとめ、昼食の販売(受講料の中には入って無いらしい)
班を変更して探索
人数確認して、町へ戻る
夕方:人数確認後、解散
って、書いてあった。
僕とわかばちゃんは問題なく受付が終了。
「説明ってなんだろう、森へ行くまでの注意事項とかかな? 予定なら小冊子に書いてあったし。」
「それもあるだろうけど、小冊子の文字が読めない人も居るから。」
ああ、そういえば、万能言語だっけ? なんか言語補正がかかってたんだっけ。
受付が終わったあとも、何人か受講者らしき人達が走って来てた。
最後の人は鐘の鳴っている時に来てたよ、ぎりぎりセーフってとこかな。
「では、採取入門講座の説明を致します。」
最初はやっぱり、小冊子の予定の話をしていたよ。
「次に、班に分かれていただきます。本日の受講者は32名ですので、5名~6名で1班となります。」
僕とわかばちゃんは、4班だった。よかった、でも移動中は僕がわかばちゃんを抱っこするんだよね。体力持つかなぁ・・・。
「1班につき、護衛として1人付きます。尚、木札は居場所確認にも使用しますので、落とした人は護衛もしくは、先生に報告してください。」
なんと、ただの板っ切れにそんな魔法がかかっているなんて・・・。どう見ても板に数字を書いただけだよね?
「では、移動します。なるべく同じ班の人と移動して下さい。」
僕は、ふわまろに手を振った。
ふわまろは、冒険者らしき人と話をしていたけど、手を振りかえしてくれた。
わかばちゃんは、僕の腕の中。
森って精霊の森じゃないよね? ふと、心配になった僕は、護衛の冒険者に聞いてみた。
「森ってここから歩くとどれくらいですか?」
「大丈夫、半時もかからないから。」
・・・。1時間近くかかるって事か。 そういえば、自己紹介ってしてないな。
「僕は、ハルって言います。」
「私は、イリーナよ、よろしく。」
「イリーナさんは、良く森へ行くんですか?」
「うーん、今から行く森には、採取の護衛でしか行かないかな。」
「魔物とか居ます?」
「奥に行かないとあまり出ないかな。定期的に討伐してるから余程油断しなければ大丈夫よ。」
たしか冒険者って、過去の詮索禁止とか、スキルの有無を聞いてはダメとか色々あったよね。
自己紹介が無いのって、そういうところもあるのかな?
まあ、僕も『精霊の森から来ました。』とか、言いたくないしな。
草原の中の1本道をみんなで、ぞろぞろ歩く。この道で迷子になるっているんだろうか?
森をバックに、先生が説明を始めた。
「こちらが、『薬草』になります。似たものに『雑草』と『毒草』があります。」
え? 毒草って薬草に似てるの? ヤバ。
「毒草の汁には、かぶれる物もありますので、採取する場合は気を付けてください。」
え? 毒草って採取OKなん?
「こちらの木の実は、食べれます。でも、良く似ているこちらの木の実は麻痺薬の原料になりますので食べないでください。見分け方は、葉っぱです。」
え? 木の実って、両方同じに見えますが・・・。
ああ、どうしよう。何か涙目に・・・。
ふわ~。という欠伸とともに、わかばちゃんが目を覚ました。
「わかばちゃん、一緒に覚えてね。全部は無理っぽい。」
「大丈夫、樹木関係は任せて。」
ああ、そうだった。最近、食べ物にしか興味を示してなかったから忘れていたよ。木の精霊だったね。
「ハル、何か失礼なこと考えていない?」
「ううん。頼りにしてます。わかばちゃん。」




