緑色の小さき者
相手はまだ僕に気付いていないようだ。
息をひそめながら観察してみる。
掌に乗るぐらいの、いわゆる妖精とか精霊とかいう感じ。
枝?木の棒?みたいな物の周りを踊りならがら回っている。
..........。かわいい。
幼稚園の時に流行った、日曜日の朝のテレビ番組に出てきた妖精みたいだ。
緑色の葉っぱのようなワンピース。
茶色の髪の毛がふんわり肩にかかって、それがぴょんぴょん跳ねるように踊っているから。
ふんわり、ふわりって感じ。
なんて名前だったっけ?
主人公の女の子を助ける・・・・・。
「若葉ちゃん?」
あれ?これは主人公の名前だったっけ?
う~ん、かなりお気に入りで毎週見てたんだけどなぁ・・・。
何かヒントになりそうなものはないかと、もう一度妖精さんをよく見てみる。
あっと、妖精さんも僕を見てない?
うんと、もしかしなくても声に出していたっけ?
えっと、ここはフレンドリーに・・・。
「僕はハル、妖精さんのお名前はなんですか?」右手を差し出しながら、受験のいわゆる面接スマイルを浮かべながら話しかけた。
妖精さんは、僕を見ていた。.......まだ、見ている。...........まだまだ、見ている。どうしよう。
あ、木の枝が武器に見えて怖いとか?
とりあえず、枝を足元に置いてみる。
あ、動いた。首をコテンと傾ける妖精さん。.....かわいい。
実は何を隠そう僕はかわいいものが好き。ほわぁと見とれていると、妖精さんが僕の方へ動き出した。
ふわーっと浮かび上がり、僕の方へふよふよふよ、と飛んできた。
うん、遅い。けど・・・・・かわいい。妖精さん、羽があったんだね。今気づいたよ。
かなり遅いけど、かわいいから時間なんて気にならないや。
なんて思っていたら、妖精さんが僕の右手にたどり着いた。
僕の人差し指を両手でつかんで、何をするんだろうと見ていたら、なんと、口づけ!!!!!
わー、わー、わー、俗にいう『騎士様』がお姫様にするような感じ!?
頭が真っ白で、内心パニックになっていたら、ピリッてして指から血が出ていた。
あ、傷口が開いちゃった。
なんて思っていたら、温かい光がぽわーって光って、光が収まったら傷が無くなっていた。
「若葉ちゃん、すごい!」
「ワタシ ナマエ わかばちゃん」
あ、妖精さんがしゃべった。
う、かわいい。
おー、日本語しゃべってる。
僕はもう一度、名前を言った。
「僕は、ハル。よろしくね。わかばちゃん」