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わたしはあなたのメインディッシュって英語でなんて書くんですか?




“人食人”。


ジンショクジンと呼ばれるソレは、突如として人間社会の中に現れた。


度重なる失踪事件や、行方不明の殺人犯。


人命が関わりつつ、尚も詳細不明となってしまっている多くの事件の真犯人は、彼ら“人食人”の仕業だったのである。



「うーわ、また人食人だよ」



バイト帰りの夜道は、立ち入り禁止の蛍光テープで行き止まりにされている。


すぐ近くのあらゆる平面には“人食人出没注意”と書かれたチラシが、いやでも目につくよう、大量に貼ってあった。



「注意? ハハ、注意ってさぁ」



思わず渇いた笑みがこぼれる。


何故なら“人食人”の突然の出現は、今からもう、30年も昔の出来事であって。



「岩をも砕く重機並みの筋力に、一時間は潜水できる肺活量、犬やウサギ並の五感に、蝿やゴキブリ並みの反応速度。 気をつけろったって、どう気をつけんだよ……。 もはや天災だろ、人食人って奴らはさ」



“人食人”の突然の出現。


それも30年も経過すれば、生きたままのサンプルを捕獲したり、人間に味方する個体が現れたりと、色々な事が起きる。


その過程でよくわかったのは、“人食人”はただの人間が少し気をつけたところで、出会ってしまえばどうにも対処できないという事実だけだった。



「はぁ……。 明日のバイト、早上がりにしてもらおうかな……」



17歳の立派な労働高校生である俺でも、“人食人”の存在をちらつかせられれば、夜道が怖くなる。


それでも自警用の武器の携帯すら許してくれないあたり、日本の政府はどうにかしてると思うね。


アメリカなんか、あんなに色々揉めてたくせに、すぐに銃器の携帯大賛成の運びになったってのにさ。


まぁ、それだと人間のフリした“人食人”も銃を持ち歩くようになる訳だから、それはそれで怖いんだけど。


……と言うか、今はそんなことよりも。



「ここが立ち入り禁止、ってことは、回り道しなきゃいけないのか……」



目の前の立ち入り禁止と化している道から、ふっと目を反らす。


ここは産まれながらに17年間ずっと暮らし続けてきた地元ではあるのだが、俺はすこぶるインドアなので、正直……生活に必要な道以外、詳しいとは言えない。



「まぁ……なんとなくそれっぽい方角に進んでいけば、どうにかなる……か?」



一人言が多いのも、インドアの一人っ子ゆえの性だと思う。


全世界の夫婦諸君、どうせ子供作るなら二人は作ってやれよな、寂しいから!



「さて……」



一応スマホでナビアプリを起動して、液晶照明を時たまライト代わりに使いつつ、見知らぬ景色に歩みを進める。


しばらくは住宅街が続いた。


あ、この辺は小学生の時に遊びに来たことあった気がするな。


あー、ここ、この表札、同級生だった村上の家かな?


え、うそ、こんな和風のお屋敷がこの辺にあったの? 知らなかったなー。


……なんて具合に、自分が住んでる町だってのに、なかなかに発見と驚きが溢れている景色の中でも、俺は歩みを止めることはない。



「今何時だ?」



スマホの画面は23時を示している。


見知らぬ住宅街は恐ろしく静かで、俺の中にある“人食人”への恐怖心を煽っていた。



「ヤダヤダヤダヤダ……!」



回り道してでも知ってる道に出て帰るべきだった。


見知らぬ町で行く宛もわからず、しかも近場に“人食人”が出たという事実。


17年も人間やって来た訳だが、俺はまだまだガキなのだ。


怖いものは怖いし、嫌なものは嫌だし、興味本意でググってしまった“人食人”による事件現場を撮影した写真とか、トラウマになって肉を見るたび思い出しちまう。



「い……ぃよォーしッ! やっぱ戻ろーっと!!!」



俺は大袈裟に回れ右をして、来た道を戻り始める。


わ、笑うなよ、怖いの誤魔化したくてやってることなんだからさ……。



「……ん?」



見知らぬ住宅街を戻っていると、視界の先に人影が見えた気がした。


ちらちらと設置されているまばらな街灯に照らされて、長い髪の毛のようなものが揺らいで見える。



「女子だ……!」



俺は即座に鼻の下が伸びた。


ま、まさか、最悪だと思っていたこの日に、こんなラッキーなイベントが発生するとは!


“人食人こわいですよねー”なんて話題で話しかければ、容易に一緒に帰れるのでは!?


この辺に住んでる女子だとダレカナー?


委員長タイプの伊藤サンカナ?


はたまた体育大好き千石カシラ?


でも髪が長い子となると……まさか!



「将来はモデル確実と言われていた岡田さんだったりして! うっほほーい!」



喜び勇み、スキップ気味の軽快な足取りで人影のもとへと駆ける。


あと数歩で目の前という距離まで少女に迫ると、俺は足を止め、思わず息を飲んだ。



「え……………」



近くに行ってスマホの液晶照明が照らしだした髪色は、日本人離れした美しい金色で。


その身を包む服装も、この辺りでは知らない者のいない、市外の超有名お嬢様学校のものだったのだ。


……つまり。



「アカーンッ! 普通に知らん子やんッ!」


「ふぇっ?」



思ったことがつい口から出てしまうのが、一人っ子育ちの辛いところである。


突然発せられた俺の大声に反応したのだろう、美少女は驚いた様子で振り向いた。



「あ、あ、あ……!」


「ふぇええ………! え、えっとえっと、どなたですかぁ……っ?」


「え、あ、仁久井リョウガと申しますですっ!」


「ニクイ……リョウガさん……?」


「あ、えっと、はい……。 へへ……!」



涙目で怯える色素の薄い美少女に、俺は緊張気味でへりくだり、はにかむ。


そんな情けない様子を見たからか、美少女は安心したように胸を撫で下ろし、少し弱々しい笑みをこぼしていた。



「ふふ……。 えっと、では私は、皇ミコトと申します」


「スメラギさん? 高貴な苗字だ……!」


「こ、高貴だなんて、そんな! ぜ、ぜんぜん大したことありませんよっ!」


「かわいい……」



それが素直な感想だった。


色の薄い白みがかった金髪に、ニキビひとつ見当たらない美しい美肌、ほっっっそい手足に、動くたびにサラサラと揺れて良い匂いを撒き散らす長髪。


髪の毛だけでも2回感想が出るくらい、彼女は華奢で、さながら造形物のごとき美しさで構成されているのだ……。



「皇さん……美しい」


「ふぁいっ!? な、にゃにゃな、なんですかっ!? わ、わたしべつに、か、かか、か、可愛くなんかないですよ!?」


「いや、可愛い……! これは……一目惚れってやつだッ!!」


「へ……?」


「え? ……あ、え? 俺、今……なんて?」


「お、お米の名前を申されていました……」


「コシヒカリ?」


「ヒ、ヒトメボレです……」


「WAO!!!」



即座に顔面を両手で覆い、俺は美少女に背を向ける。


この一瞬の間で、俺は人生で初めての告白をし、人生で初めての失恋も済ませたのだ……。



「いい経験になった……」


「え、えっと、あの……」


「あ、えっと大丈夫です、僕一人で帰れますんで……」


「あの……私、なんかで、いいなら……」


「あ……はい、すみませんでした、ほんと……」


「あ、あの!」



背中を向けたまま、そそくさと立ち去ろうとする俺を、何故か美少女は呼び止めてくれる。


その意図はわからないが、俺は求められるままに振り向き、ギョッとした。



「え、えっと、あの……っ」



美少女は何故か顔を真っ赤にし、モジモジしているのである。


このリアクション、ゲームや何かで見覚えがあるが、まさか……。



「わ、私もっ! い、異性の方とのお付き合いとか、きき、興味あったりしたので、その……っ!」


「ま、まさか……!?」


「お、お友だちから………、お願いしますっ!」



ズバッと勢いよく頭を下げながら、美少女は右手を差し出してくる。


どのみちフラれてるやん……。


そう思って、一瞬だけ頭の中が真っ白になったが、まだ希望があることにも気づいた。



「お友だち“から”……!? ……未来があるなら、よろしくですッ!!!」



即座に華奢な右手を握り返し、深々と頭を下げる。


真夜中の住宅街で突然声をかけてきた俺にこの神対応……、お嬢様故の世間知らずから来るものだとすれば、そこはむしろ感謝したいものである。


ありがとう、世間知らずに育ててくれたご両親!


ありがとう、考えがすぐに口を出る一人っ子でいさせてくれた俺の両親!



「ありがとう、ありがとう、ありがとう……!」


「ふぇぇ……、は、恥ずかしいです……っ」



握りしめている華奢な右手は、小刻みに震えだしている。


それとなく手を離すと、彼女はその手で即座に顔を覆い、耳まで真っ赤にしながら下を向いていた。



「さて、それじゃあ家まで送るよ!」



“友だちから”。


スタート地点に立って、ゴールも見えているのなら、やることはただひとつである。


最高の友人としてひたすらに好感度を稼いでいき、来るべき決着を待つ。


それのみである……であるが故に、下心は封じるのだ。



「……ん? ところで君の制服、ヒメ高のだよね?」


「ふぁ、ふぁい」



美少女はまだ恥ずかしそうに下を向いている。


なーんて可愛いんだ……!



「ふふ……。 でさ、ヒメ高って全寮制じゃなかったかな?」


「え……? あ、はい、でもお食事が必要なので……」


「なる! で……つまり?」


「あ、そそ、そっか、いずれお付き合いするかもしれない方なら、最初に言っておいたほうがいいですよね……?」


「ん……? なにを……?」



視界にふと“人食人出没注意”と書かれたビラがちらつき、冷や汗がどっと噴き出し始める。


ま、ままま、まさかなぁ? まさかそんな筈はないよねぇ……。



「えっと……私、“人食人”でして……」


「あ……。 え、あ……、へ…………?」


「あ、でもでもでもっ! み、身近な人は食べませんからっ! そこは安心してください、リョウガさんっ!」


「おぉ、リョウガさん……!」



必死な表情でにじりよってくる皇さん。


“人食人”とはいえ、美少女の姿をしたソレから絞り出される可愛らしい声に名を呼ばれれば、脊髄反射で癒されてしまうというものである。



「で、でも、やっぱ人間……食べるんだ?」


「嫌……ですか?」


「いや、まぁね、まともな人間なら聞くまでもなく嫌だって答えると思うんだ、僕は」


「まともな人間なら“人食人”を目の前にしたら、怯えて何も言えなくなるかと思います」


「ワーオ、さすが経験者は言うことが違う」


「ふふっ」



くすりと笑う皇さん。


その姿は、普通に人間にしか見えなくて、俺は不可思議な感覚に陥る。



「やっぱり普通じゃないですよ、リョウガさん。 人間離れしてるっていうか、その……。 あなたで、良かったな……って」



はにかむ美しい少女の顔を、俺は訝しげな表情でしか見れなくなっていた。


彼女はどういう感情で、俺をそんな顔で見ているのだろう。


晩御飯にジャコを食べたが、水槽で飼っているグッピーには実の家族のように話しかける……とか、なんかそういう、気まぐれな残酷さみたいなものなんだろうか。


俺は別に、自分が人間離れしてる自覚なんてないが、今はなんとなく、その気まぐれな残酷さに与ろうと思った、



「リョウガさんっ」


「……ん?」


「わ、私、すすす、好きな景色があって……。 ご、ご一緒……して、くださいますか……?」


「え? あー……まぁ、喜んで……」



正直乗り気はしない。


だが、断ればどうなるのかもわからないのだ。


ならば、おとなしく従う他ないだろう。


……俺は疑いの感情を隠すことができず、怪訝な表情をしてしまう。



「……」



彼女はそんな俺の心境に気づいたのか、少し気まずそうに目を伏せた。


美少女にそんな顔をさせてしまったことには、少しの罪悪感を感じる。


でも……彼女は、そもそも人間ではないのだ。



「……俺が一目惚れしたのは、“人間”の、皇さんであって……。 “人食人”の、皇さんじゃない……」


「リョウガ……、さん……」


「あ……っ」


「い、いいんです、気にしないでくださいっ。 ……私も、あなたの立場だったら、同じことを考えると思いますから……」


「お、俺を……、食べないのか……?」


「……ふふ」



少し呆れたように、彼女は笑う。


そのまま悲しそうに目を伏せて、静かに言葉を綴った。



「リョウガさんは、良くも悪くも素直な方なんですね。 私達は“人食人”……。 “人間を食らう”、“人間”です」


「それは、言葉のあやじゃなく? 見た目がそうだから、ってことじゃなくて?」


「感情だってあります。 ……あ、あなたが、そそ、その、人間の私に、一目惚れをしてくれた……みたいに。 そ、その……、わ、私は、私に一目惚れをしてくださったあなたに、と、と、とても……そ、その、惹かれてます……から……っ」


「皇さん……」



心底恥ずかしそうにする皇さんの態度からは、純粋な好意だけが滲み出ている。


俺の中の罪悪感は、ますます膨らむばかりだった。



「だ、だから、“人食人”だって約束はしますっ!」


「え、約束?」


「はい! たとえあなたがどれだけ美味しかったとしても、私のお腹がどれだけ空いてたとしても!」


「お、おう?」


「地球上であなたが最後の一人にならない限り、私はあなたを食べませんっ! あなたは私の、最っっっ高の、メインディッシュですっ!!!」



夜の住宅街に響き渡るくらい、彼女は大きな声で、そう告げた。


それは喜んでいいのか悪いのか、はたまたそもそもそういう次元の問題じゃないのか、“披捕食者”に過ぎない俺には、理解不能な“約束”で。



「え………あ、はい」



呆気にとられながら相づちを返すくらいしか、できなかった。


そんな俺の手をすかさず取り、彼女は駆け出す。


華奢な右手で17歳の男の体を軽々と引っ張ってみせる彼女の姿に、“人食人”らしさを垣間見てしまうが、それよりも。



「……やっぱ、好きだな……」



一生懸命に俺の前を走る、その華奢な後ろ姿。


耳や首まで真っ赤にしながら、それでも俺の手を離すことは決してなく、長い髪を揺らして良い匂いを放ちながら走るその後ろ姿に、いとおしさを感じてしまうのだ。


たとえば、今までのやり取り全部が、食事をスムーズに進めるための罠だったとしても。


こんなに可愛い“人食人”のメインディッシュになれるのなら、それはそれで、本望かもしれない……。



……ところで、話は変わるのだが。


人魚の肉を食らうと不老不死になるって話を聞いたことはないか?


あとは、吸血鬼とか、狼男とか、そういう、人を栄養源にする人型の怪物の話とかって、有名だろ?


あれの正体は“人食人”って噂も最初はあったが、それだと人魚の肉と同じくだりで話す必要は無くなるよな?


察しがいい人なら、もう気づいてるかなぁー?


“人食人”の特徴、“岩をも砕く重機並みの筋力に、一時間は潜水できる肺活量、犬やウサギ並の五感に、蝿やゴキブリ並みの反応速度”。


こんだけの身体能力があれば、彼らスイスイ、水の中を泳ぎ回れる訳で。


吸血鬼に襲われた人間は吸血鬼になるんじゃなく、元から人間を食らう人間だったとしたら?


狼男は、まぁ、跡形もなく食い散らかしちゃうから、関係ないか。



“人食人”が人々の多くに知られるようになってから、早30年近く。


そうなると、まぁ、色々起こる訳で、色々わかってくる訳で。


“人食人”が本当に恐ろしい化け物なら、とっくに世界のヒエラルキーが狂っててもおかしくない筈なのに、そうなってない理由とか?



で、また話は変わるのだが。



……プロはまず、自分を騙すことから始める、なんて話、聞いたことは無いかな?



「あれ……?」


「ん、どうした皇さん?」



皇さんは急に立ち止まると、不安げな表情でキョロキョロと周りを見渡し始める。



「今、なんか……。 いやな“ニオイ”がした気がして……」


「え、まさか俺、くさい!?」


「え!? い、いえ、そんなことは! リョウガさんは最初に私の後ろに近づいてた時から、ずっと美味しそうな匂いでしたよ!?」


「そ、それは……喜んでいいことなのかな……」


「うくぅー……。 ご、ごめんなさいっ……。 以後言い方には気をつけます……っ」


「はは、まぁそんな謝らなくても、“約束”信じてるから大丈夫だよ」


「リョウガさん……っ!」


「ところで、その……。 まさかここが、皇さんが言う、“好きな景色”の場所?」


「あ、はい!」



……気づいたらやって来ていた場所に広がる景色は、住宅街からほんの少し離れた位置に広がる、畑しか見当たらない殺風景なものだった。



「……じゃ、なくてっ! こ、ここなら、そ、その……、だ、誰にも見られない……でしょう?」


「へ!?」



皇さんはそう言いながら、おもむろに靴を脱ぎ、ストッキングまで降ろし始める。



「わわわわわ!!! ちょ待!!!! タンマ!!!!! 心の準備!!!!!!」


「ヤりやすい格好にならなきゃ……あ、リョウガさんはそのままでも大丈夫ですからね? ふふ」



胸元のリボンもするするとほどき、シャツのボタンも上から2つほど外す。


ちらりと見えるフリルのあしらわれた下着に、俺は唾を飲みながら前屈みになった。



「よっし! これでヤりやすくなりましたね!」


「お、おっけー! 俺もヤりやすい格好しますねっ!」


「ふぇっ!?」



カチャカチャとベルトをゆるめ、社会の窓を全開にし、“人食人”でなくとも女性ならまま口にする機会がある人肉ソーセージをあらわにする。


目の当たりにしたのは初めてなのか、頭から湯気が出そうなほど顔を真っ赤にして、彼女は硬直していた。



「あ、あああ、あのわたし、いまからす、すっごいたかくじゃんぷするから、やや、や、やぶれたりしないよう、す、すとっきんぐ、ぬいだり、した、だけで……」


「へ?」


「そそそ、そういうのはやっぱり、お付き合いしてからのがいいと思いますっ!」


「は……?」


「ごめんなさいっ!!!」



――ドンッ!!!


と、そこそこの轟音を響かせながら、彼女は天高い夜空へと飛び去っていった。


残されたリボンとストッキングと靴。


その中に下着が無いことに気づき、納得させられる。



「……ああ、なるほどね。 たしかに靴やストッキング履いたままやったりしたら、大変だ」



スマホの液晶照明で照らしながら、アスファルトの地面に目をやる。


さっきまで皇さんが立っていたその場所には、比較的新しく見える小さなヒビが、細かくいくつも走っていた。



「もしかして俺をお姫様抱っこしながら飛び上がって、夜の街並みを一緒に見ようとか、そんな風に思ってたのかな?」



……悪いことをしてしまった。


深いため息をつきながら、後悔が先に立たない現実の過酷さを思い知る。



「はぁ……。 ……………食べ損ねたか…………」



ペロリと小さく舌なめずりをしながら、皇さんが残したストッキングや靴を拾い、それを小脇に挟んで着衣の乱れを直す。



度々で申し訳ないのだが、また話を変えよう。


人間を食う人間“人食人”が居るのなら、更にそれを食う人間“人食人食人”が居ても、おかしくはない。


そういう発想に至る者も、今の娯楽が増し、思考する機会が増えた世の中でなら、決して少なくは無いだろう。


それから人魚の肉の話だとか、吸血鬼とかの話だとか?


だからまぁ、なんの話がしたいのかと言うと、つまりはそのままそういうことなのだ。



世の中には、“人食人”を食らい、その影響で人間を超えた力に目覚め、それを維持する為に“人食人”を食らい続ける人間、“人食人食人”が存在する。



俺は皇ミコトという、小学生時代に将来はモデル間違いなしとさえ言われていた同級生・岡田さんなんぞが比べ物にならないほどの美しい少女に一目で惹かれた。


でもその好意は“人間”仁久井リョウガにとっては“性欲”であっても、普段は封じ込めている本性“人食人食人”仁久井リョウガにとっては、“食欲”でしかないのだ。


では問おう。


君は魅力的なステーキに抱く欲望に、“おいしそうだからたべたい”というものはあっても、“すてきだからセックスしたい”なんてものは無いだろう?



「そう、無い。 無い筈……なんだが」



“私達は“人食人”……。 “人間を食らう”、“人間”です”


“感情だってあります。 ……あ、あなたが、そそ、その、人間の私に、一目惚れをしてくれた……みたいに。 そ、その……、わ、私は、私に一目惚れをしてくださったあなたに、と、と、とても……そ、その、惹かれてます……から……っ”


“地球上であなたが最後の一人にならない限り、私はあなたを食べませんっ! あなたは私の、最っっっ高の、メインディッシュですっ!!!”



それは……晩御飯にジャコを食べたが、水槽で飼っているグッピーには実の家族のように話しかける……とか、なんかそういう、気まぐれな残酷さ……みたいなもの、なんだろうか。



「最高のメインディッシュ、ね。 ……“人食人食人”も、人を食う人、を食う、“人”……って事なのかな」



きゅるる……と、小腹が鳴る。


俺達は“人食人”と違って、無制限に強力なパワーが使える訳じゃない。


だから、今日は歩いて帰って、“メインディッシュ”はまた今度だ。



「また会えるかな……皇さん」



空腹なんて気にならないくらい、心にぽっかりと、穴が空いた感覚がある。


次に会えたら、必ず謝って、また友だちからやり直したい。



彼女にとって、俺がそうであるように。


俺にとっても、彼女は“最高のメインディッシュ”なのだから。





こーんばんはっ!


暇を持て余した人々の退屈をまぎらわす正義の変態、茂部ヴォルフガング英雄ちゃんの小説にようこそだおヽ(´∇`)ノ


今回ご用意した暇潰しはですね、わたくし以前からずっとずっと、それこそもう15年以上前の幼少期からずっとずっと、“カニバリズム”の魅力にとりつかれておりまして!


好きすぎて調べ過ぎてるが故に上手く作品にできないまま、奇をてらしたジャンルのつもりが、今やありふれたジャンルの一つになりつつある訳ですね!


15年ってはーやいヽ(´∇`)ノ


で、今回もオナニーし終わってからボーッとしてたのですが(生理現象なのでR-18ではない)、気づいたらこの暇潰しが完成しておりました!



そうか、作品が無理なら、短い暇潰しにすれば良かったんだ!!!!!



無意識で書き上げた後に、そう気づいてハッとさせられましたΣ(゜Д゜)


書いてから読み直してはいないのですが、書いてる自分を端から見た感想は、“なんだこれ……”って感じですね。


短編のくせにオチが無い。まず1アウト。


食人モノのくせに食人描写がまったく無い。残念2アウト。


何が書きたかったかよく伝わってこない。ハイ3アゥーッ!!!



最初にタイトル『僕は君のメインディッシュ』ってのだけあって、それじゃわかりやす過ぎるから、英語にしようってなったんです。


多少誤魔化しが効くかなーって思ってー。


でもぼく、そういえば中学の通知表の英語のとこ“評価不能”って書かれてたの忘れてて。


とりあえず今のタイトルをメモ代わりに保存して、執筆して。


書き終えちゃったので、投稿して。



……そう! 投稿! それが大事なのん!!!ヽ(゜∀。)ノ



連載作品はやたら消すわたしですが、連載であれ短編であれ、“書ききった以上は”人の目に晒し続けるスタイルです。


なのでタイトルは未定ですが、本編は“書ききってしまった”ので、投稿しました。


ダサいタイトルでごめんなさい、自分でも嫌いです(´ε`;)


でも大事な大事な“書ききった”文章なんです!


できちゃった以上は、人目に晒してやりたいんです!!!




そんなこんなで丸投げされた今回の暇潰し、いかがでしたでしょうか?((o(^∇^)o))


捕食者と被捕食者の間に愛が芽生えたら、という、知的生命体である人間と人食人だからこそのお話ですね。


個人的には好きです。連載だったらもっと噛み砕いて書けたかな?


連載だったらやりたかった描写があって、最後にそれだけ語らせてください。



-


この街の美しい夜景を彼女に見せてもらった翌朝、この街は不穏な空気に包まれていた。



『~~高校に通う岡田ミヅキさん(17)が今朝、遺体で発見されました。遺体の状態から、岡田さんは“人食人”に襲われたものと見られ――』



皇ミコト。美しき俺の友人。


岡田ミヅキ。懐かしき俺の同級生。


俺が惹かれたあの美少女は、確かに人間の敵である。


それを怖いくらいに痛感した、ひどく不快な朝だった。



-



てきな?


これはあれですね、主人公がポロリせず、しかもまだ読者に正体を明かしてない前提のやつです。


さささっと書いたので甘い。


ですが書きたかった! 食人シーンを書かずに食人という要素を書きたかった! 残酷さを表現したかった! でも蛇足になるから次の日の出来事までは短編に組み込めなかった! 惜しい!



以上、すべての暇人の味方、茂部ヴォルフガング英雄でした!


今回は久しぶりに、かろうじて、読めるものになってると嬉しいなぁ(´∇`)



アディダス!!!!



※追記


やっぱり多少はわかりやすさが必要だと思ったので、タイトル変えました(´∇`)


ちょっと読み直してみましたが、誤字は幾つかあるし、やっぱり内容が強引かつスッカスカやし、でも好き!!!


何回でも言う、でも好き!!!!!!


各キャラにはまだまだ設定があったりするので、本当は掘り下げたかったね。


でも連載じゃないから駄目。連載にしたら飽きるから駄目。


短編だから“遊べる”。 遊びである以上、詰めません( ・`д・´)キリッ


たまには後書きでぐちぐち語らずに済むようなもの書きたいよね(⌒‐⌒)




アディダス!!!!!




※追記


やっぱタイトル戻しました!


アディダス!!!!!!!!!!!!!

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