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めちゃくちゃ強い100歳  作者: めかぶ
13/15

第13話『敵か味方か。空飛ぶ炎。ワシは死にたい』

皆さま、夏風邪には気をつけましょう。涙してください。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。


街中に地響きのような鈍い音が鳴り響く。

空を見上げると、メラメラと燃え盛る炎が飛んでいるのが見える。

音と共に、心なしか地面も僅かに揺れている。


ゥゥウゥゥーーーーーー!!


『緊急避難警報。緊急避難警報。隕石が接近しています。ナハ市、マヤ市、ラワ市にお住まいの方は、直ちに市外へ避難してください。繰り返します。隕石が接近しています。ナハ市、マヤ市、ラワ市にお住まいの方は…』


街中に警報が鳴り、人々がざわつき始める。

あたふたと右往左往する者や、急いで電話をかける者、SNSを開く者や、煙草を吸い終えるまで喫煙所から動こうとしない者など、反応は様々。

そんな中、街のドラッグストアから買い物を終えたギルじいがトコトコと出てきた。

片手に風邪薬の入った袋を持っている。

どうやら、風邪を引いたため、薬を買いに来ていたようだ。

すると、ドラッグストア内から買い物中のお客に加え、店員までもが駆け足で飛び出してきた。


「風邪のせいか身体が寒いのぉ…。ん?何だか騒がしいな?」


ギルじいが店内から飛び出してきた人々を見ながら、何事かと言った表情を浮かべる。

と、その時、逃げるように飛び出してきた客の1人が、ギルじいの存在に気付き、こちらに走って近づいてきた。


「長命スギルさんですよね!?あの、めちゃくちゃ強い!」


「んぉ?あ〜、まぁ、ワシは長命スギルじゃが、どうしたんじゃ?」


「この街を助けてください!!!」


「は?何じゃ急に。何かあったのか?」


「避難警報聞いてなかったんですか!?隕石ですよ隕石ぃ!!!」


「隕石?落ちてきとるんか?」


「そうなんです!!!長命さんって昔隕石から街を救ったことあるんですよね!!!??」


「あ〜、まぁ、なんかそんな事もあったが…」


「今回もどうか!!どうかこの街を!!」


ギルじいは困ったような顔をするが、ゆっくり頷いた。


「まぁ、やれるだけやってみるわい。とりあえずお前さんは今すぐここから離れろ」


「ありがとうございます!!!!」


ギルじいに助けを求めた男は、頭を下げるとすぐにその場から走り去っていった。


「はてさて、今日こそ死ねるかのぉ…」


ギルじいはそう呟くと、その場からジャンプで高い建物に飛び乗った。

すると、確かにメラメラと燃える隕石の様な炎の塊が空を飛んでいるのが見える。

しかし、妙な事にギルじいは何か気配を感じた。


「あれは…本当に隕石か?」


ギルじいは高い建物をピョンピョンと次々に飛び移り、1番高いビルの屋上で足を止めた。

ちょうど隕石らしき炎が真っ直ぐ飛んでくる位置だ。

いや、もはや直撃する危険性すらある位置だ。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。


「さて、いくぞ…」


ギルじいは足を広げ、力を入れて踏ん張る。


「っふん!」


炎が目の前まで飛んできた瞬間、ギルじいが踏ん張りながら右手を前に突き出した。


ドォゴォオオオオオオオオオオオオン!!!!!


右手を突き出した衝撃と、物凄い速度で飛んできた衝撃が激しくぶつかり合い、メラメラと燃えていた炎が一瞬でかき消された。

ビルは大きく揺れ、所々にヒビが入る。


「ふぅ…。風邪引いて少し寒かったから、ちょうど良い熱さだったわい」


どうやら風邪を拗らせていたことで、炎の熱さにも耐えれたようだ。

そして、炎がかき消され、飛ぶ勢いをなくした何かがその場にドサッと落ちる。


人間だ。


「やっぱり、隕石ではなかったか」


ギルじいはその人間に近づく。

気を失っているが、見たところまだ子供だ。

制服を着ている。

男子高校生か。


「こいつ、何があったんじゃ」


ギルじいは気を失った高校生を担ぎ、ビルの屋上を後にした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




その様子を少し離れたビルから眺めている者がいた。

全身黒尽くめの男だ。

顔は、黒いマスクに黒いゴーグルで覆い隠し、如何にも怪しい。

左腕に付けた腕時計型の無線を口に近づける。


「少々やりすぎたか?覚醒状態の一歩手前だったぞ」


黒尽くめの男が喋ると、無線から少し力の抜けた気だるさを漂わすような声で反応が返ってくる。


『まぁ、まずまずってとこかな。彼がどれほどのレベルに耐えられるかを見る良い機会になった』


「気を失ってる時点で奴に素質があるとは思えんが」


『いや、いいんだ。彼の性格がこの力を更に強化していく。僕からしてみれば適任だ』


「まぁいい。好きにしてくれ」


ブツ…。


無線を切るや否や、黒尽くめの男はその場から姿を消した。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「いいよ。物凄く、いいよぉ」


暗く狭い不気味な部屋で、片手に酒、口には煙草を加え、ドロドロの恋愛映画を見る一人の男。

テレビの画面には愛し合った男女が乱れながら唇を重ね、激しく抱き合っているシーンが流れている。

男はそのシーンを不敵に笑みを浮かべながら熱心に見つめる。


「ぁあ、これだよこれ。人間は欲にまみれ、感情を惜しみなく垂れ流し、グチャグチャに乱れながら生きていく。人それぞれの性格にあった、環境、特性、そして弱み。全てのピースが綺麗に揃った時、人は誰にも想像できない境地へと足を踏み入れる。素晴らしいぞ。素晴らしいぞ人間。ぁあ、素晴らしい…」


男の名は、トロイ・ルイ。

先程、怪しい黒尽くめの男と無線で話していた人物であり、世界各国から指名手配されている凶悪犯罪者。

そして、ある高校生に炎の力を与えた張本人だ。

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